貿易の大半を海上輸送に依存する我が国にとって、海上の安全確保は国民生活に直結する重大な問題です。
しかしながら、ソマリア周辺海域の海賊事案等、世界には安全が十分に確保されていない海域が存在します。
海上保安庁では、関係国に対して、海上保安機関の設立支援や能力向上支援を行うことにより、海上の安全確保に寄与していきます。
1 東南アジア諸国に対する取組み
マラッカ・シンガポール海峡を含む東南アジア周辺海域は、我が国の海上貿易にとって重要な海域ですが、海賊・海上武装強盗の発生等、海上の安全を脅かす様々な問題が存在しています。
このため、海上保安庁では、東南アジア諸国に対して、海上保安機関の設立や、海上保安能力の向上のための支援を積極的に行っています。
これらの取組みの継続により、近年の同海域の海賊発生件数はピーク時に比べ減少するなど、一定の効果をあげています。
A フィリピンに対する支援
フィリピンに対しては、平成12年から海上保安行政全般に渡る支援のため、JICA(国際協力機構:Japan International Cooperation Agency)長期専門家として職員を派遣するとともに、JICA技術協力プロジェクトの枠組みにより、平成14年から海難救助、海洋環境保全・油防除、航行安全、海上法令執行、教育訓練の分野における人材育成への支援を行っています。
また、JICA短期専門家を派遣して各種海上保安業務に関する研修の実施等の支援も行っており、平成22年度においては、JICA短期専門家として5名(1月13日現在)の海上保安官を派遣し、取締りに関する研修を実施しました。
B インドネシアに対する支援
インドネシアでは、平成18年に、海軍や海上警察、海運総局等、海上保安行政を実施している様々な機関の業務を調整する「海事保安調整会議」が設立されました。
海上保安庁では、同会議にJICA長期専門家として職員を派遣し、様々な支援を行っています。平成22年度においては、1名(1月13日現在)の当庁職員を含む調査団を派遣し、これまでの支援活動の評価を行いました。
このほか、海運総局へもJICA長期専門家として職員を派遣しており、海上交通安全や海上救難防災対策に関する業務研修を実施するなど、各種支援を行っています。
C マレーシアに対する支援
マレーシアでは、我が国の海上保安庁をモデルとして、平成17年に「マレーシア海上法令執行庁」が創設されました。海上保安庁では、創設準備段階からJICA長期専門家として職員を派遣し、様々な支援を行っています。平成22年度においては、JICA短期専門家として、3名(1月13日現在)の海上保安官を派遣し、救難及び海上法令執行に関する研修を実施しました。
▲JICA研修 |
2 外国海上保安機関の能力向上支援の新たな取組み
ソマリア周辺海域における海賊・海上武装強盗事案の頻発を踏まえ、海上保安庁では、東南アジア諸国での経験を活用しながら、ソマリア周辺海域沿岸国の海上保安機関に対しても様々な支援を行っています。
平成22年10月には、イエメン、タンザニア、ジブチ、ケニア等の沿岸国の海上保安機関の幹部職員を招へいし、海洋政策研究財団とともに、「ソマリア周辺海域沿岸国の海上法執行能力向上のための会合」及び「ソマリア沿岸海賊対策国際フォーラム」を開催しました。会合では、その地域の海上法執行能力向上策や我が国の支援方策について討議しました。
また、同じ月には、アジアの他、ソマリア周辺海域沿岸国からも研修生を招へいし、JICAとの協力により、「海上犯罪取締り研修」を実施しました。研修では、海賊対策をはじめとする海上犯罪の取締りに必要な知識・技術の移転を目的とした講義・実務研修を行いました。
さらに、平成23年3月には、ReCAAP情報共有センター及び国際海事機関(IMO)との共催により、シンガポールにおいて、アジア・ソマリア周辺沿岸国から関係者を招へいし、「アジア・ソマリア周辺沿岸国海賊対策能力向上ワークショップ」を開催しました。
このほか、ミクロネシア諸国に対しても、海上保安能力向上にかかる各国の状況を踏まえ、海上保安庁として可能な支援について検討を行っています。
▲インドネシアへの研修 | ▲ソマリア周辺海域沿岸国の海上法執行能力向上のための会合 |