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特集 新たな海洋立国に向かって
I 「海洋権益の保全」とは
1.「海洋権益の保全」と海上保安庁
最近、テレビや新聞等で「海洋権益」という言葉が多く使われています。「海洋権益」とは、海洋に関する権利と利益のことですが、これらは一体どのようなものなのでしょうか。
沿岸国は、国連海洋法条約に基づき、自国の主権が及ぶ「領海」を設定し、その外側に、漁業や鉱物資源に対する主権的権利等が認められる「排他的経済水域(EEZ)」や「大陸棚」を設定することができます。
科学技術の進歩に伴い、広大な「海」にある豊富な漁業資源や様々なエネルギー・鉱物資源の利用開発が世界的に注目されるようになり、世界各国は、海洋から様々な恩恵(利益)を得るため、海洋政策を積極的に展開しています。
我が国では、平成19年に「海洋基本法」を制定するとともに、同法に基づく「海洋基本計画」を策定し、海洋政策を積極的に推進していますが、この中で「海洋権益の保全」が重要な課題となっています。
海洋権益を保全するための重要な取組みとして、主に
1) 領海、排他的経済水域、大陸棚の範囲の画定
2) 領域の保全
3) 海洋の開発利用の促進
がありますが、海上保安庁では領海警備や海洋調査を実施するなど、重要な役割を担っています。
今後も、海上保安庁が果たす役割は一層大きくなります。
「海」の区分を紹介! 〜 領海・排他的経済水域(EEZ)・大陸棚とは 〜
領 海
沿岸国は、国連海洋法条約に基づき、領海基線*から12海里(約22km)を超えない範囲で、自国の主権が及ぶ水域として「領海」を設定しています。
沿岸国の主権は、領海の上空、海底及び海底の下にまで及び、沿岸国は漁業や資源採掘の独占権を有します。
なお、全ての国の船舶は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、沿岸国に妨げられることなくその領海を通航する権利が認められています。これを「無害通航権」といいます。
*:通常は、海岸の低潮線ですが、海岸が著しく曲折しているか、海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所には、適当な地点を結んだ直線を基線(直線基線)とすることができます。
内 水
領海の基線の内側の水域です。
領海と同様に主権が行使できます。外国船舶の無害通航権は認められていません。
接続水域
沿岸国は、領海に接続する水域で、領海基線から24海里(約44km)を超えない範囲で、「接続水域」を設定することができます。
同水域では、自国の通関、財政、出入国管理、衛生に関する一定の規制を行うことができます。
排他的経済水域(EEZ)
国連海洋法条約は、従来の「公海」・「領海」という区分に加え、新たに「排他的経済水域(EEZ)」という水域を設けました。これにより、沿岸国は、領海の外側で領海基線から200海里(約370km)を超えない範囲で排他的経済水域を設けることが可能になりました。
同水域では、沿岸国に対して、一切の漁業及び鉱物資源に対する排他的な主権的権利と海洋汚染を規制する権限等が認められています。
大陸棚
国連海洋法条約では、沿岸国は領海基線から200海里までの海底及び海底下を「大陸棚」とするとともに、海底の地形・地質が一定の条件を満たす場合、国連の勧告に基づき、200海里を超えて大陸棚の限界を設定することが可能とされています。
大陸棚では、沿岸国に対して、天然資源の開発に係る主権的権利等が認められています。
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