海上保安レポート 2010

はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


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目指せ!海上保安官


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資料編


08 海を繋ぐ > CHAPTER2 関係海上保安機関に対する能力向上支援
08 海を繋ぐ
CHAPTER2 関係海上保安機関に対する能力向上支援

貿易の大半を海上輸送に依存する我が国にとって、海上の安全確保は国民生活に直結する重大な問題です。しかしながら、東南アジア周辺海域やソマリア周辺海域における海賊・海上武装強盗事案に見られるように、世界には、海上の安全が十分に確保されていない海域が存在します。世界的にも高いレベルの技術・技能を有する海上保安庁では、このような海域において安全の確保に当たる関係国に対して、海上保安機関の設立支援や能力向上支援を行うことにより、海上保安能力の全体的な向上を図り、海上の安全確保に寄与していきます。


1 東南アジア諸国に対する取組み

海上交通の要衝であるマラッカ・シンガポール海峡を含む東南アジア周辺海域は、我が国の海上貿易にとって重要な海域ですが、海賊海上武装強盗事案の発生等、海上の安全を脅かす様々な問題が存在します。東南アジア諸国の中には、海上保安庁をモデルに、自国海上保安機関の創設や組織拡充に取り組む動きがあり、海上保安庁は、これらの国々に対する支援を積極的に行っています。


A フィリピンに対する支援

フィリピンでは、平成10年に沿岸警備隊が海軍から独立し、運輸通信省に移管されました。海上保安庁では、平成12年から海上保安行政全般に渡る支援のため、JICA(国際協力機構:Japan International Cooperation Agency)長期専門家として職員を派遣するとともに、JICA技術協力プロジェクトの枠組みにより、平成14年から海難救助、海洋環境保全・油防除、航行安全、海上法令執行、教育訓練の分野における人材育成への支援を行っています。

また、JICA短期専門家を派遣して各種海上保安業務に関する研修の実施等の支援も行っており、平成21年においては、9名の短期専門家を派遣しました。

東南アジア諸国への業務研修
東南アジア諸国への業務研修
東南アジア諸国への業務研修
東南アジア諸国への業務研修
B インドネシアに対する支援

インドネシアでは、海軍、海上警察、海運総局等の機関が、海域や事案に応じて海上保安業務を担当していましたが、平成18年に、これら機関の業務を横断的に調整する「海事保安調整会議」が設立されました。海上保安庁では、同会議設立の検討段階からJICA長期専門家として職員を派遣し、その支援にあたっています。平成21年においては、法令執行に関するJICA短期専門家の派遣や業務研修の実施といった各種支援を行いました。

このほか、海運総局へもJICA長期専門家として職員を派遣しており、海上交通安全や海上救難防災対策に関する業務研修を実施するなど、各種支援を行っています。


C マレーシアに対する支援

マレーシアでは、海上保安庁をモデルとして、平成17年に「マレーシア海上法令執行庁」が創設されました。海上保安庁では、創設準備段階からJICA長期専門家として職員を派遣し、様々な支援を行っています。平成21年度においては、海上法令執行庁への海上警備救難に関するJICA短期専門家の派遣、海上警察への暗視装置等の海上警備機材の提供を実施しました。


2 外国海上保安機関の能力向上支援の新たな取組み
ソマリア周辺海域沿岸国の海上法執行能力向上のための専門家会議
ソマリア周辺海域沿岸国の海上法執行能力向上のための専門家会議

ソマリア周辺海域において海賊海上武装強盗事案が頻発していることを踏まえ、海上保安庁では、東南アジア諸国の海上保安機関に対する能力向上支援で培った知識・経験を活用し、ソマリア周辺海域沿岸国の海上保安機関に対しても、様々な支援を行っています。

平成21年9月、イエメン、オマーン、ジブチ、ケニアといったソマリア周辺海域沿岸国の海上保安機関の職員を我が国に招へいし、海洋政策研究財団とともに、「ソマリア周辺海域沿岸国の海上法執行能力向上のための専門家会議」を開催し、実務レベルでの海上法執行能力向上のための人材育成支援に関する意見交換等を行いました。また、10月には、アジアの海上法執行機関のほか、イエメン、オマーン、ケニア及びタンザニアからも研修生を招へいし、JICAとの協力により、「海上犯罪取締り研修」を実施し、海賊対策をはじめとする海上犯罪の取締りに必要な知識・技術の移転を目的とした講義・実務研修を行いました。

このほか、我が国として自立に向けた国づくりを積極的に支援している東ティモールや我が国と海で接しているミクロネシア諸国といった国に対しては、海上保安能力向上にかかる各国における検討状況を踏まえつつ、海上保安庁においても、可能な支援について検討を行っているところです。