海上保安レポート 2009
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はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


特集3 海保の海賊対策〜人類共通の敵への対応〜 > 2. 東南アジア周辺海域の海賊対策
特集3 海保の海賊対策〜人類共通の敵への対応〜
2 東南アジア周辺海域の海賊対策
「ALONDRA RAINBOW」号事件
「ALONDRA RAINBOW」号事件

平成11年10月22日、日本の海運会社が運航するパナマ籍貨物船「ALONDRA RAINBOW」号(総トン数約8千トン)がマラッカ・シンガポール海峡を航行中、ピストル、ナイフで武装した海賊にハイジャックされました。その後、日本人2名を含む乗組員17名は、同貨物船に監禁された後、救命ボートで解放され、11月9日全員無事保護されました。一方、「ALONDRA RAINBOW」号は、インド洋上を航行中のところをインド沿岸警備隊及びインド海軍に取り押さえられました。

海上保安庁は、巡視船及び航空機を派遣し、捜索活動を実施するとともに航行警報を発出し付近航行船舶に情報提供を実施しました。

1.背景

海上交通の要衝であるマラッカ・シンガポール海峡においては、平成11年の「ALONDRA RAINBOW」号事件など、日本関係船舶に対する海賊に事件が頻発していました。こうした海賊問題を解決するためには、アジア各国の海上犯罪取締能力の向上及び連携・協力関係の強化を図る必要があったことから、平成12年4月東京においてアジア15か国・地域の関係機関が一同に会した「海賊対策国際会議」を開催し、各国の取組み及び連携協力の指針として「アジア海賊対策チャレンジ2000」を採択しました。また、平成18年9月に発効した「アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)」に基づき、同年11月、情報共有センターISC)がシンガポールに設立され、海上保安庁からも職員を派遣しています。

2.対策
(1)東南アジア沿岸諸国の海上法執行能力向上のための人材育成支援等
  • インドネシアへ法執行分野の専門家を派遣)
    ▲インドネシアへ法執行分野の専門家を派遣)
    海賊対策連携訓練
    ▲海賊対策連携訓練
    沿岸国の海上保安機関から研修生を招へいし、「海上犯罪取締研修」を実施しています。(平成13年〜)
  • 法執行分野の専門家を派遣しています。(平成14年〜)
  • 東南アジアに巡視船・航空機を派遣し(平成12年〜)、 沿岸国の海上保安機関との間での「海賊対策連携訓練」等を実施しています。
  • 巡視船派遣の往路復路の公海上において、日本関係船舶との間で「官民連携海賊対策訓練」を実施するとともに、海賊事件即応のためのしょう戒活動を実施しています
  • テロ対策無償資金協力のスキームを活用して、インドネシアに巡視艇3隻を供与しました。(平成18年)
「韋駄天」号事件
「韋駄天」号事件

平成17年3月14日、マラッカ海峡を航行中の日本籍外洋タグ「韋駄天」号(総トン数498トン)が銃等で武装した海賊にハイジャックされ、日本人2名を含む乗組員3名が連れ去られました。3月20日、連れ去られた3名は、タイ南部の沖合いでタイ海上警察によって無事保護されました。

海上保安庁は、マレーシア等の沿岸国に対し被疑船舶の捜索及び情報提供の依頼するとともに、情報収集のため職員2名を現地に派遣しました。

(2)海賊事件に係る情報収集・提供体制の構築・強化
  • ReCAAPに基づき設立されたISCへ職員を派遣するとともに、ISCと連携して海賊情報の収集・分析を積極的に推進しています。
  • 海上保安庁ホームページ等により海賊情報を提供(海賊事案の紹介、注意喚起等)しています。
(3)海賊事案発生時における対応
  • 日本船舶や日本人が東南アジア海域の公海上で海賊に襲撃されるなどした場合は、必要に応じ巡視船、航空機または職員を派遣し、犯罪捜査等の所要の業務を実施することとしています。
官民連携海賊対策訓練
日本籍船へ移乗する海上保安官(11月17日)
▲日本籍船へ移乗する海上保安官(11月17日)
日本籍船と訓練中の巡視船「しきしま」(12月12日)
▲日本籍船と訓練中の巡視船「しきしま」(12月12日)

平成20年11月17日及び12月12日、東南アジア方面へ派遣中の巡視船「しきしま」と日本籍船との間において、海賊船から追跡・近等を受けた場合を想定した接海賊対策訓練を実施しました。また、同訓練に併せ官民一体となった情報伝達訓練を実施しました。

3.結果
海賊対策専門家会合
▲海賊対策専門家会合

これらの取組みの結果、東南アジア諸国においては、マレーシアでは17年、インドネシアでは18年に海上保安機関が相次いで設立されるなど、海上法執行能力が向上しました。

海上保安庁は、引き続き東南アジアの海賊対策について、積極的に取り組んでいきます。