海上保安レポート 2008

●はじめに


特集1 海上保安庁 激動の10年

特集2 海洋基本法を見据えた海上保安庁の取組み〜新たな海洋立国の実現に向けて〜

1.体制を充実させて

2.海洋調査により海を拓く

2.大規模海難ゼロに向けて

特集3 海上保安庁のあゆみ


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

1. 海洋環境保全対策
2. 海上環境事犯の摘発

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


目指すは海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 青い海を護る > 2. 海上環境事犯の摘発
青い海を護る
2. 海上環境事犯の摘発
目標 Target
 海域への廃棄物の不法投棄、油や汚水の不法排出等海上環境事犯は依然として後を絶たない状況から、海上保安庁では、海洋環境を汚染する不法行為を摘発し海洋環境の保全に努めます。
平成19年の現況
 平成19年の海上環境関係法令違反に係る送致件数は652件と3年連続で600件台を推移しています。送致件数を法令別にみると、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(以下「海防法」という。)違反が448件(約69%)、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」違反が115件(約18%)と海上環境関係法令違反の8割強を占めています。
 違反の態様は、船舶からの不法排出事犯が181件と海防法違反全体の約4割を占め、そのうち約8割が油の排出によるものです。そのほか、廃船等の不法投棄が海防法全体の約4割と続いています。
 海上保安庁が確認している廃船については1,372隻であり、前年に比べ118隻増加しました。このうち処理された船舶は、全体の約56%に当たる770隻、未処理の船舶は602隻となっています。なお、投棄船舶(廃船)1,372隻のうち738隻に「廃船指導票」貼付による指導を行い、このうち320隻が処理されました。
 また、平成19年に我が国周辺海域における海洋汚染確認件数477件のうち、外国船舶によるものは40件(前年比16件減)であり、うち38件は油によるものでした。これら外国船舶の海洋汚染への対応として、「海防法」に基づき、15件に対してボンド制度(担保金制度)を適用し、7件に対して旗国通報を行いました。
 この他、国民の健康と快適な生活環境を守るため海上環境事犯の撲滅に向けて、地方自治体、警察等関係機関との連携を一層強化したほか、巡視船艇・航空機による夜間の監視取締りを強化しました。
今後の取組み
 最近の海上環境事犯は、廃棄物処理に関する法規制の強化や監視取締りの厳しさが増す中、その目を逃れるため夜陰に乗じかつ沖合で移動しながら建設廃材や廃油等を投棄したり、投棄船舶の船名を削り取り証拠隠滅を図るなど、犯行手口が悪質・巧妙化の傾向にあります。このため、引き続き関係機関、防犯団体、ボランティア団体や地域住民等と連携を深めていくとともに「118番」を活用したきめ細かい情報収集体制の構築を行うほか、巡視船艇・航空機を有効活用し、海陸空一体となった海洋汚染の取締りに努めていきます。
■海上環境関係法令違反送致件数の推移
海上環境関係法令違反送致件数の推移
Case file 5
汚水を排出した水産加工会社3社を相次いで検挙
 平成19年10月、留萌海上保安部(北海道)は、水産加工場において水産加工品の製造工程で生じた基準値の最大19倍の大腸菌群を含む汚水を海に排出したとして、水産会社社長ほか1名及び法人を水質汚濁防止法違反で検挙しました。また、このほかにも同様に、汚水の不法排出を繰り返していた2つの水産加工場等を水質汚濁防止法違反で相次いで検挙しました。
関係者を立ち会わせ排出水を採取する海上保安官
▲関係者を立ち会わせ排出水を採取する海上保安官