海上保安庁では、特に東京湾、伊勢湾、瀬戸内海のような船舶交通が非常に多い海域(以下「ふくそう海域」という。)における航路を閉そくするような大規模海難の防止と、死者・行方不明者を伴う海難船舶隻数の減少を目標に掲げ、積極的に海難の未然防止に取り組んでいます。
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船舶交通の安全を確保するための航行支援
海上保安庁では、特に東京湾、伊勢湾、瀬戸内海のような船舶交通が非常に多い海域(以下「ふくそう海域」という。)における航路を閉そくするような大規模海難の防止と、死者・行方不明者を伴う海難船舶隻数の減少を目標に掲げ、積極的に海難の未然防止に取り組んでいます。
■ふくそう海域
平成18年の海難を振り返ると、海難隻数は2,544隻(平成17年比62隻増)であり、死者・行方不明者数は108人(平成17年比13人減)でした。 特徴としては、10月の異常に発達した低気圧に伴い、三陸沿岸や北海道東方沿岸などにおいて128隻もの海難が発生したことが挙げられます。その海難のほとんどは無人係留中の小型漁船等の転覆や浸水海難でありましたが、宮城県女川港沖の漁船、茨城県鹿島港沖の外国貨物船、静岡県下田港沖の遊漁船の乗揚・転覆海難等においては多数の死者・行方不明者を伴うものとなりました。そのほか、社会的反響の大きい海難としては、東京湾口における貨物船の衝突・沈没海難や多数の負傷者が発生した超高速旅客船の衝突海難が挙げられます。 過去5年間の海難隻数は減少傾向にあり、死者・行方不明者を伴う海難隻数及びその海難に伴う死者・行方不明者数については、過去5年間で最低となっています。 海上保安庁では、平成9年に東京湾で巨大原油タンカー「ダイヤモンド・グレース」の座礁海難が発生したことを契機として、ふくそう海域における航路を閉そくするような大規模海難の未然防止を目標に取り組んできたところです。 今後とも海難の原因を究明し、対策を講じることによって更なる海上交通の安全性の向上に努めます。 ■海難船舶隻数及び死者・行方不明者を伴う海難船舶隻数の推移 船舶航行環境の変化を的確にとらえ、船舶交通の安全性と運航能率の更なる向上を目指します。また、海難を未然に防止し、船舶交通の安全を確保するため、日頃から航行の安全のための情報を広く提供するとともに、海難防止思想の普及のための取組みを積極的に進めていきます。
(1)航路標識の整備及び機能維持 (1) AISを活用した次世代型航行支援システムの構築 ふくそう海域に平成15年から導入してきたAISを活用した次世代型航行支援システムは、平成18年度をもって全ての海上交通センターへの導入が完了し、運用が行われています(大阪湾海上交通センターにおいては、平成19年度中に運用開始予定)。同システムの導入により、これまでのレーダーによる監視に比べて広大な海域において、概ね500トン以上のAIS搭載船舶の動静を把握することができ、航行実態に即したより効果的な航行指導や乗揚げ防止などの情報提供が行えます。また、巨大船等が航路に入る際の海上交通センターへの位置通報を省略することができ、船舶運航者の負担が軽減されます。今後は、我が国の沿岸海域をAIS網でシームレスにカバーするべく整備を進めます。 ■AIS情報に基づくカンボジア籍貨物船S号衝突回避事例 (2) 航路標識の視認性、識別性向上 海上保安庁では、視認性や識別性を向上させるため、航路標識の高機能・高規格化の整備を進めています。 航路標識の高機能化は、灯浮標等の光源をLED化し、より見やすくするととも源をLED化し、より見やすくするととも同時に点滅させることによって、航路を明確に表示させることができます。 また、高規格化は、従来の灯浮標からパイプと柔軟性のある係留装置を用いた浮体式灯標に変更し、潮流等による振れ回りを大幅に軽減することによって、航路を直線的に表示し、航路幅を広く有効に活用することができます。 ■航路標識の高機能化 ○出力増大→都市背景光に埋没しない強い光になる。 ○同期点滅化→灯火を航路単位で一斉点滅することで、航路形状がハッキリ確認できる。 ○光源のLED化→荒天時にも、灯火が鮮明に視認できる。 ○灯浮標番号の発光表示化→夜間でも標識の特定が容易になる。 ■航路標識の高規格化 ○浮体式標化→標識の振れ回りを解消し、航路法線を高い精度で表示することができる。 ・航路幅を広く有効に活用できる。 ・航路が直線的に表示できる。 ・航路がハッキリ確認できる。 (2)海難防止思想の幅広い普及
このため、海上保安庁では、訪船指導や海難防止講習会等を通じて海上交通関係法令の周知徹底、安全運航の励行を指導しています。さらに、船舶運航に直接関わる方々はもとより、国民の皆さんに対しても広く海難防止について関心を深めていただくため、毎年7月には「海難ゼロへの願い」をスローガンに、官民一体となって「全国海難防止強調運動」を実施し海難防止を呼びかけています。 また、近年の海難の特徴をふまえ、関係省庁が連携した施策を展開しているところであり、平成18年9月には、漁船海難が多発している傾向をふまえ「漁船海難防止強化旬間」を実施しました。今後も、各種船舶の特性に応じた海難防止対策を講じていきます。 ■海難による死者・行方不明者数の月別推移(平成18年) (3)海上交通に関する法秩序の維持 我が国の船舶交通の安全を確保するための法律としては、基本的な海上交通ルールとして「海上衝突予防法」を定めているほか、船舶交通がふくそうする東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の三海域には「海上交通安全法」を、入出港船舶が多い港内には「港則法」を、それぞれ「海上衝突予防法」の特別法として定めています。 一方で、海上保安庁が安全な航海支援のために様々な情報提供に努めているにも関らず、安全意識が欠如した船舶運航者が見受けられるのも事実です。このため、海難の発生に直接結びつくおそれのある悪質な法令違反に対しては、徹底した取締りを実施していきます。特に、最近はマリンレジャー活動が大変盛んであることから、小型船舶操縦者が遵守すべき事項である危険操縦及び酒酔い操縦の禁止、水上オートバイ等乗船者に対するライフジャケットの着用指導、狭い水路通過時や水上オートバイ乗船時などにおける有資格者による自己操縦の義務付け等の徹底した励行に努めます。
(4)飲酒運航の根絶に向けた取組み
このため、海上保安庁では、関係機関と連携し、酒酔い操縦の判定基準の一部強化や飲酒運航禁止に係る周知・指導や重点的な取締りをより一層徹底することで、飲酒に起因する海難の未然防止に取り組んでいきます。 ■海事関係法令違反の送致件数の推移 小型船舶操縦者が遵守すべき主な事項
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