海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 海を識る > 海洋情報の提供
海洋情報の提供
目標
 海上安全情報の提供は、海難の防止はもちろん、災害発生時の被害の最小化を図ることも目的としています。このため、航行の安全に必要な様々な情報や防災に関する情報を海図水路通報そして航行警報により、迅速かつ確実に伝えることに努めます。
 また、国内の海洋調査機関による調査で得られた水温・潮流などの海洋情報を収集・管理し、インターネット等を通じてマリンレジャーなど皆さんの活動に役立つ情報の提供に取り組んでいます。
平成18年の現況
電子海図表示システム(ECDIS)
▲電子海図表示システム
(ECDIS)
 海上保安庁では、水路測量や海象観測などの実施により得られた最新の情報を基に、海図水路誌などを刊行するほか、港湾工事などによる水深や地形の変化が著しい場合は、補正図を発行し、航行の安全に寄与しています。さらに、電子海図表示システム(ECDIS)で利用できる航海用電子海図(ENC)の提供海域を拡大し、その最新化を図るため電子水路通報を発行しています。

海図 W1065/航海用電子海図(ENC)
▲海図 W1065/航海用電子海図(ENC)

 平成18年7月5日に発生した北朝鮮によるミサイル発射事案、10月9日に発生した北朝鮮による核実験では、航行警報を発出し航行する船舶に対する注意喚起を行いました。
 平成18年度からは、外国人船員に対する海難防止対策の一環として刊行している英語表記をした日本近海の海図が英国海洋情報部の海図販売網も加えて、世界中(52カ国、139カ所)で入手が可能となりました。このように海外での普及が進むことで、日本周辺海域における海上交通の安全に貢献しています。

■水路図誌の海外販売網
水路図誌の種類と刊行版数

 このほか、国内の海洋調査機関による調査で得られた貴重な海洋データを一元的に収集・管理し、国内外へ提供する総合的海洋データバンクとして日本海洋データセンター(JODC)を運営しています。JODCは、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が推進する国際海洋データ・情報交換システム(IODE)の日本における代表機関として活動するとともに、西太平洋海域共同調査(WESTPAC)で収集された海洋データの管理において中心的な役割を務めています。
 また、海流や潮汐などの海洋情報をインターネットにより提供するシステム(J−DOSS)を運用しています。
http://www.jodc.go.jp/index_j.html

■海洋データ・情報交換の流れ
海洋データ・情報交換の流れ

新発見、最高レベルの伊能図大図の原寸模写図

 海上保安庁では、江戸時代後期の測量家伊能忠敬が作製した伊能図の模写図を147枚所蔵しています。
 平成19年1月22日から24日までの間、これらの147枚について伊能忠敬研究会と共同で学術調査を行ったところ、良質な色彩模写図が多数発見されました。
 このうち、最高レベルの原寸模写図と確認された「大分」「佐伯」「宮崎」の3枚は、1畳ほどの大きさの地図に、朱色の実線で描かれた実測の経路や宿駅、天測地、湊などの記号、山野の鳥瞰図(ちょうかんず)風表現、城など伊能図の特色がそのまま描かれています。
 海上保安庁が所蔵している模写図は、海上保安庁海洋情報部の前身である旧海軍水路部が明治初期に海図を作製する目的で模写したものです。
 なお、伊能図の正本は明治6年の皇居の火災で、また、伊能家に残されていた副本は関東大震災で全て焼失したと言われております。

伊能図大図模写図「佐伯」
伊能図大図模写図「佐伯」
朱色の測線、天文観測を実施した地点を示すの記号(模写図中央付近)、緑色で描かれた鳥瞰図風の山野、城の表現などが伊能図の特色をそのまま再現している。
今後の取組み
(1)海図等の刊行

 海上保安庁では引き続き、最新の水路測量データなどに基づき、海図等の維持・更新を実施するとともに、ENCの提供海域を拡大していきます。
 また、近年、外国人船員が増加している海運業界の状況をふまえて、外国人船員にも分かりやすい、英語表記による海図及び水路誌を刊行するとともに、海外で我が国の海図が容易に入手できるよう、引き続き海外での普及に努めます。

■水路図誌の種類と刊行版数
海洋データ・情報交換の流れ

(2)航行の安全のための情報提供

 船舶が安全な航行を行うための情報や、航行に使用する海図水路書誌の内容を常に最新に維持するために必要な情報を水路通報として提供していきます。また、航行中の船舶に対して緊急に周知する必要がある情報を航行警報として、衛星通信、携帯電話、ファクシミリ放送、ラジオや、漁業無線局等を介して提供していきます。
 このほか、船舶運航者のみならずマリンレジャー愛好者を対象として、各海上保安部が地域に密着した情報を発信する海の総合情報ツール「沿岸域情報提供システム(MICS)」を運用します。MICSは、各海上保安部が管轄する港湾及びその周辺海域における船舶の安全運航に必要な情報を、インターネットに接続可能なパソコン、携帯電話から手軽に得ることができるシステムで、今後も利用者の視点に立った情報提供を行っていきます。

■水路通報・航行警報の概念図
水路通報・航行警報の概念図

携帯電話を利用してMICSへアクセス!

 携帯電話を利用してMICSにアクセスすれば、全国各地の岬にある灯台で観測した気象・海象情報のほか、海の安全情報、潮汐、日出没情報等を入手できます。
 また、主要灯台などに設置したライブカメラ映像を提供しており、自分が航行する予定の海域の状況をリアルタイムに把握することができます。

●総合サイトへのアクセス
携帯電話の総合サイト
携帯電話のMICSサイトへ、簡単にアクセスできます。
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/mics/m/
携帯電話のMICSサイト

パソコンの総合サイト
パソコンのMICSサイトへ、簡単にアクセスできます。
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/mics/
パソコンのMICSサイト

●沿岸域情報提供システム(MICS)の概要
沿岸域情報提供システム(MICS)の概要

(3)海洋情報の提供

 海上保安庁は、各種の海洋情報の提供を通じて、地球環境問題の解明及び海洋環境に配慮した沿岸域の開発等にも貢献していきます。
 また、平成18年12月東京において、西太平洋域の海洋データ・情報の管理を担う各国立海洋データセンターが能力向上・人材育成などに取り組み、西太平洋域の各国における海洋データ・情報の管理や交換の発展を目指す海洋データ・情報ネットワークプロジェクト(ODINWESTPAC)を設立するための準備会合が開催されました。海上保安庁では、引き続きこれらの新しい地域協力の枠組みにおいて指導的な役割を果たしていきます。
 海の相談室は、海上保安庁に常設されている海洋情報の提供窓口で、海に関する相談であれば誰でも利用できます。JODCが保有する水温や海流・潮流、潮汐、水深など海洋の基礎的データ、海図水路誌、国内外海洋関係機関の各種文献・図面等についての閲覧、情報の所在等を紹介しております。また、潮干狩り、ヨット・モーターボート等のマリンレジャーに必要な情報の提供サービスを行っており、電話、メール等による利用も受け付けています。
 海上保安庁海洋情報部ホームページでは、海洋速報、潮汐情報、日出没・月出没などのマリンレジャーを安全に楽しむために役立つ様々な情報を提供しています。
海の相談室E-MAILconsult@jodc.go.jp
海洋情報部ホームページhttp://www1.kaiho.mlit.go.jp/