海上保安レポート 2004

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


■特集1 海洋権益の保全とテロ対策

■特集2 海保の救難


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海をつなぐ連携


海上保安庁の業務・体制


海を仕事に選ぶ


海保の新戦力


その他


資料編


 
海を仕事に選ぶ > 1 様々な海上保安官
様々な海上保安官

(1)船長

 会社には社長、学校には校長がいるように、船には「船長」がいます。そして、船長には、海上という特殊な環境において、人命、船舶、積荷の安全を図らなければならないことから、厳格な義務と強力な権限が与えられています。
 海を舞台とする海上保安庁にとっては、巡視船艇や測量船等は無くてはならない勢力です。巡視船艇等にも当然に船長がいて、航海に関する最高の指揮者としての責任を負い、航海の安全を確保するための義務が課せられています。
 しかし、巡視船艇等は、荷物や人の輸送のために使用される船舶とは異なり、海上保安業務を現場において実施します。そのため、この実働組織の長として、巡視船艇の船長の場合は海難現場における救助作業の指揮、犯罪が発生した場合などの捜査の指揮、測量船の船長の場合は海洋観測・測量の指揮などのあらゆる現場業務の指揮を執っているのです。
巡視艇「まつなみ」船長
▲巡視艇「まつなみ」船長

(2)機長

「スーパーピューマ」機長
▲「スーパーピューマ」機長
 海上保安庁は、巡視船艇等以外にも平成17年1月に就役した「ガルフV」などの航空機や「スーパーピューマ」などのヘリコプター等、74機(平成16年度末現在)の多種多様な航空機 を所有しています。航空機は、広範囲の海域 を短時間でパトロールすることができ、また、海象、水深等により巡視船艇では接近することすらできないような海難現場で、けが人や病人などを吊り上げ救助することができるなど、海上保安業務には欠かせない勢力です。
 一般に航空機は、ひとたびトラブルが発生すると深刻な事態につながるおそれが高い乗 り物ですが、それに加えて海上保安庁の航空機は、エアラインの航空機のように一定の航路を定期的に飛行するのではなく、不定期に、様々な場所で、かつ気象条件の劣悪な状況に おいても活躍が求められるため、機長(パイロット)には相当に高度な操縦技術が必要です。さらに、吊り上げ救助作業は、海難現場に降下する潜水士等、そこからけが人や病人を吊り上げるホイストマン*1、機上通信員、 副操縦員等を的確に指揮し、これらの連携が良好に図られて初めて達成されるものなので、 機長には操縦技術に加えて、これらのスタッフをまとめ、指揮する強力なリーダーシップも求められます。

(3)整備士

 整備士といえば、航空機の整備を行うので、飛行士に比べ縁の下の力持ちといったイメージを抱かれるかもしれません。「(2)機長」のところでも触れましたが、海上保安庁の航空機は、気象・海象が劣悪な状況下で業務を行うこともあるため、機体の整備にも細心の注意を払っており、整備士の重要な業務の一つであると言えます。しかし、海上保安庁の整備士の仕事は、それだけではありません。海難が発生した場合、整備士は必要に応じてヘリコプターに乗り込み、飛行中は機体の状況をチェックします。そして、海難現場に到着すると今度はホイストマンとしてホイストによりけが人や病人を船舶等から吊り上げ救助する作業を行ったり、自らが船舶等に降下する場合もあります。
 海上保安庁の整備士は、単なる整備士としてだけでなくレスキュー 隊員のような側面も有しているのです。
ホイストマン
▲ホイストマン
整備作業
▲整備作業

(4)機動防除隊

 機動防除隊は、平成7年4月に油防除の専門的知識を有するチームとして発足しました。当初は2隊8名の編成でしたが、平成9年に発生した「ナホトカ号海難・流出油災害*2」「ダイヤモンド グレース号底触・油流出事故*3」を契機に増強され、現在は機動防除基地長以下12名3隊の編成のスペシャルチームとして全国各地で発生する海上災害に備えています。
排出油防除作業に対する指導
▲排出油防除作業に対する指導
 機動防除隊は、海難、災害によって海上に排出された油や有害危険物質等による海上災害が発生すると直ちに現場に赴き、排出された油や有害危険物質の防除や技術的指導、油などの排出に伴う海上火災に対する消火及び延焼の防止や技術的指導を行っています。
有害危険物質検知訓練
▲有害危険物質検知訓練

(5)大陸棚調査官

 大陸棚調査官は、我が国の大陸棚に関するデータを収集・解析することが仕事です。最新の各種観測機器を装備した2隻の大型測量船を用いて、長期間にわたり調査を行います。良いデータを得るためには、最新の海洋科学や調査技術に関する専門知識が不可欠です。そして、得られたデータの解析結果を国際会議において発表するときなどは、「世界の最先端で仕事をしているんだ」と実感することができます。一方で、政府が一丸となって取り組んでいる「大陸棚の限界画定のための調査」を着実に実施するために、関係省庁との綿密な調整を行うなど、多方面で活躍しています。
データ解析中の大陸棚調査官
▲データ解析中の大陸棚調査官

(6)運用管制官

 運用管制官は、海上交通センター*1に勤務し、航海の安全に役立つ情報の提供や海上交通安全法等に基づく航行管制を、24時間体制で行っています。具体的には、VHF通信を通じて航行制限の状況、海難状況、巨大船等の航行状況、操業漁船の状況、気象状況、工事作業の情報、自船の船位、他船の動向等の情報を必要に応じて提供しています。衝突の危険性がある場合などは、船舶を個別に呼び出し、直接注意を促します。また、巨船等から航路入航予定時刻等の通報を受け、航路にスムーズに入航できるように管制計画を作成し、入航順序、入航時刻の調整を行うとともに、霧等による視界不良 時には、船舶の航路入航制限等を行っています。
航行船舶と交信中の運用管制官
▲航行船舶と交信中の運用管制官