昭和47年に発足した海上保安試験研究センターは、海上保安の現場業務がより効果的、かつ効率的に遂行できるよう巡視船艇、航空機、陸上での業務に用いられる機器、資材の試作、改良のための試験研究機関として、また、海上で発生した事件・事故の証拠品を分析・鑑定する科学捜査機関として数多くの実績を重ね、令和4年5月に50周年の節目を迎えました。
発足当時を顧みると、高度経済成長期を迎えていた昭和40年代、社会経済が急速に発展する中で、巡視船艇の性能、構造、装備品の技術革新、電子技術を応用した新たな航行援助施設の導入など海上保安行政の変化、さらには深刻な社会問題となっていた公害事件に対応するため、従来、資機材類の製作及び修理を主体としてきた工場を総合的な試験研究を実施する機関に変更し、神奈川県横浜市で業務を開始しました。
平成2年からは、東京都多摩地区の立川広域防災基地内に移転し、災害時における海上保安庁の活動拠点としての役割が加わり、また、船舶衝突事故に起因する船体塗膜、航海経路を記録した電子情報、薬物密輸事件に起因する違法薬物等の鑑定能力を段階的に強化し、現在に至っています。
今後もますます多様化、高度化、複雑化を続ける海上保安の現場業務を的確に支援していくため、職員は、常に国内外の科学技術の進展に目を向け、最新技術の修得と自己研鑽を重ねながら、時代のニーズに応える試験・研究、分析・鑑定の充実と強化に励んでいきます。
■ 主な業績
【製作・修理・開発】
- ●灯台用フレネルレンズの製造・修理(平成初期に終了)
- ●ヘリコプターからの降下資機材の開発
灯台用フレネルレンズ
ヘリコプターからの降下資機材
【試験・研究】
- ●航路標識への自然エネルギーの活用(風力、波力、太陽光、潮流による発電)
- ●航路標識の構造、材料、性能の改良
- ●船艇の構造、装備品の改良
- ●社会環境の変化に即した分析鑑定手法の検証
- 延べ555件
【分析・鑑定】
- ●ワールドコンコルド号による漁船衝突死亡事件(昭和60年)
※船体塗膜鑑定を本格開始 - ●ロシア籍タンカー、ナホトカ号座礁による重油流出事件(平成9年)
※広範囲・多量に流出した油の排出源特定 - 延べ約41,000件
流出油の鑑定
加速度抑制型座席装置の緩衝構造(特許第3472735号)
塗膜片の採取
塗膜の層構成の確認