海上保安レポート 2021

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 現場「第一線」


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

海上保安官の仕事 > ライフワークバランス
海上保安官の仕事
ライフワークバランス
家庭と仕事の両立支援制度の利用促進

誰もが能力を発揮し活力ある職場を作るためには、男女を問わず育児・介護を行いながら安心して働き続けられる仕組みが必要であり、海上保安庁では、育児休業や介護休暇をはじめとする各種両立支援制度を整え、職員一人ひとりの事情に応じた活用を推進しています。また、職員の負担軽減のための時差出勤やフレックスタイム制の活用促進、テレワークの拡大等柔軟な働き方の実現への取組を続けています。男性職員の育児休業については、令和2年度以降、子供の生まれた全ての男性職員が育児に伴う休暇・休業を1か月以上取得できることを目指し、取得率向上への取組を強化しています。対象職員や管理職層職員に対する各種制度についての説明や研修会の開催、取得好事例や体験記の庁内外への発信により、組織全体の雰囲気醸成に努めています。

育児休業

第七管区海上保安本部 門司海上保安部 巡視船ともなみ 航海士補
篠原 宗一朗

篠原 宗一朗
乗組員-1
乗組員-2

乗組員の半数が若手職員という状況で、士補の最年長として自身の役割を考慮すると、「長期間不在となることは難しいのではないか」と自分の中で勝手に考えていたところ、船長から「育児休業は考えてる?」と声をかけていただきました。私自身、第2子誕生の際にも育児休業を取得していましたが、今回は自身の置かれた状況からネガティブにとらえていたところ、船長から「君が取得することが若手職員への見本になり、一定期間不在となることによって生じる業務への必要な穴埋めは、各職員の士気高揚、そして結果的に能力向上にもつながるのではないか」と後押ししていただいたこともあり、2か月間の育児休業を取得することとなりました。育児休業中は、これまでやろうともしなかった料理を始めました。結果として、妻の負担軽減につながったのかはわかりませんが、大変さと同時に楽しさも見出すことができたので、家事、育児を継続してやってみようと思っています。子どもの成長が著しい時期に、家族で同じ時間を共有できたことはとても幸せだと感じました。育児休業取得を応援してくださった職場の皆さんに感謝しています。


上司の声

巡視艇ともなみ 船長
境 正義

境 正義
巡視艇ともなみ

出産の約半年前に3人目が生まれる予定があるとの相談を受けました。

篠原官は、任された仕事は最後までやり遂げる責任感が強い性格の持ち主であり、当初は育児休業を取得することで他の乗組員へ負担・迷惑をかけるのではと心配を吐露する場面もありました。

しかしどんな職場であろうとも、一人の欠員によって業務執行体制が崩れることはありません。

そして、篠原官と育児休業について相談する中で、奥様から「産後1か月は傍に居て欲しいという希望がある。」という話もあったことから、これは必ず取得させてあげたいと思い、業務状況とも照らし合わせた上で2か月間の取得に至りました。

篠原官が育児休業を取得するにあたって、門司保安部との必要な調整もありましたが、本船においては何ら支障となることも無く、スムーズに調整を行わせていただきました。船艇の管理監督者として、最前線の現場だからこそ、育児休業などのライフワークバランスを積極的に推進していくことが非常に重要だと思います。


育児時間勤務

第四管区海上保安本部 総務部 情報通信課 総括係
山下 里奈

山下 里奈

私は2年間の育児休業をいただいた後、情報通信課総括係員として復職し、育児時間勤務制度を活用して働いています。

主な担当業務は、四管区内の無線局にかかる申請、課内庶務業務です。

復職当初は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、保育園休園や通勤抑制による時差出勤等により様々な生活様式の変化があり、なかなか生活リズムが定まりませんでしたが、半年ほど経つと業務内容や子育てと両立するための生活リズムを掴めるようになりました。

娘は2歳となりイヤイヤ期真っ盛りのため、時間までになかなか思い通りの準備ができず慌ただしい毎日を過ごしておりますが、職場の皆様のご協力・ご理解のもと、仕事と育児のメリハリのある生活を送らせていただいております。

今後も、お母さん海上保安官が増えることを期待しています。


時差出勤

本庁 総務部人事課 企画係長
奥村 太

奥村 太-1 奥村 太-2

令和元年の10月に本格的に本庁勤務を始めた時は、「時差出勤」というのは言葉では知っていても自分とは縁のない勤務スタイルだと思っていました。当然業務上の必要があれば早朝でも出勤となりますし、通常時においても所属する課の朝会等、自分が出勤する時間は業務からの逆算で決まるものだと考えていました。

しかし、令和2年になり遂にOlympic Yearになったと思った矢先に新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まり、状況が一変しました。業務継続体制を維持しつつも、職場内における感染拡大を最小限に抑えるための取組の一つとして、「時差出勤」にも白羽の矢がたった訳です。

外的な要因によって始めることとなった時差出勤ですが、当初は「出勤時間は10時だけど、少し早めに行った方がいいかな?」などと色々考えてしまい、出勤準備が整った状態でリビングの机に座ってソワソワしていました。しかし、所属する係の上司を中心に、時差出勤を含む感染拡大防止対策を実施することの重要性とそういった勤務体制での業務プロセスについて係のメンバー同士の共通認識を図ることで、今まで以上に係のメンバーを信頼することができ、安心して時差出勤をすることができるようになりました。

いざ本格的に時差出勤を始めてみると、思いのほか朝に余裕ができ、こうなると私の頭の中で座右の銘である"Why don't you do your best?(なぜベストを尽くさないのか?)"という言葉がザワつき始め、気づけば高強度インターバルトレーニング(通称:HIIT)を行った後に読書をし、心と身体を一旦落ち着けてから出勤する、という朝ルーチンが完成しました。

私は独身なので、時差出勤できる隙間時間を頭と身体の自己啓発に有効活用していますが、ご家族のいる職員にとっては貴重な家族時間になるものと思います。時には昼夜を問わない勤務をしなければならない海上保安官ではありますが、そんな私たちにとって時差出勤は、自分時間や家族時間を確保しライフワークバランスを充実したものにできる非常に有効な取組の一つだと思います。