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1 治安の確保
CHAPTER V. テロ対策
世界各地において、イスラム過激派やその思想に影響を受けたとみられる者等によるテロ事件が多発しており、また、ISIL等のテロ組織が日本を含む各国をテロの標的として名指し、アジア諸国においてもISIL等によるテロが相次ぐなど、現下のテロ情勢は依然として非常に厳しい状況です。さらに、新たなテロの脅威として、ドローンを使用したテロの発生も懸念されています。
海上保安庁では、巡視船艇・航空機による警戒監視、関連情報の収集、関係機関との緊密な連携による水際対策等の従来のテロ対策に加え、開催を控えた「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」を見据えた官民一体となったテロ対策を推進し、より一層テロ対策に万全を期すこととしています。
令和2年の現況
海上保安庁では、原子力発電所や石油コンビナート等の重要インフラ施設に対して、巡視船艇・航空機による警戒を行っているほか、旅客ターミナル・フェリー等のいわゆるソフトターゲットに重点を置いた警戒を実施しています。
このほか、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(国際船舶・港湾保安法)」に基づき、令和2年は、新型コロナウイルス感染症の感染予防措置を十分にとったうえで、外国からの入港船舶515隻に対して立入検査を行いましたが、テロとの関連が疑われる船舶は認められませんでした。
また、平成28年12月の「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」で決定した「海上保安体制強化に関する方針」の下、原発等テロ対処・重要事案対応体制の強化を着実に進めています。
原発警戒
関係機関との合同訓練
立入検査の状況
関係機関との港湾の点検
新たな脅威への対応
近年、世界各国でドローンを用いたテロ事案等が発生しており、我が国においてもそのような新たなテロの脅威についての対策が急務となっています。海上保安庁においては、関係機関と連携して不審なドローンの飛行に関する情報を把握するとともに、ドローン対策資機材を活用するなど、複合的な対策を講じています。
「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」に向けて
令和3年7月に開催される「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」は、選手村や競技会場等の多くが臨海部に位置するほか、いくつかの競技が海上で実施される予定であり、加えて、各国要人や観客等が集まることから、海上における警備が極めて重要であるといえます。
このため、海上保安庁では、平素からの取組を強化するとともに、大会期間中、全国から巡視船艇・航空機を多数集結・配備し、また、大会関連施設が多数存在する東京港内には監視カメラを多数設置するなどして、警戒監視体制を強化することとしております。
これらの体制をより一層盤石なものとするため、装備・資機材の増強整備及び事前検証、関係機関との連携訓練等所要の準備を積み重ねています。
官民一体となったテロ対策の推進
公共交通機関や大規模集客施設といった、いわゆるソフトターゲットはテロの標的となる傾向にあり、これらは日常の身近なところで発生する可能性があるため、この対策には国民の理解と協力が不可欠です。
このため、海上保安庁では、官民が連携したテロ対策の推進に力を入れており、臨海部のソフトターゲットである旅客ターミナルやフェリー等施設の運営者等とともにテロ対策を進めています。
具体例としては、平成29年度から、海事・港湾業界団体と関係機関が参画する「海上・臨海部テロ対策協議会」を開催し、官民一体となったテロ対策について議論・検討しています。特に、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」に関しては、各分野の専門家による研修、机上訓練及び旅客船を使用した実動訓練を実施し、大会本番に向けて官民一体による連携体制の確認を行いました。
そのほか、これまでに事業者によるテロ対策の実効性向上を目的とした「海上・臨海部テロ対策ベストプラクティス集」や業界全体としてテロ対策に取り組む姿勢のアピール等を目的とした「テロ対策啓発用ポスター」を作成し、海事・港湾の事業者等へ配布しました。
海上・臨海部テロ対策ベストプラクティス集(一部)
テロ対策啓発用ポスター
テロ対応訓練
今後の取組
海上保安庁においては、今後ともテロが現実の脅威であるとの認識の下、テロの未然防止やテロ発生時の対処にかかる体制を確実に整備していくとともに、関係機関や事業者等とより緊密に連携し、官民一体となってテロ対策に取り組んでいきます。
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