海上保安レポート 2021

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 現場「第一線」


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER II. 国内密漁対策
1 治安の確保
CHAPTER II. 国内密漁対策

我が国周辺海域の豊かな水産資源は決して無尽蔵ではなく、生態系のバランスを保ち水産資源を枯渇させないために漁獲量や操業方法・区域・期間に制限をかけるなどのルールが設定されています。しかしながら、ルールに従わない一部の漁業者による違法な操業や、資金確保を目論む暴力団等による水産資源の乱獲が後を絶ちません。

海上保安庁では、密漁被害を受ける地元漁業者等からの取締り要請にも適切に対応するため、関係機関や地元自治体と連携・協力し、それぞれの地域の特性に応じた取締りを行い、漁業秩序の維持を図っています。

令和2年の現況

令和2年の国内密漁事犯の送致件数は2,054件で、前年に比べ310件減少しておりますが、依然として件数が多い状態が続いています。

密漁は、実行部隊と買受業者が手を組んだ組織的な形態で行われるもののほか、暴力団が取引価格の高い漁獲物を資金源とするために関与する事例も見受けられ、その手口は悪質かつ巧妙です。

また、近年、放流等により漁業者が育成・管理する水産資源を個人消費の目的で密漁するものも多く見受けられます。

密漁事犯の一例〜悪質「かき」密漁者を逮捕!〜

徳島海上保安部(徳島県)は、かねてからぐ犯者としてマークしていた密漁者について、令和2年5月、兵庫県南あわじ市付近海域において、漁船及び潜水器を使用して「岩がき」の密漁を行っている状況を認め、同年6月、証拠に基づいて関係先19か所の捜索差押えを行い、密漁者3名を逮捕しました。

捜査の結果、被疑者らが過去5年間で約6千万円の不法収益を得ていたことが明らかになり、漁業法違反等により送致しました。

密漁された岩がき

密漁された岩がき

今後の取組

海上保安庁では、監視能力の更なる向上や採証資機材等の充実を図り、悪質・巧妙化する密漁事犯の厳格な監視・取締りに努めます。また、令和2年12月に罰則が強化された改正漁業法が施行されたことも踏まえ、引き続き、関係機関や漁業関係団体等との緊密な連携を図ることで、地域の特性に応じた未然防止対策等の総合的な密漁対策を推進し、漁業秩序の維持に努めていきます。