海上保安レポート 2021

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 現場「第一線」


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER IV. 密輸・密航対策
1 治安の確保
CHAPTER IV. 密輸・密航対策

近年発生している海上からの密輸については、一度に大量の薬物を密輸する事犯が相次いで発生しており、その手口は、小型船舶を利用した瀬取り(洋上における積荷の受け渡し)、海上コンテナ貨物への隠蔽等によるもので、大口化・巧妙化しています。また、船舶利用による密航については、かつて多発した密航船による集団密航ではなく、一般商船を利用した数名規模の不法上陸という態様であり、その手口は小口化している特徴が続いています。特に密輸事犯は、暴力団等や外国人の組織的な関与が見受けられることから、国際的な組織犯罪が行われているものと考えられます。

海上保安庁では、関係機関と連携し、我が国の治安及び法秩序を乱す密輸・密航事犯を厳格に取締り、密輸・密航の水際阻止を図っています。

令和2年の現況
密輸事犯について

令和2年の薬物事犯の摘発件数は、5件でした。このうち覚醒剤に関しては、令和2年11月、海上コンテナ貨物に隠匿された約237kgの密輸入事件を関係機関と合同で摘発しました。

その他薬物事犯として、4月に海上コンテナ貨物に隠匿された約722kgのコカインを関係機関と合同で発見・押収し、国内への大量の薬物流入を水際で阻止しました。

近年、海上からの密輸事犯は、小型船舶を利用した瀬取りや海上コンテナ貨物への隠匿といった手法により、一度に大量の薬物等を密輸する事犯を相次いで摘発しており、密輸手口は大口化・巧妙化しています。

密航事犯について

令和2年においては密航事犯の摘発件数はありませんでした。

近年の船舶利用による密航は、小型船や貨物船、訪日クルーズ船を利用した数名規模の密航やブローカーが関与する事犯が発生するなど、小口化の傾向が続いており、海上保安庁では、外国から入港する船舶に対する立入検査のみならず、港湾の監視・警戒、国内外関係機関との連携及び情報収集活動を行うことにより、不法上陸者の水際阻止、出入国管理及び難民認定法違反の取締りに重点を置いています。

今後の取組

海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集を行うとともに、その分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性が高い海域において、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施し、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な監視や立入検査を実施することで、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。

南アフリカ共和国来覚醒剤密輸入事件(千葉県鴨川市)

令和2年11月、第三管区海上保安本部及び国際組織犯罪対策基地は、関係機関と合同で、南アフリカ共和国来海上貨物のプラスチック射出成型機内に隠匿された覚醒剤約237キログラム(末端密売価格約151億円相当)の密輸入事件を摘発し、イスラエル人2名を国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等に関する法律違反(規制薬物としての所持)で逮捕しました。その後、覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)で再逮捕しました。

押収した覚醒剤

押収した覚醒剤