海上保安レポート 2018

はじめに


海上保安制度創設70周年記念特集
海洋の安全・秩序をつなぐ〜70年の礎とともに〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 領海・EEZを守る

2 治安の確保

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海の安全を創る

8 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

8 海をつなぐ > CHAPTER III. 国際機関との協調
8 海をつなぐ
CHAPTER III. 国際機関との協調

海に関して、関係各国が連携・協調しつつ、各国が有する知識・技能を世界共通のものとしていくため、さまざまな分野の国際機関が存在します。海上保安庁では、さまざまな業務を通じて得られた知識・技能を活かし、国際社会に貢献するため、これらの国際機関の取組みに積極的に参画しています。

平成29年の現況
1 国際海事機関(IMO)での取組み

IMOは、船舶の安全や船舶からの海洋汚染の防止等の海事問題に関する国際協力を促進するために設立された国連の専門機関で、現在173の国が正式加盟国、3地域が準加盟となっています。海上保安庁では、3地域が準加盟国となっています。平成29年には、IMOの委員会である海上安全委員会(MSC)、その下部組織である航行安全・無線通信・捜索救助小委員会(NSCR)及び海洋環境保護委員会(MEPC)、MEPCの下部組織である汚染防止・対応小委員会(PPR)に出席し、航行の安全及び船舶からの汚染の防止・規制に係る事項等の国際議論に貢献しました。

2 国際水路機関(IHO)での取組み

IHOは、海図などの水路図誌の最大限の統一、水路測量の手法や技術開発等を促進するため1970年に設立された国際機関で、現在88か国が加盟しています。平成29年4月、IHO総会が開催され、日本からは災害対応における水路機関の役割に関する決議の改正について提案を行い、活発な議論が行われました。

総会に加え、平成29年10月、IHO理事会が開催され、今後のIHOの戦略計画を議論するための作業部会の設置が決定され、副議長として海上保安庁海洋情報部技術・国際課国際業務室長(就任当時は海洋情報課海洋空間情報室長)が就任しました。

また、国際水路機関(IHO)とユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が共同で設置し、世界の海底地形名を標準化する「海底地形名小委員会」においても、平成27年10月に副議長に就任した海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室長(就任当時は技術・国際課地震調査官)が活動しています。今後も、我が国はIHOへの積極的な貢献を続けていきます。

3 国際航路標識協会(IALA)での取組み

IALAは、航路標識の改善、船舶交通の安全等を図ることを目的とした国際的な組織で、現在79の国・地域が加盟しています。平成28年12月にフランス・パリで、第63回IALA理事会が開催され、常設技術委員会の一つであるe-Navigation委員会の議長として、海上保安庁交通部企画課国際・技術開発室課長補佐の就任が決定されました。IALAの常設技術委員会における議長就任はアジア初となります。

4 コスパス・サーサット計画での取組み

コスパス・サーサット計画は、GMDSSの中核をなす人工衛星を用いた遭難通報システムを提供する国際的な枠組みであり、国際協定を締結した44の国や地域等が参加しています。このシステムにより、船舶及び航空機等から発信された遭難信号は人工衛星で中継され、世界中のどこからでも救助機関に伝えられます。

海上保安庁は、平成5年から日本の代表機関として、人工衛星で中継された遭難信号の受信及び処理を行うための地上設備を整備運用するとともに、世界で6箇所指定された情報交換の拠点である業務管理センターとして、北西太平洋地域(日本、中国、韓国、ベトナム、香港、台湾)で中心的な役割を果たしています。現在、遭難信号の検出時間短縮及び位置精度向上のため、国際的にシステムの近代化が進められており、海上保安庁においても新システムに対応した地上設備を新設するなど、コスパス・サーサット計画の発展に貢献しています。

平成29年9月には、北西太平洋地域間における諸課題の解決や連携強化を目的として、「第7回コスパス・サーサット北西太平洋データ配信地域会合」を韓国で開催しました。本会合では、各国が保有するシステムの運用状況や信システムの整備状況等について活発な意見交換会を行いました。

5 アジア海賊対策地域協力協定・情報共有センター(ReCAAP−ISC)での取組み

アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)とは、我が国の主導で締結されたアジアの海賊・海上武装強盗問題に有効に対処するための地域協力を促進するための協定です。この協定に基づき、情報共有、協力体制構築のため、平成18年にシンガポールに情報共有センター(ISC)が設立されました。設立以来、海上保安庁は、このISCへ職員1名を派遣し、海賊情報の収集・共有・分析及び法執行能力向上支援を積極的に推進しており、平成29年には、ASEAN10か国の海上保安機関職員等を対象とした法執行能力向上のための研修「Capacity Building Executive Programme2017」(シンガポールと日本で開催)に協力するなど、アジア地域における海賊対策に係る各種取り組みに貢献しています。


Capacity Building Executive Programme2017 集合写真
Capacity Building Executive Programme2017 集合写真
6 北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)での取り組み

NOWPAPは国際連合の機関である国連環境計画(UNEP)提唱のもと、閉鎖水域の海洋汚染の管理および資源の管理を目的とした地域海計画(RSP)の一つで、北西太平洋地域4か国(日本、韓国、中国及びロシア)により採択されています。海上保安庁は、この計画の中でデーター情報ネットワークに関する地域活動センター(DINRAC)、海洋環境緊急準備・対応に関する地域活動センター(MERRAC)において者会合等に参加し、同地域の海洋汚染の防止および海洋環境保全のための取り組みに積極的に関与・貢献しています。