海上保安レポート 2017

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 平和な海の継承〜海上保安庁の使命〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の 任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

海上保安官の仕事 > 海上保安庁のスペシャリスト集団
海上保安官の仕事
海上保安庁のスペシャリスト集団

海上保安庁には、高度な専門技術を有するスペシャリスト集団が存在します。

特殊救難隊
救急救命措置の様子
救急救命措置の様子

特殊な海難に対応するためのスペシャリストで、転覆した船舶や火災を起こした危険物積載船等における人命救助や火災消火、ヘリコプターからの降下・吊り上げ救助等高度な救助技術と人命救助のための専門的知識を有しており、映画「海猿」のモデルにもなっています。

特殊救難隊は昭和50年に発足し、平成27年10月には発足40年を迎えました。発足からの出動実績は、出動件数5,009件、救助人員2,604人となっています(平成29年3月31日現在)。また、自然災害への対応や国際緊急援助隊(JDR)としての海外派遣等、幅広い場面で活躍しています。


ヘリコプターからの降下訓練を行う特殊救難隊
ヘリコプターからの降下訓練を行う特殊救難隊
転覆船からの救助状況
転覆船からの救助状況

沿革
沿革
  • 昭和50年 第三管区海上保安保本部警備救難部救難課に「特殊救難隊」が発足(5名)
  • 昭和57年 羽田沖日本航空旅客機墜落事故に出動
  • 昭和61年 「羽田特殊救難基地」設立(4隊20名体制)
  • 平成07年 兵庫県南部地震に出動
  • 平成09年 日本海でのナホトカ号海難に出動
  • 平成16年 富山港沖練習帆船座礁海難に出動
  • 平成23年 東日本大震災に出動
  • 平成27年 特殊救難隊発足40周年(6隊36名体制)

※国際緊急援助隊として、海外派遣実績11件


現場の声

羽田特殊救難基地 第四特殊救難隊員


羽田特殊救難基地 第四特殊救難隊員

特殊救難隊は、危険物積載船等における火災消火、潜水作業による転覆船内からの人命救助、ヘリコプターから海面や船舶へ降下し、傷病者の吊上げ救助等、高度な技術と知識を必要とする「特殊海難」に対応することを任務としています。

この任務遂行のため、日々海難現場を想定した実践的な訓練を行い、技術や知識の向上に努めています。

特に助けを求める人を救助できた時の喜びは計り知れず、この充実感で身体が満たされていく感覚は他に例えようがありません。この成功体験が自信とモチベーションアップに繋がっていき、自分を成長させていけるところも特殊救難隊の魅力の一つではないかと思います。

私達は現場で常に危険と隣り合わせであり、いかなる状況においても安全・確実に救助するため、日々厳しい訓練で自分の限界を知り、自ら考え危険を予知して行動できる隊員をこれからも目指していきます。

機動防除隊
油汚染事故への対応
油汚染事故への対応

海上災害の防止に関するスペシャリストです。海難等により海上に流出した油、有害液体物質、危険物等の防除措置や海上火災の消火及び延焼の防止措置等について、高度な技術と専門的な知識を有し、関係者への指導・助言や調整を行うほか、必要に応じて自らも防除措置等を行います。

平成7年の発足から、これまでの出動回数は362件となっています(平成29年3月31日現在)。

また、国際緊急援助隊(JDR)として海外にも派遣されるなど、さまざまな場面で活躍しているほか、国際協力機構(JICA)と協力して、2010年に設立されたスリランカ沿岸警備庁(SLCG)に対し、油防除能力強化を目的とした技術支援を平成27年1月から実施しています。(Column vol.09 スリランカ沿岸警備庁への油防除技術支援


防除措置計画の立案
防除措置計画の立案
有害危険物質への対応
有害危険物質への対応
事故関係者への指導・助言
事故関係者への指導・助言

沿革
沿革
  • 平成7年 第三管区海上保安本部警備救難部救難課に「機動防除隊」が発足(2隊8名体制)
  • 平成9年 日本海でのナホトカ号海難や東京湾でのダイヤモンドグレース号海難に出動
  • 平成10年 「横浜機動防除基地」設立(3隊12名体制)
  • 平成19年 HNS汚染事故への準備及び対応の充実強化(4隊16名体制)
  • 平成23年 東日本大震災に出動
  • 平成25年 釜山沖ケミカルタンカー衝突火災海難に出動
  • 平成27年 機動防除隊発足20周年

※国際緊急援助隊として、海外派遣実績4件

※HNS……Hazardous and Noxious Substancesの略語で有害危険物質のこと(ベンゼン・キシレン等)


現場の声

羽田特殊救難基地 第四特殊救難隊員


羽田特殊救難基地 第四特殊救難隊員

防除措置官は防除基地に赴任して約3ヶ月間、油、有害危険物質の事案に対応するため先輩隊員から研修を受けます。防除措置官は30歳代、40歳代が占め、特殊救難基地と比べ年齢層が高いため記憶力、体力とも更に練磨が必要になります。日々、条約・法令や防除手法等の研修を行い、頭がパンクしそうになりながら奮闘し、気温の高い夏頃には化学防護服を装着し大汗をかきながらの行動訓練を乗り切っています。しかし、研修等で習得した知識だけでは実際の事案に対応しきれないこともあり、流出油の場所に応じた適応法令、防除手法等を現場ごとに検討し対応しています。私は間もなく3年目となりますが、勉強の毎日をすごしています。

警備実施等強化巡視船
特別警備隊
特別警備隊

警備実施等強化巡視船は、違法・過激な集団による海上デモや危険・悪質な事案、テロ警戒等に対応するため、必要な知識、技能及び装備を備えた特別警備隊が配置されている巡視船です。平成28年5月に開催された伊勢志摩サミットにおいても、その海上警備の中核として活躍しました。


警備実施等強化巡視船「わかさ」
警備実施等強化巡視船「わかさ」
ゴムボート操船訓練
ゴムボート操船訓練
制圧訓練
制圧訓練
測量船
AUVごんどう投入作業
AUVごんどう投入作業

測量船は、海底地形の測量、海流や潮流の観測、海洋汚染の調査等を行う船です。海上保安庁には、本庁配備の大型測量船が5隻、管区等配備の小型測量船が8隻あります。測量船は、専ら海洋調査に従事するため、自律型潜水調査機器(AUV)やマルチビーム音響測深機をはじめとする特殊な海洋観測機器の運用を前提につくられており、その乗組員も高度な専門知識・技術を有する海洋観測のエキスパートです。


AOV投入作業
AOV投入作業
搭載艇による測量の準備
搭載艇による測量の準備

現場の声

大型測量船「昭洋」 主任観測士


大型測量船「昭洋」 主任観測士

私は、測量船「昭洋」で主任観測士として勤務しており、主に観測機器の操作や管理、整備等を行っています。

大型の測量船を使用する調査は、陸地から遠く離れた海域で行われることがほとんどで、一度出港すると長期間の航海となります。私たちの仕事は人の目に触れることが少なく地味ですが、国土面積の約12倍と広大な日本の海のいたるところでさまざまな観測機器を駆使し、最前線でひたすらデータを収集する仕事を誇らしく思い、使命感を持って取り組んでいます。

今後も与えられた任務を完遂するため、日々研鑽を積んでいきたいと思います。


現場の声

大型測量船「拓洋」 観測士補


大型測量船「拓洋」観測士補

私は測量船「拓洋」で観測士補として勤務しており観測機器を常に良い状態に整備し、より良いデータを取得するために、気分屋な機器相手に悪戦苦闘しています。私は乗船して1年のルーキーですので、知識と技術を身につけ、観測機器のプロになることが目標です。また、観測作業は海を相手にしており一人で行うのはとても困難です。緊張感のある場面もありますが、船長をはじめ乗組員の方々の協力を得て安全に作業しています。「拓洋」というチームが一丸となって行う作業は安心感があり、終わった後には大きな達成感があります。私もチーム「拓洋」の一員として観測業務に貢献できるようこれからも頑張ります。

海上交通センター
関門海峡海上交通センター
関門海峡海上交通センター

海上交通センターは、船舶の安全運航に必要な情報の提供と航行管制を行うことにより、ふくそう海域における海上交通の安全を図っています。現在、海上交通センターは東京湾、伊勢湾、名古屋港、大阪湾、備讃瀬戸、来島海峡及び関門海峡の7箇所に設置されています。

交通管制の様子
交通管制の様子
現場の声

関門海峡海上交通センター 運用管制官


関門海峡海上交通センター運用管制官

私は関門海峡海上交通センター運用管制課において運用管制官として業務を行っています。

関門海峡は航路全長約15海里(約27km)にもおよび、1日平均500隻もの船舶が航行しています。航路はS字に湾曲し、一番狭いところでは、約500mしかなく、加えて潮流も強いことから、船舶交通の難所として知られています。また、航行する船舶の国籍や船種、大きさは10万トン以上のLNG船から小型漁船までさまざまな船舶が航行しており、海上交通の要衝となっています。

このような状況下でも、各船舶が安心して航行できるよう的確な情報提供を行い、海上交通の安全に努めていきます。


現場の声

関門海峡海上交通センター 運用管制官


関門海峡海上交通センター 運用管制官

私は、関門海峡海上交通センターにおいて、関門海峡を航行する船舶に対し、情報提供等を行う運用管制官として業務を行っています。海上保安学校を卒業して、直接当センターに配属されたのは、私が初めてでした。関門海峡で海難が発生しないよう、未然に防ぐ管制業務に魅力を感じ、これに伴い、任された重い責任にも、やりがいを感じながら業務にあたっています。勤務形態は日勤も夜勤もありますが、予め決められた当直の中で従事でき、また、海上保安庁の職場の中では比較的女性の多い事務所となっています。無線を使用して船舶と交信することも多く「女性の声の方が聞き取りやすい」という意見もよく耳にします。今後も「女性運用管制官」がさらに活躍の場が拡げられるよう精一杯努めていきます。

海上保安試験研究センター

東京都立川市の海上保安試験研究センターで働く職員は、海上保安業務に使用する資機材や海上犯罪の科学捜査に関する試験・研究、化学物質等の分析鑑定を行っています。


現場の声

海上保安試験研究センター 化学分析課


海上保安試験研究センター 化学分析課

私は、分析のスペシャリストを目指し、海上保安試験研究センター化学分析課で、分析鑑定を行っています。大学・大学院時代、大阪湾の環境問題を政策学の観点から研究しました。研究が進むにつれ、実際に海で起きている環境問題を知る必要性を痛感し、海上保安庁への入庁を決意しました。海上保安学校在籍中、恩師との出会いを機に「分析」を通じて環境問題に取組む仕事がしたいという想いが強くなり、現職を希望しました。現職に着任後、「分析」の道の険しさを感じると同時に、分析の面白さ、特に「鉱油」の奥深さに触れ、常に湧き出る探究心とともに充実した日々を送っています。今後も恩師の教えを胸に「分析」を通じて日本の海の環境問題に取組んでいきたいと思います。


現場の声

海上保安試験研究センター 科学捜査研究課専門官


海上保安試験研究センター科学捜査研究課専門官

私は、海上保安試験研究センター科学捜査研究課で主に塗膜片などの微物や違法薬物の鑑定業務を行っています。これら鑑定業務は「法化学」とも呼ばれ、主に化学的手法を用いて証拠物件の検査・実験を行うことにより、犯罪の事実を証明するものです。昨年は当庁の違法薬物の押収量がとても多く、私も昼夜を問わず違法薬物の鑑定業務を行っていたことが記憶に新しいところです。この仕事はミスが許されず、また常に新しい知識・技術を吸収しながら行うことが求められます。私も約20年近く鑑定業務を行っていますが、自分でもベテランとは考えておらず、これからも新鮮な気持ちを持って証拠物件と向き合っていきたいと考えています。

海上保安庁音楽隊
平成28年度海上保安庁音楽隊定期演奏会
平成28年度海上保安庁音楽隊定期演奏会
海上保安庁音楽隊旗
海上保安庁音楽隊旗

海上保安庁音楽隊は、音楽を通じて国民との融和を図り、当庁の広報活動の効果を高めるとともに、当庁職員の士気の高揚を図ることを目的として、当庁の式典、音楽隊定期演奏会のほか、国家的行事での奏楽、海に関するイベントなど多方面で演奏活動を行っています。

隊員は霞が関の本庁等において、他の職員と同様に公務を行いながら、練習や演奏活動を行っています。ご興味や機会がございましたら、ぜひ演奏会に足をお運びください。皆様のご来場をお待ちしております。

海上保安キャラクター
海上保安庁音楽隊
JAPAN COAST GUARD BAND
QRコード

http://www.kaiho.mlit.go.jp/doc/band/ongaku.html