海上保安レポート 2017

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 平和な海の継承〜海上保安庁の使命〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の 任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

海上保安官の仕事 > 女性職員の活躍推進
海上保安官の仕事
女性職員の活躍推進

海上保安庁では、昭和54年から女性海上保安官の採用を始め、特に近年は積極的に女性職員の採用と登用の拡大を図っています。平成29年4月1日現在、865名の女性職員が全国各地で海上保安業務に従事しています。平成26年度には、女性の活躍推進や、ワークライフバランスの推進に向けた政府全体の取組等をふまえ、海上保安庁次長を本部長とする「海上保安庁女性職員活躍・ワークライフバランス推進本部」を設置し、女性職員が活躍できる職場環境の整備等を進めています。

女性職員の活躍の場は、外国語を駆使して外国人犯罪の捜査を行う国際捜査官、鑑識技術を駆使して客観的証拠を確保する鑑識官、適切な情報提供により船舶交通の安全を確保する運用管制官、航空機からのしょう戒や救助活動を行う飛行士(パイロット)等、現場の最前線で活躍する業務から、海上保安部課長や巡視船船長等、幹部職員としてその重責を担う職まで多岐にわたっています。

このような中、平成29年4月には、初の海上保安部長が誕生しており、女性海上保安官のさらなる活躍にむけ、海上保安庁では様々な取組を進めていきます。

海上保安庁における女性職員活躍推進への取組
女性用品等の収納スペース確保のための物入れの増設
女性用品等の収納スペース確保のための物入れの増設
 
浴室シャワーヘッド位置の調整、ハンドレールの改良
浴室シャワーヘッド位置の調整、ハンドレールの改良

海上保安庁では女性職員の不安の解消と意欲向上に向けて、若手女性職員を対象に、先輩女性職員による経験談等の講演や外部講師による講義等からなる研修を実施しているほか、海上保安大学校・海上保安学校の学生に対し、男女共同参画に関する研修を実施しています。また、各個人の将来を見据えた業務への取組・キャリアパスを想定した異動希望の提出等ができるようにするため、学生に対し、人事についての知識を付与し、今後のキャリアパス(※)を考える研修を実施しています。

巡視船艇においては、女性職員も快適に過ごせるよう、新造時の設計段階で配慮を行うとともに、古い設備の改修を行っています。

この他に、結婚・出産といった職員自身のライフイベントをふまえ、仕事と家庭を両立させ、働き続けられるキャリアプランについて相談できるよう、人事担当者による面談や、男性職員を含めハラスメント防止のための研修を実施するなど、女性職員の働きやすい職場の構築に努めています。

※キャリアパスについては海上保安官の仕事 目指せ! 海上保安官 海上保安官のキャリアパス にて紹介しています。

職員のワークライフバランスに配慮した人事運営

海上保安庁の業務は24時間365日休むことができません。しかしながら、それを支える職員が抱える育児や介護も24時間365日休むことができません。こうした海上保安庁の業務執行体制を維持しつつ、職員のワークライフバランスにも配慮するためには、育児や介護を配偶者等のパートナーとともに分担しながら、仕事と家庭を両立できる環境整備が必要不可欠になっています。

海上保安庁では、こうした育児や介護等の事情を抱える職員に対して、例えば、夫婦が同居できる配置や、職員の両親等の親族から支援を受けることのできる配置等、職員1人1人が抱える事情に応じた人事運営を積極的に行っています。

さまざまな職場で活躍する女性職員

女性も、男性と同様にその能力や適性に応じた役職に就きます。最近では、管区海上保安本部課長や巡視船船長等、現場の最前線で活躍する女性海上保安官も増えています。

海で活躍する女性職員
練習船「こじま」 主任通信士
練習船こじま主任通信士

教官という職に就いて1年10ヶ月が経ちました。「こじま」では教官として各種実習や訓練に携わる業務をしています。実習生によって理解度や習熟度が異なっていたり、さまざまな個性をもっていたりと、一様ではありません。どうしたら理解してもらえるか、わかりやすく伝えられるかといった、教えることへの難しさを感じると共に、教えた成果がすぐに現れないことに、もどかしさを感じることもありました。しかし、実習生が将来現場で活躍する姿を期待しながら、日々の実習や訓練に取り組んでいるところです。

姉のような心で実習生を見守りながら、彼らから刺激を受けつつ、新たな知識を身に付け、私自身も共に成長していきたいと思います。


巡視艇「やなかぜ」 航海士補
巡視艇やなかぜ航海士補

私はCL型巡視艇で航海科職員として勤務し、主に船の運航、取締り及び海難救助に携わっています。

また、制圧指導員として、制圧訓練のメニューを考えたり、実際に技の指導を行い、保安部職員の制圧能力の向上に努めています。

私はもともと合気道を習っていたのですが、それに加えて制圧の技術を身に付けることは護身にも繋がるので、女性であっても海上保安官として習得した方が良いと考え練習に励み、女性海上保安官で初めて制圧検定上級の資格を取得するに至りました。

今、女性海上保安官の活躍の場はどんどん広がっています。自分のやりたい事を諦めずに取り組めば、必ず道はひらけます。


巡視船「もとぶ」 機関士補
巡視船もとぶ機関士補

私はPL型巡視船の機関士補として主に巡視船や搭載艇の機関のメンテナンスを行い、航海中には見張りや採証活動等も行っています。そのほか中国語の国際捜査官としても活動しています。国際捜査官の業務では、語学能力を活かし、外国船に対する中国語での無線交信や外国人が関係する犯罪捜査に従事しています。現在、女性の国際捜査官の数は少ないのですが、犯罪捜査では女性にしかできない業務もあり活躍の機会が多くあるので、とてもやりがいを感じています。


巡視艇「せとぎり」 機関士補
巡視艇せとぎり機関士補

私は、PC型巡視艇の機関士補として勤務しています。機関の整備や保守を行いながら、船舶がふくそうする来島海峡で船舶の安全な航行を確保する航路しょう戒、海難救助や密漁取締り等多岐にわたる仕事をしています。昨年、縁あって職場の人と結婚しました。お互いに休日勤務や当直、夜間の緊急呼び出し等大変ですが、その分、一緒に居る時間を大切にしています。これからは、育児や介護の両立支援制度等を活用しながら、妊娠、出産、育児等のライフイベントを経験し、その生き方が後輩職員の道しるべとなるような女性海上保安官を目指し、夫と共に頑張っていくことが夢です。『海が好き、船に乗って仕事がしたい。』そこの君! 是非、一緒に夢を叶えませんか。


特定運用巡視船 第二クルー 主計士補
特定運用巡視船第二クルー主計士補

私は尖閣領海警備専従船で主計士補として勤務しています。私の主な仕事は調理です。船は海上で行動する日数が長いこともあり、やはり乗組員の楽しみの一つである食事を作るということにとてもやりがいを感じ、「美味しかった」という言葉をもらえた時は格別なものです。また調理だけでなく、他の乗組員と協力して行う中国公船への対応等、責任のある業務があり、女性も男性に劣ることなく活躍できる場がたくさんあります。私は常にやる気と向上心をもってこれからも多くのことを学び、経験して立派な女性海上保安官となれるよう、日々の業務に取り組んでいきたいと思います。


空で活躍する女性職員
仙台航空基地 飛行士
仙台航空基地飛行士

私は回転翼航空機の機長をしています。日々しょう戒を行い、救難事案や油排出事案に対応したり、機動救難士と救難訓練を行ったりしています。

業務を終え、誰も怪我することなく、機体に不具合もなく無事に空港へ戻ってきた時、安堵感と同時に、チームで活動をするこの海保航空の仕事に携わる事ができて良かったと実感します。仲間達に支えられ仕事ができる事に感謝しています。

24時間いつ何が起こるか分からない緊張の連続、体力勝負の毎日ですが、安全運航を第一に業務に励み、そして後進育成が今後の目標です。


巡視船「えちご」 航空通信士補
巡視船えちご航空通信士補

私は、ヘリコプター1機搭載型巡視船「えちご」に勤務しており、船と航空機における無線通信を行っています。航空の道に来て2年が過ぎましたが、未だ勉強の毎日でくじけそうになることもあります。しかしながら、海難が発生し、機体に乗って救助活動にあたる際、航空科職員一同が力を合わせて救助する姿に、毎回とても感動しますし、やりがいのある仕事であると感じるとともに、勉強は大変だけれども航空に来ることが出来て良かったなと感じています。

プライベートにおいては、現在結婚して3か月になります。幸いにも海上保安庁の仕事に理解のある夫と結婚することが出来ました。今後は仕事と家庭を両立させることになりますが、両立させるには、どんな時においても夫婦ともに力を合わせ支え合うことが基本であり、また、このことが一番重要になってくるのではないかと考えています。


那覇航空基地 整備員
ヘリコプターの整備業務

私は、航空基地で主にヘリコプターの整備業務をしています。

航空基地での仕事は、機体の整備業務はもちろんのこと、実際にヘリコプターに搭乗して、機体の状態の確認や、上空からの写真撮影を行います。海難現場では、私はホイストマンとして、機長や機動救難士と連携して吊上げ救助作業に従事するなど、多岐に渡る仕事をしています。そのため、航空基地では多くの知識、技術を必要とし根気がいる仕事がたくさんあります。私自身は、苦手な業務も多々あり整備士としても駆け出しですが、常に、航空機を安全に飛ばせるように機体を維持する仕事にやりがいと責任を感じながら、日々の努力と持ち前のど根性で業務に励んでいます。


陸で活躍する女性職員
本庁海洋情報部 課長補佐
本庁海洋情報部課長補佐

私は、他部や他省庁での勤務を除く11年間、海底の動きをセンチメートルの精度で測る『海底地殻変動観測』という業務を担当しました。平成23年3月の東北地方太平洋沖地震の発生時には、震源の近傍で海底が24m動いたという観測成果が得られ、この結果は国内外のニュースや新聞記事に大きく取り上げられました。タイムリーかつ分かりやすく伝えることがとても重要で、担当としての責任は大きかったですが、その分、大きなやりがいを感じました。

現在は、主に海図を作るための調査を行う海洋情報部海洋調査課で課長補佐として勤務しています。予算・定員要求や突発事案への対応等初めてのことばかりですが、課の業務がスムーズに進むよう努めていきたいと思います。


第五管区海上保安本部経理補給部 補給課 補給調達官
管区本部経理補給部補給課補給調達官

私は管区本部経理補給部補給課で補給調達官として、主に物品調達・修繕等発議受付の窓口業務や物品管理を行う業務に携わっています。海上保安学校の情報システム課程を卒業後、海上交通センターや海上保安部交通課での勤務を経て、“もっと業務の幅を広げたい!”と経理補給部を希望し現職に至っております。

私には子供が2人いるのですが、所属する経理補給部は家庭と仕事の両立に対し非常に協力的で、平成28年度導入された「フレックスタイム制度」を早速利用させて頂き、夫婦で育児の分担を決め、週の半分は育児のため早期退庁し、残りの半分は時間を気にせず存分に業務を行うメリハリの効いた毎日を過ごしています。

勤続20年を超えて、もうUターンに差し掛かっておりますが、まだまだこれから! 家庭と仕事を両立しながら、新しい業務にもどんどんチャレンジしたいと思っています!


紋別海上保安部 管理課 総務係
海上保安部総務係

私は海上保安部で総務係として勤務しています。総務係は部内事務の総合整理や職員の福利厚生等現場で活躍する職員のサポートが主な仕事です。

私が勤務する海上保安部は、平成27年3月に女性用の施設が整備され、私は初めての女性職員として着任し、また、所属管区内の海上保安部署では初となる夫婦の同居及び同じ部署での勤務をさせて頂いています。

当初は他の職員の方が気を使うのでは? と申し訳ない気持ちもありましたが、主人と休みを合わせやすくなり、また、単身の時はさぼりがちだった家事もこなし、今まで以上に仕事とプライベートにメリハリをつけて過ごせるようになりました。

今後も充実感を持って働き続けて行きたいと思います。


第四管区海上保安本部 警備救難部救難課 計画係
管区本部救難課計画係

私は現在、管区本部の救難課にて勤務しています。育児休業をいただき、昨年の春に復職をいたしました。現在も育児時間を活用させていただき、仕事をしながらも子どもとの時間を多く持つことが出来ています。このことは、職場の皆様のご協力に他ならないと思っております。女性が辞めずに仕事を続けていられるような制度が現在の当庁には充分に確立されていると思います。ただ細かいところの都合を尊重しカバー出来るのは、制度ではなく我々職員だと思います。私も何か恩返しをしていくことで活躍の一助になればと思います。


中城海上保安部 交通課 安全係
海上保安部交通課安全係

私は、4歳と2歳になる幼児2人の子育てをしながら勤務しています。前任地ではそれぞれ1年間の育児休業を取得し、昨年仕事に復帰しました。私が仕事を続けることができるのは、家族からのサポートだけではなく、職場からの温かい応援をいただけたからだと思います。

今は、保安部の交通課安全係として、港内の整頓と船舶交通の安全確保に関する業務や海難防止活動に携わっています。当保安部の港は、LNG船などエネルギー船が多数入港し、日本で1番面積の大きな港です。そのため、港長業務の1つである工事作業や行事許可も多数申請されます。また、年間数発の不発弾が港内で発見されることから、船舶の安全を確保するため、港則法という法律に基づき、船舶交通に制限をかける事務を行っています。

亜熱帯気候の地域特性により、年間を通して海水浴やダイビングを楽しむことができ、マリンレジャーがとても盛んです。海上安全指導員というボランティアの方と合同で海浜やマリーナを訪問したり、県警とラジオに合同で出演したり、地域と連携して海難防止活動を実施しています。1件でも、1人でも海難が減るよう、今後も業務に取り組んでいきたいと思います。