ひとたび船舶の火災、衝突、乗揚げや沈没等の事故が発生すると、人命・財産が脅かされるだけでなく、事故に伴って油や有害液体物質が海に排出されることにより、自然環境や付近住民の生活にも甚大な悪影響を及ぼします。海上保安庁では、事故災害の予防に取り組むとともに、災害が発生した場合には関係機関とも連携して、被害を最小限にするよう取り組んでいます。
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4 災害に備える
CHAPTER I 事故災害対策
ひとたび船舶の火災、衝突、乗揚げや沈没等の事故が発生すると、人命・財産が脅かされるだけでなく、事故に伴って油や有害液体物質が海に排出されることにより、自然環境や付近住民の生活にも甚大な悪影響を及ぼします。海上保安庁では、事故災害の予防に取り組むとともに、災害が発生した場合には関係機関とも連携して、被害を最小限にするよう取り組んでいます。 ■1 事故災害への対応
平成25年に発生した船舶火災隻数は82隻で、前年より7隻増加しました。このうち、船種別で最も多いのは、漁船の41隻で、全体の50%を占めています。海上保安庁では、船舶火災が発生した場合には、消防機能を有する巡視船艇等を活用して消火活動を実施しています。また、平成25年に海上保安庁が対応した油排出事故は135件で前年より29件増加しました。海上での油等の排出事故では、排出した原因者による防除が原則であるため、海上保安庁では、原因者が適切な防除を行うための指導・助言を行っています。しかし、油等の流出が大規模である場合や、原因者の対応が不十分な場合には、関係機関とも協力の上、海上防災の専門集団である機動防除隊等により海上保安庁自らが防除を行っています。
■2 事故災害対処のための体制強化
海上保安庁では、事故災害に対して、迅速・的確な対処を行うための体制整備を進めています。平成25年度は災害対応能力を強化した巡視船艇を全国に8隻配備したほか、現場で対応にあたる海上保安官に対して、海上火災や有害液体物質排出への対処等に関する研修・訓練を実施しました。 また、排出油等に対する的確な防除を行うためには、排出された油等が漂流する方向、速度等を予測する必要があります。海上保安庁では、測量船等で観測した海象(海流、水温等)の情報や、海洋短波レーダーにより測定した相模湾や房総半島南方の海流の情報等をリアルタイムに収集し、漂流予測の精度向上に努めています。
さらに、流出油による被害を最小限に食い止めるためには、各地域での関係者との情報共有・連携が重要であることから、地方自治体、漁業協同組合、港湾関係者等で構成する協議会等を全国各地に設置し、関係者が迅速かつ的確に対応できるよう油防除訓練などを実施しています。 このほか、油排出事故等の発生に備えるため、全国の沿岸域の地理・社会・自然・防災情報等を沿岸海域環境保全情報としてとりまとめ、整備・更新しています。これらの情報は、CeisNet(シーズネット)(http://www2.kaiho.mlit.go.jp)として、パソコンやスマートフォンからアクセスできます。 ■3 事故災害の未然防止対策
海上保安庁では、事故災害の未然防止対策として、タンカー等の危険物積載船舶の乗組員や、危険物荷役事業者等を対象に訪船指導や、タンカーバースの点検等を行っています。さらに、旅客船の事故対応訓練等を実施し、運航管理者等に対して事故時の措置について指導しています。 ■4 国際連携
排出油等による海洋環境汚染は、我が国だけの問題ではなく、各国と連携して対応することが重要です。このため、海上保安庁では、国際海事機関(IMO)の関係委員会に出席するなど、国際的な取組みにも参画しています。 また、日本海や黄海での海洋環境の保全を近隣諸国とともに進める「北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)」への参画や、各国関係機関との合同油防除訓練を通じて、事故発生時に関係国が協力して対応できる体制の構築にも努め、国際的な連携を図っています。 さらに、海洋汚染・海上防災に関する知識・能力が十分でない国々に対しては、各国担当者に対する研修等を通じ、海上防災体制の構築を支援しています。 海上防災のスペシャリストに迫る〜機動防除隊とは〜
海上保安庁では、今後とも、巡視船艇・航空機や防災資機材の整備、現場職員の訓練・研修等を通じ、事故災害への対処能力強化を推進するとともに、関係者への適切な指導・助言、国内外の関係機関との連携強化通じて、事故災害の予防や事故災害発生時の迅速かつ的確な対処に努めます。 |