海上保安レポート 2011

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 新たな海洋立国に向かって


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 領海等を守る

3 生命を救う

4 青い海を護る

5 災害に備える

6 海を識る

7 交通の安全を守る

8 海を繋ぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


おわりに

5 災害に備える > ChapterII 自然災害対策
5 災害に備える
ChapterII 自然災害対策

海上保安庁では、地震、台風、豪雨等、自然災害が発生した際には、国民の生命及び財産を災害から保護するための災害応急活動を実施します。人員・資機材の輸送、被災者の避難等について迅速な対応を行うため、日頃から訓練等を実施し、被害を最小限に抑えることに努めています。

最近では、昨年10月に、鹿児島県奄美地方で発生した集中豪雨により人的被害やライフラインの途絶等の被害が生じ、海上保安庁は自治体や消防と協力して災害応急活動を実施しました。

平成22年の現況
■海底地殻変動観測の概要
海底地殻変動観測の概要
関係機関との合同防災訓練の様子
▲関係機関との合同防災訓練の様子

防災訓練

地方自治体等関係機関との連携強化を図るため、東海地震、東南海・南海地震及び首都直下型地震等の自然災害に備えた合同訓練を171回実施しました。

地震発生予測につながるデータ収集

東海地震や東南海・南海地震等に代表される海溝型地震は、その震源域の大部分が海域にあり、基盤となるデータ収集が重要です。海上保安庁では、将来の海溝型地震の発生が予想される日本海溝や南海トラフ等の太平洋側海域において、測量船による海底地殻変動観測等を行い、大地震の発生予測につながる海域の地殻変動データを整備し、その結果を地震調査研究推進本部等に報告しています。

海域火山の調査

南方諸島及び南西諸島の海域にある火山島や海底火山の構造等の調査及び火山の活動状況の監視を実施し、航行船舶等に対して注意喚起を行うとともに、火山噴火予知連絡会等に報告しました。


今後の取組み

1 機動性の高い救助体制の構築

救助体制の充実強化

海上保安庁では、事故や災害発生時にヘリコプターを使って迅速に救助等の対応をとるため、機動救難士を航空基地等に配置していきます。平成23年度においては、仙台航空基地に機動救難士を配置し救助体制の充実強化を図ります。

関係機関との連携強化

机上訓練、実働訓練等を通じ、自然災害対応における関係機関との連携を強化します。


2 大規模地震の想定震源域における調査

海域で発生する大地震を予測するための調査研究においては、まだ十分なデータが蓄積されていません。今後も、引き続き海底地殻変動観測等を実施し、調査結果を地震調査研究推進本部等に報告して、巨大地震発生メカニズムの解明に貢献していきます。

3 海域火山の監視

海底火山の噴火
▲海底火山の噴火

現在も活動している南方諸島や南西諸島方面の海域火山について、海底火山の地下構造を解明するため、測量船による海底地形・地質構造等の科学的調査及び航空機による火山活動監視・観測を実施し、これらの監視や調査で収集したデータを火山噴火予知連絡会等に報告するほか、航行船舶への情報提供、防災対策の基礎資料として活用していきます。


4 防災情報の整備・提供

離島や沿岸域において、火山噴火や地震等の災害が発生した場合に、海上からの円滑な救助活動を行うため、海底地形等の自然情報に加え、陸上の医療機関や避難場所等の防災に必要な諸情報を網羅した「沿岸防災情報図」の整備を行っていきます。また、大規模地震による津波被害が想定される海域において、津波の波高、到達時間等を記載した「津波防災情報図」を整備・提供していきます。さらに、地震発生、火山の噴火や津波の到達が予想される場合等においては、航行警報を発出し速やかに航行船舶等に注意を促していきます。


5 港内における津波対策

地震が発生し大規模な津波の来襲が想定される場合、港内の舶船への甚大な被害の発生が懸念されます。予想される津波の規模や船舶への影響等は港ごとに異なることから、主要な港を中心にそれぞれ「船舶津波対策協議会」を設立し、海上保安庁が収集・整理した津波防災に関するデータを活用しながら必要な対策の充実を図ります。