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2. 海洋情報の提供
平成20年には、海洋調査の実施により得られた最新のデータを基に、海図(新刊33図、改版70図)や水路誌(新刊2冊、改版8冊)等を刊行したほか、港湾工事などによる水深や地形の変化が著しい場合は、水路通報により補正図を発行し海図を訂正しました。また、航路障害物の存在等緊急に周知する必要がある情報については航行警報を発出しました。さらに、電子海図表示システム(ECDIS)で利用できる航海用電子海図(ENC)については、新刊として78セルを刊行するとともに、その最新維持を図るため電子水路通報を発行しました。
外国人船員に対しては、英国海洋情報部を通じて、海外において日本近海の英語表記のみの海図を販売するとともに、外国船舶の入港実績の多い日本の港においても、
これら海図を販売し、英語表記のみの海図の普及に努めました。
また、海上保安庁では、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が推進する国際海洋データ・情報交換システム(IODE)の日本代表機関である日本海洋データセンター(JODC)を運営しています。JODCは、国内の海洋調査機関による調査で得られた貴重な海洋データを一元的に収集・管理し、国内外へ提供する総合的な海洋データバンクとして活動しています。
なお、JODCでは、水温や海流等の海洋データ、海洋調査計画等の海洋情報をインターネットにより提供するシステム(J-DOSS)も運用しています。 http://www.jodc.go.jp/index_j.html
(1)海図等の刊行
海上保安庁では引き続き、海洋調査により得られた最新のデータ等に基づき、海図等水路図誌の維持・更新を実施するとともに、ENCの提供海域の拡大を進めていきます。
また、引き続き日本付近の英語表記のみの海図を国内外で販売し、これら海図の外国人船員への普及に努めていきます。
(2)海洋に関する情報の一元的な管理
水温、塩分、潮汐、海流等の海洋に関する情報については、各機関がそれぞれの役割に応じて様々な調査を行い、得られた情報を蓄積しています。しかし、情報の利用者にとっては、どのような情報がどこにあるのか探す手間がかかるため、情報が十分に利用されていない場合があります。
海上保安庁では、各関係機関の協力を得て、各機関が保有する海洋情報が適切に利用されるよう、内閣官房の総合調整の下、JODC等の海上保安庁の既存の取組みを最大限活用し、海洋情報の所在を一元的に収集・管理・提供するクリアリングハウスを構築します。
(3)海洋情報の提供
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▲海の相談室 |
船舶が安全な航行を行うための情報や海図、水路書誌の内容を最新に維持するための情報を水路通報等により提供していきます。
また、マリンレジャー愛好者や海洋に関する研究者のみならず広く一般の方々に海洋情報を提供するため、海の相談室を設置しています。海の相談室では、JODCが保有する水温や海流・潮流等海洋の基礎的データ、海図や水路誌等の各種文献・図面等の閲覧のほか、マリンレジャーに必要な情報等を紹介しています。
海上保安庁ホームページにおいても、船舶等への航海情報はもちろん、海洋速報、潮汐情報、日出没・月出没等のマリンレジャーを安全に楽しむために役立つ様々な
情報を提供していきます。
南硫黄島での調査
南硫黄島は、我が国の領海、排他的経済水域の範囲及び米国との中間線等を決める重要な島です。平成20年5月、海上保安庁は同島の位置・形状を正確に把握するため、調査を実施しました。今回の調査成果は今後、米国と中間線を決める際の協議にも活用されることとなります。
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▲調査結果に基づく海図の補正 |
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▲南硫黄島近傍の三星岩 |
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▲観測地点へ向かう海上保安官 |
国際的な電子海図の整備普及の促進のための戦略会議を開催
海上保安制度創設60周年を記念し、平成20年9月1日〜5日までの間、世界の航海用電子海図の整備普及の促進のため、国際水路機関(IHO)と連携し「国際水路機関戦略計画作業部会」、「第11回世界電子海図データベース委員会」及び「第4回電子海図表示システム関係者フォーラム」を東京で開催しました。この結果、電子海図作製ルールの改正に合意、未整備海域について各国が協調して航海用電子海図の作製を促進することとなりました。