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1. 海洋調査
平成20年には、最新の海洋データを収集するため、測量船による利尻水道(北海道)の沿岸測量等を実施したほか、対馬西岸や見島(山口県)においては航空機による航空レーザー測深を実施しました。
平成20年6月には、昭和58年度以来水路測量の一環として実施してきた大陸棚の限界画定のための調査をすべて完了しました。さらに、平成20年11月には、内閣官房の総合調整の下、我が国の大陸棚の限界に関する情報を、国連の「大陸棚の限界に関する委員会」に提出しました。
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▲航空レーザー測深による見島(山口県)の調査結果 |
(1)海洋権益保全のための調査
平成19年4月に成立した「海洋基本法」に基づき、平成20年3月に「海洋基本計画」が閣議決定されました。「海洋基本計画」では、海洋調査の着実な実施や海洋管理に必要な基礎情報の収集・整備等の重要性について記述されています。
しかしながら、我が国の領海・排他的経済水域には、十分な調査がなされていないために基礎的なデータが不
足している海域があります。海上保安庁では、これらの海域における海底地形、地殻構造、領海基線等の調査を重点的に推進し、その調査データを活用し我が国の海洋権益の保全が的確に図られるように取り組みます。
大陸棚の限界画定については、引き続き内閣官房の総合調整の下、関係省庁と連携し、日本の大陸棚の限界が適切に画定されるよう「大陸棚の限界に関する委員会」の審査に対応していきます。
(2)航海の安全のための調査
海上保安庁では、航海の安全のため、測量船に搭載したマルチビーム音響測深機や航空機に搭載したレーザー測深機による広範囲な水深データの収集体制を構築していきます。海難や災害発生時には、測量船等により海底の状況を調査し、沈没船や港湾施設の損壊等による航路障害物がないか調査を実施するなど、海上交通の安全確保に貢献していきます。
また、巡視船・測量船の海流観測等により収集した海象データを基に、漂流予測を実施しています。海難等による行方不明者の捜索や流出した油の防除等海上における人命救助や財産の保護のため、今後も漂流予測の精度の向上に努めます。
さらに、我が国の南極観測事業において、潮汐、海流、水深などを担当し調査を行ってきました。南極観測船新「しらせ」(平成21年5月就役予定)に新型のマルチビーム測深機が搭載され、詳細な海底地形調査が可能となったことから、今後昭和基地周辺海域において海洋測量等を実施し、詳細な海底地形図の整備を行っていきます。南極大陸周辺の海底地形は、航行する船舶の安全確保に必要であるばかりでなく、大陸・海洋地殻の進化過程の解明の基礎資料として地球科学にも貢献するものです。
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▲海底地形調査(観測機器の投入) |
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▲観測機器の回収 |
(3)地球環境保全のための調査
地球温暖化をはじめとする各種の環境問題には、海洋の状況が大きな影響を与えると考えられています。海上保安庁は、地球環境問題のメカニズム解明のために太平洋沿岸諸国が実施している西太平洋海域共同調査(WESTPAC)に20年以上にわたって参画し地球環境の保全に貢献しています。今後も、調査結果を広くインターネットで公開し、環境保全に役立てていきます。
7300年前の大噴火の傷跡が明らかに
〜「鬼界カルデラ」火山調査速報〜
平成17年度から平成20年度にかけて、九州南方にある「鬼界カルデラ」周辺において、海底地形等の調査を実施しました。
本調査では、7300年前に大噴火をおこし、現在海底に沈む「鬼界カルデラ」の詳細かつ特徴的な地形を捉えたほか、地磁気、重力調査により、同カルデラ付近の精密な地磁気・重力の分布を把握することができました。
今後、調査成果のさらなる解析・検討によって、噴火の様子やカルデラ形成の歴史、内部構造が解明されることが期待されます。
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▲鬼界カルデラの位置 |