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災害に備える
2. 自然災害対策
目標 Target
地震や津波、台風といった自然災害は時として私たちの生活に甚大な被害をもたらします。海上保安庁では、日頃からの備えを万全なものとし、自然災害発生時には迅速かつ的確な応急対策を実施し、被害を最小限に抑えることを目標としています。
平成19年の現況
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▲給水作業中の巡視船「だいせん」 |
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▲福徳岡ノ場の火山活動 |
海上保安庁では、地方自治体等との連携強化を図るため、東海地震や首都直下地震等の発生に備えた合同訓練を169回実施しました。
平成19年7月16日に発生した「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」においては、灯台や岸壁の破損など船舶交通への影響もあることから、強い揺れが観測された地域に対し 航行警報により地震発生にかかる注意喚起を行いました。また、沿岸部における被害状況調査を実施するとともに、巡視船による給水作業や航空機による急患輸送等の救援活動を実施しました。さらに、この地震による海底の変化を調査するため、測量船「天洋」による震源域周辺の海底地形調査を実施しました。 このほか、日本周辺海域に存在する海域火山において、測量船による海底地形調査等を実施したほか、平成19年4月に、南硫黄島付近の福徳岡ノ場で火山活動が活発化した際には、航空機による監視を実施するとともに、観測された変色水の情報を 航行警報により船舶等へ情報提供を行いま
した。
また、巨大地震の発生が予想されるプレートの境界域においては、測量船による 海底地殻変動観測を実施し、これまでの観測結果により、相模湾では北西に年約4cm、東海沖では西北西に年約3cmの速さで海底が移動していることがわかりました。我が国は4つのプレートが複雑に接する場所に位置しており、プレート同士の押し合いで発生した地殻の歪みが限度を超えると巨大地震がプレートの境界で発生すると考えられています。海上保安庁では、これらの観測結果を政府の 地震調査研究推進本部等に報告することにより、プレート境界地震の発生予測に貢献しています。
今後の取組み
(1) 機動性の高い救助体制の構築
海上保安庁では、機動性の高い救助体制を構築し、自然災害における人的被害の軽減を図るため、 機動救難士の航空基地への配置を引き続き拡充します。また、机上訓練、実働訓練等を通じ、自然災害対応における関係機関との連携を強化します。
(2) 地震の予測精度向上のための調査
海上保安庁では、安定した観測精度で海底の地形・地質に関する調査やプレート境界域における 海底地殻変動観測を実施します。得られた情報は、 地震調査研究推進本部等へ報告し、地震の予測精度向上に役立てていくとともに、津波防災情報への活用や各種防災図の作成のために活用していきます。
(3) 港内における津波対策
地震が発生し大きな津波の来襲が想定される場合、港内在舶船への甚大な被害の発生が懸念されます。津波は港ごとに地震発生から来襲までの時間が様々であり、津波の規模や船舶への影響等も港の形態、利用状況等によって異なります。このため、主要な港を中心に「船舶津波対策協議会」を設立し、海上保安庁が収集・整理した津波防災に関するデータを活用しながら必要な対策の充実を図ります。また、津波の発生が予想される場合には、 航行警報を発出し速やかに航行船舶等に注意を促していきます。
(4) 防災情報の整備 離島や沿岸域において、地震・津波等自然災害後の住民避難や支援物資の搬入等を迅速に行うため、海底地形等の自然情報に加え、防災機関、医療機関、ヘリポートとして使用できる場所の位置や地域の人口等の社会情報等を収集し、これらの情報を記載した「沿岸防災情報図」として整備して地方自治体等の防災関係機関へ提供していきます。これらを通じて関係機関等との連携を強化するとともに、防災対策を推進するうえでの基礎情報の整備を進めていきます。
(5) 海域火山の監視
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▲無人測量船「じんべい」 |
日本周辺には、多くの火山島及び海底火山があります。海上保安庁では、現在も活動している31か所の海域火山について火山付近の地質構造やマグマの位置を把握するため測量船による海底地形、地質構造、海上重力等の調査や航空機による火山の活動状況の監視、磁気調査を引き続き行っていきます。また、船舶による調査は海底火山の爆発に巻き込まれる恐れがあり大変な危険を伴うことから、無人で調査を行える測量船「じんべい」や特殊搭載艇「マンボウU」を活用した調査を実施していきます。これらの監視や調査で収集したデータは航行船舶に提供されるほか、防災対策の基礎資料として活用していきます。
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