海上保安レポート 2008

●はじめに


特集1 海上保安庁 激動の10年

特集2 海洋基本法を見据えた海上保安庁の取組み〜新たな海洋立国の実現に向けて〜

1.体制を充実させて

2.海洋調査により海を拓く

2.大規模海難ゼロに向けて

特集3 海上保安庁のあゆみ


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

1. 海難救助
2. マリンレジャーの安全推進

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


目指すは海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 生命を救う > 2. マリンレジャーの安全推進
生命を救う
2. マリンレジャーの安全推進
目標 Target
 海上保安庁では、国民の皆さんがマリンレジャーを安全に楽しめるようマリンレジャー活動に伴う死者・行方不明者数の減少を目標に設定し、これを達成するための取組みを進めています。
平成19年の現況
 平成19年のマリンレジャー活動に伴う海浜事故者数は921人で、自力又は救助機関等により救助されたのは595人(うち、救助機関等によるもの499人)であり、このうち50名を海上保安庁が救助しました。
 海上保安庁では、安全意識と自己責任意識の高揚を目指し「海で安全に楽しく遊ぶために〜大切な命を自分で守る〜」をテーマとして、マリンレジャー活動が特に活発となる期間について、ゴールデンウィーク安全推進旬間(4月27日〜5月6日)及び夏季安全推進期間(7月14日〜9月2日)を設け、全国で小型船舶乗船者や釣り人等マリンレジャー愛好者に対する現場指導、マスメディアを通じて「自己救命策3つの基本」の遵守を広く呼びかけるなど、マリンレジャー事故の未然防止及び死者・行方不明者数の減少に努めました。
 平成19年9月30日には、広島県江田島沖において、小型ヨットが転覆し船長と子ども5名の全員が海に投げ出され、その内ライフジャケット非着用の5歳と9歳の女児2名が死亡する痛ましい事故が発生しています。過去5年間に発生した15歳以下のプレジャーボートや岸壁等からの海中転落者は48名(うち、死亡11名)、事故者のライフジャケット着用率は8%と極めて低い状況です。このため、今回の事故を受け、改めてマリンレジャー関係団体に対し児童等へのライフジャケット着用の徹底について協力を要請しました。
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ライフガードレディース(LGL)の誕生
LGLによる声かけ運動
▲LGLによる声かけ運動
  石巻海上保安署(宮城県)では、夫を助け子供や家族を守る妻の助言は、漁に出る夫へのライフジャケット着用推進に何よりも効果的であるとの考えのもと、宮城県漁業協同組合雄勝町東部支所へ協力を依頼し、平成18年9月、女性部役員3名が全国初の女性による「ライフジャケット着用推進員」の指名を受け、「ライフガードレディース(LGL)」が誕生しました。
 LGLは、家族への助言、漁港等の巡回による漁業者や釣り人への声かけ運動等によりライフジャケット常時着用を呼びかけ、地域一丸となって安全意識を高める活動を行っています。この結果、平成19年3月末に雄勝町東部支所所属の漁業者に対して実施したライフジャケット着用に関するアンケート調査では、当初2割程度に過ぎなかった着用率が82%までに向上しました。
 これまでに石巻海上保安署に加え、気仙沼海上保安署及び宮城海上保安部(ともに宮城県)管内で44名に対しLGLの委嘱を行っています。
 海上保安庁では、LGLの全国展開を図るべく、全国漁協女性部連絡協議会に対して協力を依頼しており、このような取組みが全国に広がり、死者・行方不明者の減少に結びついていくことを期待しています。

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自己救命策3つの基本の推進
自己救命リーフレット
▲自己救命リーフレット
 平成12年7月兵庫県明石海峡沖でプレジャーボートから海中転落した6歳児を助けようと両親が相次いで海に飛び込み、6歳児は行方不明、両親は共に死亡した痛ましい事故を契機に、平成12年度から「自己救命策3つの基本」を浸透させるための「自己救命策確保キャンペーン」を展開しています。
「自己救命策3つの基本」を実践中
▲「自己救命策3つの基本」を実践中

今後の取組み
ライフジャケット着用推進モデル漁協認証式
▲ライフジャケット着用推進モデル漁協認証式
自己救命策確保キャンペーン
▲自己救命策確保キャンペーン
海上安全講習会
▲海上安全講習会
小型船舶に対する安全指導
▲小型船舶に対する安全指導
(1) 自己救命策確保キャンペーンの推進
 海上保安庁では、マリンレジャー愛好者が海で楽しく遊ぶために、引き続き「自己救命策3つの基本」が大切であることをポスターやパンフレット等の配布、そして新聞、テレビ、ラジオ等を通じて広く周知啓発活動を実施するなど、「自己救命策確保キャンペーン」を積極的に展開していきます。
 また、ボート天国をはじめとしたマリンレジャーの安全に関するイベントに積極的に協力し、マリンレジャーに伴う事故防止を呼びかけ、安全意識や技術・マナーの向上を目指すとともに、ライフジャケットの着用推進の地域拠点となる「ライフジャケット着用推進モデルマリーナ・漁協」の指定を全国的に広げ、安全で楽しいマリンレジャーを満喫できるよう効果的な安全推進活動を実施していきます。
(2) 民間関係機関との連携
 マリンレジャーに伴う事故防止活動は、官民一体で広く実施することが効果的であることから、プレジャーボートの運航者に対する海上安全活動を行う海上安全指導員の支援のほか、海上安全講習会や安全パトロール活動等地域に密着した安全活動を展開している小型船安全協会との連携を進めていきます。
 また、沿岸部で発生する海難に対し迅速かつ的確に救助活動を遂行するためには、民間救助勢力を育成し、沿岸部に空白のない救助拠点を整備することも重要であることから、(社)日本水難救済会及び(財)日本海洋レジャー安全・振興協会の活動を積極的に支援していきます。
(3) プレジャーボートに対する安全指導等
 近年、船舶安全法に基づく小型船舶の定期・中間検査を適切に受検していない小型船舶が多数存在する状況にあり、これらの中には使用されている船舶も相当数あると考えられます。このため、小型船舶に対する積極的指導・取締りを実施し、海事関係法令の遵守を徹底させるとともに、船体・機関の整備不良等による事故の未然防止に努めていきます。
 また、小型船舶操縦者が遵守すべき事項である「危険操縦及び酒酔い操縦の禁止」、「ライフジャケットの着用」、「狭い水路通過時や水上オートバイ乗船時などにおける有資格者による自己操縦の義務付け」等に関しても徹底した指導等を行っていきます。
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海上保安業務システムの整備
 海難救助をはじめとする海上保安業務の遂行においては、船舶動静が最も重要かつ基本的な情報となります。
 海上保安業務システムは、携帯電話からの118番通報発信位置情報やAIS(船舶自動識別装置)による船舶動静情報等を一元的に管理するとともに、それらを海上保安庁が保有する各種の情報と横断的に照合するための画期的なシステムです。
 平成20年3月に本システムが導入されたことで、我が国周辺海域を航行する船舶の動静を継続的に把握することによって遭難船舶等の位置を早期に特定することが可能となり、海上保安部署等では、より迅速かつ的確な初動対応をとることができるようになりました。
 これにより、海難救助率の向上による死者・行方不明者数の減少等、海上保安業務の効率性・機動性の向上を図ります。
■海上保安業務システムの概要
海上保安業務システムの概要