|
本編 > 災害に備える > 2 自然災害対策
2 自然災害対策
海上保安庁では、地震、津波等の自然災害発生時における人命・財産等の被害を最小限に抑えることを目標としています。このため、自然災害発生時に迅速・的確な応急対策を実施する体制の確立と自然災害に関する精度の高い事前情報の提供を目指しています。
平成17年は3月に福岡県西方沖、8月には宮城県沖を震源とする震度6弱の地震が発生し、海上保安庁では、巡視船艇・航空機による被害状況調査などの災害応急対策を実施しました。福岡県西方沖を震源とする地震に際しては、地方自治体からの要請により、玄界島から自主避難する住民62名を巡視船艇により博多港まで搬送しました。また、宮城県沖の地震の前後、海底地殻変動観測によって震源近傍の海底基準点を観測・解析した結果、地震によって海底が東北東に約10cm移動していることが判明しました。
このほか、首都直下地震、東海地震等に備え合同訓練を実施するなど、関係機関等との連携の強化を図りました。 ●主な防災訓練(平成17年) ▲関係機関との合同訓練 ●宮城県沖の地震の前後の海底地殻変動観測による解析結果 (1)機動性の高い救助体制の構築
海上保安庁では、特に人的被害の軽減を図るため、機動性の高い救助体制を構築する必要があることから、機動救難士の航空基地への配置を拡充します。また、机上訓練、実働訓練等を通じ、自然災害対応における関係機関の連携を強化します。 (2)地震の予測精度向上のための調査 我が国は、4つのプレートが複雑に接する場所に位置しています。これらのプレート同士の押し合いで地殻の歪みが発生し、歪みが限度を超えると巨大地震がプレートの境界で発生すると考えられています。そこで、巨大地震の発生の予測には高い精度の地殻の歪みの観測が必要になります。また、プレート境界では、多くの海底断層等によって形成される特徴的な地形が見られます。このような地形や表層構造を詳細に明らかにすることによっても、巨大地震の発生予測に関する重要な基礎資料を得ることができます。 海上保安庁では、安定した観測精度で海底の地殻の歪みや海底の地形・地質を把握するために、技術の向上を図り、引き続き調査・観測を行い、得られた情報を地震発生の予測精度向上のため政府の地震調査研究推進本部等の防災関係機関へ提供するほか、津波防災情報への活用や、各種防災図の作成のために活用していきます。 ●海底地殻変動観測概要 (3)防災情報の整備 住民の避難及び支援物資の搬入等のため、海底地形等の自然情報、防災機関、医療機関、ヘリポートとして使用できる場所等の位置や地域の人口等の社会情報などを記載した沿岸防災情報図を整備し、地方自治体等の防災関係機関に提供していきます。 ●沿岸防災情報図 (4)海底火山の監視 日本周辺には、多くの火山島及び海底火山があります。海上保安庁では、それらのうち活動している31カ所の海域火山の監視を航空機によって行っています。また、火山付近の地殻構造やマグマの位置を把握するため、測量船による海底地形、地質構造の調査を実施し、海域火山基礎情報図の整備を行っていきます。これらのデータは航行船舶の安全情報として活用されるほか、防災対策の基礎資料として活用されます。 ●海域火山基礎情報図
(5)港内における津波対策 津波が発生した場合には、特に港内の船舶に甚大な被害が発生することが懸念されています。港ごとに地震発生から津波の来襲までの時間は様々であり、津波の規模や船舶への影響等も、港の形態、利用状況等によって異なります。このため、港ごとに船舶津波対策協議会を設立し、海上保安庁が作成した津波防災情報を活用しながら必要な対策を策定していきます。 ●津波防災情報図参考例(進入図) (6)地震及び津波に関する航行警報提供体制の強化 気象庁から配信される地震・津波情報の取り込みから、航行警報(詳しくは、「本編 - 航海を支える - 船舶交通の安全を確保するための航行支援」をご覧下さい。)発信までの一連の工程を自動化し、地震・津波に関する航行警報を迅速に提供するシステムを整備していきます。 |