海上保安レポート 2006

●はじめに


■TOPICS 海上保安の一年


■特集1 国際展開する海上保安庁

■特集2 刷新図る海保の勢力


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

船舶交通の安全を確保するための航行支援

海保のサポーター


海上保安官を目指す!


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 航海を支える > 船舶交通の安全を確保するための航行支援
船舶交通の安全を確保するための航行支援

目 標
 海上保安庁では、ふくそう海域における航路を閉塞するような大規模海難を防止するという目標と、死者・行方不明者を伴う海難船舶隻数を減少させるという目標を掲げ、海難の未然防止に努めています。
平成17年の現況
伊勢湾海上交通センター
▲伊勢湾海上交通センター
航路しょう戒中の巡視艇
▲航路しょう戒中の巡視艇
 ふくそう海域では、海上交通センターと巡視船艇が連携し、航行管制と情報提供を的確に行い、また、視認性や識別性に優れた高機能航路標識などの整備を実施しました。
 さらに、海難を防止するため、各種船舶の特性を踏まえた安全指導等を実施した結果、平成17年の海難船舶隻数は、2,482隻であり、前年に比べ401隻減少しました。死者・行方不明者を伴う海難船舶隻数は76隻であり、前年と比べ8隻減少しました。
 以上の施策を実施したところ、ふくそう海域における航路を閉塞するような大規模海難は発生していません。
岩場に乗り揚げた貨物船
▲岩場に乗り揚げた貨物船

海難船舶隻数及び死者・行方不明者を伴う海難船舶隻数の推移
海難船舶隻数及び死者・行方不明者を伴う海難船舶隻数の推移
今後の取組み
 海上保安庁では、目標を達成するため、次のとおり新たな船舶交通体系の構築、航海の安全のための情報提供、海難防止思想の普及を図るための対策などを実施していきます。

(1)AISを活用した次世代型航行支援システムの構築

海上交通センターのAIS運用卓
▲海上交通センターのAIS運用卓
 平成16年7月に東京湾、平成17年7月に伊勢湾、備讃海域、関門海域において、AISを活用した次世代型航行支援システムの運用を開始しました。これにより、巨大船等が航路へ入る際に行わなければならない海上交通センターへの位置通報を省略することが可能となり、通航船舶の利便性が向上しました。また、従来のレーダーによる監視に比べ、より広い海域において、おおむね500総トン以上のAIS搭載船舶の詳細な動静を把握することができることから、より航行実態に即した合理的な航行管制や乗揚げ防止などの情報提供サービスが可能となり、海上輸送活動の安全性や効率性の向上に努めていきます。

(2)伊勢湾における船舶交通体系の検討

 伊勢湾では、平成15年の伊勢湾海上交通センター運用開始、平成17年の中山水道開発保全航路及び中部国際空港の供用開始等により、海上交通環境が変化していることから、「伊勢湾海上ハイウェイネットワーク委員会」において船舶交通の安全性と海上輸送の効率性を両立した望ましい交通体系について検討を行いました。
 その結果、安全面に関しては、1. 伊勢湾内に右側通航の新たな交通ルールを設ける、2. 三河湾向けの巨大船(全長200メートル以上)は新たに中山水道開発保全航路を経由する、また、効率面に関しては、3. 従来、航路幅が狭いため一律に規制されてきた伊良湖水道航路内での巨大船と準巨大船(全長130メートル以上200メートル未満)の行き会いについて、その一部を緩和可能とするなどの検討結果がまとまりました。今後は、その具現化に向けた作業を進め、望ましい交通体系の導入を目指します。

伊勢湾における船舶交通の安全性と海上輸送の効率性を両立した望ましい交通体系のイメージ
伊勢湾における船舶交通の安全性と海上輸送の効率性を両立した望ましい交通体系のイメージ

(3)航路標識の高機能化・高規格化及び機能維持

 航路標識の高機能化、高規格化は、航路標識の視認性、識別性等を向上するものであり、船舶交通の安全性と運航能率の向上に大きな効果があります。
 高機能化については、平成17年度までに456基の整備が完了し、順次ふくそう海域において整備を推進していきます。
 高規格化については、東京湾から順次整備を推進し、平成17年度までに134基の整備が完了しています。

航路標識の高機能化
航路標識の高機能化

航路標識の高規格化
航路標識の高規格化

(4)航海の安全のための情報提供

 海図や水路書誌の内容を最新のものに維持するための情報や船舶交通の安全に必要な情報などを掲載した水路通報や管区水路通報を、毎週一回印刷物やインターネットなどで提供しています。
 また、船舶交通の安全のために緊急に周知することが必要な情報は、衛星通信、インターネットなどによりNAVAREA(ナバリア)XI航行警報NAVTEX(ナブテックス)航行警報日本航行警報地域航行警報として提供しています。これらの航行警報は、携帯電話、ファクシミリ放送、ラジオ、漁業無線局を通じた提供も行っています。平成17年には約36,000件の情報を提供しました。
 さらに、船舶運航者のみならず、磯釣り、マリンスポーツなどのマリンレジャー愛好者の人々などに対し、各海上保安部からリアルタイムな情報を提供する沿岸域情報提供システム(MICS)を運用しています。この情報には、管内の港湾及びその周辺海域の航行危険情報、航行制約情報、気象・海象情報、その他船舶運航に必要な情報があり、テレフォンサービスのほか、パソコンやインターネットに接続可能な携帯電話端末で手軽に入手できます。

水路通報と航行警報
水路通報と航行警報

 MICSは、平成18年3月、全ての海上保安(監)部で運用しています。

MICSのインターネット画像例
▲MICSのインターネット画像例

(5)海難防止思想の普及を目指して

 海難を防止するためには、海難防止に関する意識の向上、知識・技能の習得が有効です。このため、全国各地で海難防止講習会や海上安全教室を開催するとともに、訪船指導、パンフレットの配布などを行っています。
 特に、毎年7月には、官民共同で「全国海難防止強調運動」を実施し、広く国民に対して海難防止を呼びかけています。
 また、各管区海上保安本部では、台風や霧による海難の防止など地域の特性を踏まえた「地方海難防止強調運動」を実施しています。
 さらに、近年の海難の特徴を踏まえ、関係省庁(海上保安庁、水産庁、国土交通省海事局、海難審判庁)が連携した施策を展開しているところであり、今後も各種船舶の特性に応じた海難防止対策を講じていきます。

訪船指導の様子
▲訪船指導の様子
海上安全教室の様子
▲海上安全教室の様子

(6)海上交通に関する法秩序の維持

 海難の発生に直接結びつくおそれのある悪質な法令違反については、取締りを実施し、特に小型船舶操縦者が遵守すべき事項である危険操縦及び酒酔い操縦の禁止、水上オートバイ等乗船者のライフジャケット着用、狭い水路通過時や水上オートバイ乗船時などにおける有資格者による自己操縦の義務付け等の励行の徹底に努めていきます。

海事関係法令違反の送致件数の推移
海事関係法令違反の送致件数の推移

小型船舶操縦者が遵守すべき主な事項

酒酔い操縦等の禁止 飲酒等により正常な判断ができない状態での操縦は禁止です。
免許者の自己操縦 水上オートバイは全ての水域で、ボート等は港内・航路内で、小型船舶の免許所有者以外の操縦が原則禁止です。
危険操縦の禁止 遠泳者等の付近で航走する等の危険な操縦は禁止です。
救命胴衣の着用義務 子供、水上オートバイの乗船者や小型漁船を一人で操業する方は救命胴衣等の着用が必要です。