海上保安レポート 2006

●はじめに


■TOPICS 海上保安の一年


■特集1 国際展開する海上保安庁

■特集2 刷新図る海保の勢力


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える


海保のサポーター


海上保安官を目指す!


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 青い海を護る > 1 海洋環境保全対策
1 海洋環境保全対策

目 標
 海上保安庁では、海洋環境の保全のため、海洋汚染状況の把握、汚染源の特定等による新たな汚染の防止、指導・啓発活動による汚染の未然防止、海洋環境の改善に取り組んでおり、その具体的な指標として、平成14年から18年において海洋汚染源確認率を平均85%以上とすることを目標としています。
平成17年の現況
 平成17年、海上保安庁では海上における油、廃棄物、赤潮青潮などの海洋汚染発生を360件確認しました。種類別に見れば、油による汚染が65件減少したものの依然として海洋汚染は後を絶ちません。平成16年は海洋汚染源確認率が82%であったのに対し、平成17年は90%と8ポイント向上しました。
 目には見えにくい化学物質や放射能による海洋汚染の状況を把握するため、平成17年には、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」などに基づき、44カ所の海域で海水、海底堆積物の採取・分析を実施しました。

海洋汚染の発生確認件数の推移
海洋汚染の発生確認件数の推移

 海洋環境保全のための啓発活動の一環として、6月と11月の海洋環境保全推進週間を中心に、平成17年は130回の海岸漂着ゴミ分類調査を実施しました。その結果によると、海岸に漂着するゴミは、ポリ袋やプラスチック、タバコのフィルターといった石油化学製品が多くの割合を占めています。通常、これらの石油化学製品は自然界で分解されないため、景観の問題だけでなく、海洋生態系への悪影響も懸念されています。

海洋汚染の海域別発生確認件数(平成17年)
海洋汚染の海域別発生確認件数(平成17年)
今後の取組み
 海上保安庁では、海洋環境の保全意識を高めるため、海を職場とする海事・漁業関係者に対して、不注意による油などの排出を防止するための技術的な指導、廃棄物の適正処理の指導、油等の不法排出を防止するための関係法令の周知などを行います。
 また、一般市民、特に次世代を担う子どもたちに対して、海岸漂着ゴミ分類調査、海上保安官作成の環境紙芝居の上演や水質検査実験等を行う環境教室、「未来に残そう青い海・図画コンクール」などを通じ、幼い頃から環境保全の心を持ってもらえるよう、啓発活動に取り組んでいきます。
 一方、海洋汚染の現状を正確に把握するため、閉鎖性の高い海域等において海水及び海底堆積物を採取し、石油、PCB、重金属のほか、新たな海洋汚染物質である内分泌かく乱物質等の調査を引き続き実施していきます。
 また、我が国周辺海域における放射能水準を把握するため、海水及び海底堆積物中の長寿命人工放射性物質についての調査も実施していきます。

これらの調査結果は、報告書として取りまとめインターネットによる公開を行っています。
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/OSEN/oceanenv.html

環境紙芝居の実演
▲環境紙芝居の実演
海洋汚染物質の分析
▲海洋汚染物質の分析
大都市圏の「海の再生」の推進

 東京湾などのように背後に大都市を抱え、周りが陸地に囲まれた閉鎖性の高い海域では、生活排水などが大量に流れ込む一方で、外海との海水の交換が起こりにくいため、富栄養化による慢性的な赤潮の発生や、有機汚濁による貧酸素水塊が水産動植物に大きな影響を与えるなど、多くの問題が発生しています。
 これらの問題の改善のため、海上保安庁を含む関係省庁及び自治体により、東京湾には「東京湾再生推進会議」が設置され、平成15年3月「東京湾再生のための行動計画」を取りまとめました。海上保安庁では、平成14年度から千葉灯標にモニタリングポストを設置し、平成16年からは人工衛星を活用した東京湾の赤潮等の現象を常時監視するシステムの運用を開始しました。これらのシステムにより計測されたデータは、正確な汚染メカニズムの解明に貢献することが期待されています。
 また大阪湾においても、平成16年3月に「大阪湾再生行動計画」を取りまとめ、大阪湾再生のための施策を推進しています。これらの取組みは、平成17年度から「全国海の再生プロジェクト」として展開されており、平成17年度は新たに伊勢湾と広島湾で、関係省庁、自治体等と連携した海の再生への取組みが始まっています。

全国海の再生プロジェクトの展開
全国海の再生プロジェクトの展開

図画コンクール入賞作品紹介〜未来に残そう青い海〜

 海上保安庁では、日本財団、(財)海上保安協会の協力を得て、全国の小中学生を対象とした「未来に残そう青い海・図画コンクール」を実施しています。
 第6回目となる平成17年度は、これまでで最多の31,141点の応募がありました。審査員からも「毎日の生活の中にある海をよく表現している作品が多く、明るい印象を受けました。海からもらった感動がよく伝わってきました。」との総評をいただきました。このコンクールによって小中学生の皆さんに海の環境を守る心をはぐくんでいただければと考えています。図画コンクールは平成18年度も行う予定です。詳細はお近くの海上保安部署にお尋ねください。

海上保安庁長官賞受賞作品
中学生の部 黒岩敬文さんの作品
▲中学生の部 黒岩敬文さんの作品
小学生高学年の部 本多亮平さんの作品
▲小学生高学年の部 本多亮平さんの作品
小学生低学年の部 竹藤潤也さんの作品
▲小学生低学年の部 竹藤潤也さんの作品