海上保安レポート 2021

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 現場「第一線」


海上保安官の仕事


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

7 海をつなぐ > CHAPTER III. 国際機関との協調
7 海をつなぐ
CHAPTER III. 国際機関との協調

海に関して、関係各国が連携・協調しつつ、各国が有する知識・技能を世界共通のものとしていくため、さまざまな分野の国際機関が存在します。海上保安庁では、さまざまな業務を通じて得られた知識・技能を活かし、国際社会に貢献するため、これらの国際機関の取組みに積極的に参画しています。

令和2年の現況
1 国際海事機関(IMO)での取組

IMOは、船舶の安全や船舶からの海洋汚染の防止等の海事問題に関する国際協力を促進するために設立された国連の専門機関で、現在174の国が正式加盟国、3地域が準加盟となっています。

令和2年、IMOの委員会である海上安全委員会(MSC)がオンライン形式で開催されたことから、海上保安庁職員が同委員会へ出席し、引き続き航行の安全及び船舶からの汚染の防止・規制に係る事項等の国際議論に貢献しました。

IMO事務局へこじま模型贈呈

令和3年2月23日、日頃より世界の海事業界へ多大な貢献をしているIMOへ敬意を表するとともに、我が国とIMOの友好の証として、海上保安庁よりIMO事務局に対し、海上保安大学校練習船こじまの模型を贈呈しました。

贈呈に際し、海上保安庁総務部参事官による、IMO事務局長への表敬がオンライン形式で実施されました。

表敬では、IMOでの勤務経験もある参事官からの挨拶のほか、IMO事務局長からは謝意が示されました。

IMOに展示されているこじま模型

IMOに展示されているこじま模型

IMO事務局長表敬(オンライン)の様子

IMO事務局長表敬(オンライン)の様子

2 国際水路機関(IHO)での取組

IHOは、より安全で効率的な航海の実現のため、海図などの水路図誌の国際基準策定、水路測量技術の向上や各国水路当局の活動の協調を目的とし昭和45年に設立された国際機関で、現在94か国が加盟しています。

IHOは地域的な連携の促進や課題の解決のため、世界の各地域に地域水路委員会を設置しており、我が国は東アジア水路委員会(EAHC)に昭和46年設立当時から加盟しています。海上保安庁は、50年以上に渡りシーレーン沿岸国において水路測量や海図作製技術向上に貢献しており、平成30年9月のEAHC総会においてEAHCの議長国に就任し、議長国としての役割も務め域内の技術向上や航海安全に取り組んでいます。

令和2年11月には、第2回IHO総会がオンライン会議で開催され、海上保安庁海洋情報部長をはじめとする同部職員が出席しました。会議では、IHOの運営や計画に係る重要議題について積極的に発言し、日本のプレゼンスを示すとともに、IHO活動方針の決定に多大に貢献しました。また、本会議では、国際的に確立された唯一の名称として日本海を使用してきているガイドライン「大洋と海の境界(S-23)」が、これまで同様引き続き、現行のIHO出版物として、公に利用可能とされました。また、情報化が進展した現代の事情に即し、全ての海洋の境界線を数字により、デジタル管理するともされました。

令和3年1月には、海上保安庁がEAHC議長国としてEAHCアドホック会議をオンラインで開催しました。我が国のリーダーシップの下、EAHC加盟国の活動報告が行われた他、EAHCにおける人材育成やEAHC設立50周年に向けた記念イベント等について活発な議論を交わし、東アジアにおける水路機関の連携を深めることができました。

その他、IHOとユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が共同で設置し、世界の海底地形名を標準化する「海底地形名小委員会」において、海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室長が引き続き副議長を務め、同委員会に貢献しています。

日本時間深夜に開催された第2回IHO総会

日本時間深夜に開催された第2回IHO総会

EAHCアドホック会議の様子

EAHCアドホック会議の様子

3 国際航路標識協会(IALA)での取組

IALAは、航路標識の改善、船舶交通の安全等を図ることを目的とした国際的な組織で、現在88の国・地域が加盟しています。また、そのうち24か国は理事国に選任され、国際基準等の承認手続きを行っており、日本は昭和50年から理事国に選任されています。加えて、IALAの常設技術委員会の一つであるENAV委員会議長に交通部企画課国際・技術開発室課長補佐が、平成28年から就任しています。これは航行援助分野における国際活動に対する海上保安庁の取組み及び同委員会議長としてのこれまでの実績が評価されたものです。

令和2年2月、IALAを国際機関へ移行するための外交会合が開催され、そのための条約案(設立協定)が採択されたことから、IMOIHOのような新たな国際機関が誕生することとなりました。

4 コスパス・サーサット計画での取組

コスパス・サーサット計画は、GMDSSの中核をなす人工衛星を用いた遭難通報システムを提供する国際的な枠組であり、国際協定を締結した45の国や地域等が参加しています。このシステムにより、船舶及び航空機等から発信された遭難信号は人工衛星で中継され、世界中のどこからでも救助機関に伝えられます。

海上保安庁は、平成5年から日本の代表機関として、人工衛星で中継された遭難信号の受信及び処理を行うための地上設備を整備運用するとともに、世界で6箇所指定された情報交換の拠点である業務管理センターとして、北西太平洋地域(日本、中国、香港、韓国、台湾及びベトナム)で中心的な役割を果たしています。

5 アジア海賊対策地域協力協定・情報共有センター(ReCAAP−ISC)での取組

アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)とは、我が国の主導で締結されたアジアの海賊・海上武装強盗問題に有効に対処するための地域協力を促進するための協定です。この協定に基づき、情報共有、協力体制構築のため、平成18年にシンガポールに情報共有センター(ISC)が設立されました。設立以来、海上保安庁は、このISCへ職員1名を派遣し、海賊情報の収集・分析・共有及び法執行能力向上支援を積極的に推進しており、令和元年には、ReCAAP全締約国(日本を含む20か国)とインドネシア及びマレーシアの海上保安機関職員等を対象とした法執行能力のための研修「Capacity Building Executive Programme 2019」(シンガポールで開催)、令和2年にはオンライン形式で開催された研修「Capacity Building Workshop2020」に協力するなど、アジア地域における海賊対策に係る各種取組に貢献しています。

Capacity Building Executive Programme 2019 集合写真

Capacity Building Executive Programme 2019 集合写真

6 北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)での取組

NOWPAPは国際連合の機関である国連環境計画(UNEP)提唱のもと、閉鎖水域の海洋汚染の管理及び資源の管理を目的とした地域海計画(RSP)の一つで、北西太平洋地域4か国(日本、韓国、中国及びロシア)により採択されています。海上保安庁は、この計画の中でデータ情報ネットワークに関する地域活動センター(DINRAC)、海洋環境緊急準備・対応に関する地域活動センター(MERRAC)において会合等に参加し、同地域の海洋汚染の防止及び海洋環境保全のための取組に積極的に関与・貢献しています。

NOWPAPでの取組