海上保安官は、船艇や航空機以外にも様々な活躍の場があります。
外国語(ロシア語、中国語、韓国語等)を駆使して外国人犯罪の捜査を行うスペシャリストです。通訳や翻訳を担当するだけでなく、自ら外国語による取調べや立入検査も行います。全国の海上保安官のうち、希望と適正によって、「語学研修」に選抜され、各外国語の研修を修了した者等が、「国際捜査官」として、専攻した外国語に応じた勤務先で活躍することになります。
宮古島海上保安部所属
小型巡視船 国際捜査官
根間 泰夫
私は規制能力強化型巡視船において、中国語の国際捜査官として、尖閣諸島周辺海域における領海警備や宮古島周辺海域における外国漁船の取締りに従事しています。
被疑船舶を停止させ、移乗して捜査活動を行うためには、高いレベルの移乗制圧技術と迅速な初動捜査能力が求められることから、日頃の訓練を通して、これらの向上に努めています。特に、移乗後は国際捜査官として中国語を駆使して、捜査活動を行う必要があり、語学力が業務遂行に大きく影響するため、日頃からその維持向上に努めなければなりません。
語学力の維持向上のため、業務の合間にこれを行うことは厳しいものですが、国際捜査官として業務に貢献出来ることにやりがいを感じ、日々、時間を見つけて学習するようにしています。船内において、国際捜査官としての仕事は、自分にしかできない業務であることから、誇りを持って日々の業務に当たっています。
海上保安庁は発展途上国の海上安全、海上法執行に関する実務能力向上を目指すJICA技術協力プロジェクトを実施しています。JICA専門家として派遣された職員は、約3年間にわたり相手機関と綿密な連携を取りながら発展途上国の能力向上に向けた支援を行います。
海上保安官には、大使館や国際機関などの在外機関に外交官として出向する機会があります。
出向先の例としては、ロシア・中国・韓国等の近隣の国々に加え、東南アジア諸国や欧米等もあります。
捜査の現場において、科学的知識・技能を駆使して、留置された指紋や血液をはじめとする重要な証拠の採取・分析を行います。また、不自然な死を遂げたおそれのある遺体を認めたときには、死因や身元を明らかにするための検視又は調査を行います。
秋田海上保安部
鑑識官
齋藤 智尋
私は第二管区初の女性鑑識官として勤務しています。主な業務は、犯罪現場の初動捜査として指紋やDNA等を採取して証拠保全をする鑑識活動、遺体の死因や身元等を明らかにするための検視等が挙げられます。鑑識や検視は、失敗が許されず、繊細かつ緻密で正確な作業が求められます。現場最前線の鑑識官として、証拠を見つけ出し、犯罪の見逃しを防止するのはもちろんのこと、他の職員を指揮して捜査を遂行し、事件の全容を解明します。これからも、女性ならではの観察力を磨き、自分自身の知識や技術を向上させるべく、日々の業務に邁進しています。
海上保安庁では、1956年の巡視船「宗谷」による南極観測以来、隊員を派遣してきました。現在は、南極観測船「しらせ」による南極周辺の海底地形調査や潮汐観測を行う隊員1名を夏隊に派遣しています。
なお、2009年には、南極に派遣された調理担当の海上保安官をモデルにした映画「南極料理人」も製作され、当庁も協力しました。
南極での観測作業
海洋防災調査官は、海溝型地震の評価・予測に資するため、将来の海溝型地震の発生が懸念されている南海トラフ等において海底地殻変動観測を実施しています。また、港湾を対象に津波のシミュレーションを行い、予想される津波の到達時間や波高等を「津波防災情報図」として提供しています。さらに、火山噴火による船舶の被害を防止するため、海域火山の監視観測等も行っています。
海域火山観測の様子
多様化する海上保安業務に対応するためには、国内外の関係機関との連携は極めて重要です。海上保安庁では、関係機関との人事交流を推進し、広い見識を備えた海上保安官の育成に努めるほか、さらなる関係機関との連携強化を進めています。