海上保安大学校は、将来、海上保安庁の幹部となる職員として必要な高度な学術・技能を教授し、併せて心身の練成を図ることを目的として設置された海上保安庁の教育機関です。
教育期間は本科4年、専攻科6ヵ月及び国際業務課程3ヵ月の計4年9ヵ月間です。
カリキュラムは学校教育法に基づく大学設置基準に準じており、卒業時には日本で唯一の「学士(海上保安)」の学位が授与されます。
寮生活を行い、団体生活を通して生涯の友を得、相互錬磨とリーダーシップを体得していきます。
卒業後は、初級幹部職員として、日本全国の巡視船等に配属されます。その後、本庁や管区海上保安本部、巡視船等に勤務しつつ、幹部職員として経験を積んでいくことになります。
◆学生生活
海上保安大学校は全寮制で、各学年1人ずつの4人が1部屋に入り、規律ある団体生活を送ります。学生は、この団体生活を通じて、正義仁愛の精神、リーダーシップ・チームワークの体得や気力・体力の練成を図ります。
◆一日の日程
◆カリキュラム
◆年間行事
学生の声
4学年二群 立場 愛理
小学生の頃に、ヨットクラブに所属し、幾度も海に繰り出していくうちに、海が好きになり、また海に携わる仕事に就きたいと考えるようになりました。高校在学時に進学先の大学を調べている際、卒業後、海に関する仕事に従事でき、さらに練習船に乗り世界一周を行うことができる海上保安大学校と出会いました。
入学してから訓練等もあり厳しい大学校生活であると感じましたが、週末の休みを利用して友人と買い物に行ったり、小旅行に行ったりと自分の時間を取ることができ、一週間の中でメリハリが生まれ、充実した生活を送ることができます。
現在は卒業後実施される遠洋航海を終えた後の現場赴任を見据え、幹部としての使命を自覚し当校での最後の1年を過ごしています。学生生活で磨き上げてきた、気力・体力・精神力、積み上げてきた、知識・経験・他者への思いやりなど、当校で学んできたことを胸に、先輩方のように、一人前の幹部海上保安官であると自ら誇ることができる人材となるため、残された現場赴任までの期間を大切にして、不撓不屈の精神で人一倍努力を行っていきたいと思います。
3学年三群 清水 貴允
私は、海上保安大学校に入学してから、精神面、体力面で大きく成長できたと感じています。入学前は体力面で不安がありましたが、日々の訓練をこなしていくことで、それが自信につながり大きく成長できたと感じています。特に、私は水泳が苦手なのですが、遠泳訓練において、5マイル(約9キロ)を完泳することができ大きな自信につながりました。
精神面については、入学当初は、親元から離れ、慣れない寮生活ということもあり、つらいときもありました。しかし、同期と共に励ましあい、助けあうことで乗り越えることができました。現在は3学年になり、寮生活にも慣れ、下級生を指導する立場となり、どのようにすればよい上級生になれるか日々模索しています。
当校での生活は様々な知識を得ることができるだけではなく、自らが主体性をもって考える機会が与えられ、様々な面で大きく成長できます。これからも同期と切磋琢磨し、自らを更に成長させることができるように日々精進していきたいと思います。
2学年一群 仲村 萌加
私はもともと人の役に立つ、人と関わりのある仕事がしたいと思っていました。幼いころから水泳を習っており、この特技を生かすことができる私にぴったりだと思う職業が海上保安官でした。
生活面においては、2学年になり下級生ができたことが1学年の頃と大きく変わったことで、相手がどう思うか考えながら指導し、率先垂範の実践として下級生の見本となるよう生活することの大変さを感じています。将来幹部職員となる私たちにとって、当校での下級生指導という経験は、将来現場に出た際に部下職員への指揮監督という面で活きてくると考えます。
また、1学年の際に乗船実習が行われ、自分が海上保安官となる者なのだということを自覚することができ、実習において一、二、三群全ての船での業務を経験したことで、将来自分が目指す海上保安官をより明確化することができたため、2学年後期に行われた群選択において、目標を持って選択することができました。今後の大学校生活においても同じ夢や目標を持った同期と切磋琢磨し、日々勉学や訓練に励んでいきたいと思います。
1学年 小林 大悟
私の幼い頃からの夢は、人の命を救えるようになることでした。人の命に関わる仕事は多くありますが、メディアを通じ海上保安庁は私の大好きな海を職場にしているだけでなく、人命救助の最前線で活躍していることを知り、自分もその一員に加わりたいと思い、入学を決意しました。
大学校での生活は想像していたよりも厳しいものでした。大人数での共同生活であるが故、規則が細かく定められていて、入学当初は生活に慣れることで精一杯でした。訓練も、自分がその訓練から何を得るのかを理解していないと意味のないものになるので必死についていかなければならず、苦労しています。ただ、私には毎日を共に乗り越える同期がおり、楽しいことも辛いことも共有できる仲間ほど心強いものはないと感じています。
当校はやるべき時にやって、休むべき時には休むということも求められるので、休日は自分の趣味などをして過ごすことができます。私は、自動車学校に通ったり、英語を学んだりしています。今後もメリハリのある生活を通して、充実感のある日々を過ごしていきたいと思います。
海上保安学校は、京都府舞鶴市にあり、海上保安庁の各分野における専門の職員を養成する教育機関です。
学生は採用試験時に、5つの課程のうち、いずれかを選択します。教育期間は船舶運航システム課程、航空課程及び海洋科学課程は1年間、情報システム課程及び管制課程は2年間で、全学生を対象にした海上保安官として必要な知識などを学ぶ共通科目に加え、各課程・コースごとの専門科目を学びます。
卒業後は、巡視船艇の乗組員等として、日本全国に配属されます。その後は、希望と適性に応じ、潜水士や国際取締官といった各分野のエキスパートとして進むことも可能です。また、業務経験と選抜試験により、海上保安大学校での研修を経て、幹部へ登用される道も開かれています。
◆学生生活
海上保安学校は全寮制で、同じ自習室・寝室で生活する「班」と、4〜5の班で「分隊」を編成しています。同じ部屋では先輩期学生と後輩期学生が、課程やコースに関わりなく生活しており、これら学生生活を通じて、海上保安官に必要な正義仁愛の精神、規律、責任感、協調性、気力・体力の練成が図られます。
◆一日の日程
◆カリキュラム
◆年間行事
学生の声
船舶運航システム課程主計コース 第53期 玉川 輝
小さい頃から海が好きであり、さらに人を助ける仕事に就きたいと考えていました。その中で私が小学六年生の時に起きた東日本大震災での甚大な被害の中で、救助に関っている海上保安官の姿を見て、海上保安学校への入学を決意しました。入学当初は寮での慣れない集団生活や時間に追われる生活に戸惑いましたが、同期や先輩の支えもあり、今では仲間と切磋琢磨しながた生活しています。将来は潜水士を目指しており、自分の得意である水泳を更に上達させるべく補課活動では水泳班に入り、トレーニング等で体を鍛えています。勉強面では現場で必要な技術や知識の習得のために、専門科目や調理実習、法律等の学習に取り組んでいます。休日には、観光が好きなので京都、大阪や神戸などへ足を伸ばし、充実した日々を過ごしています。海上保安学校での生活は普通の大学等とは違い、集団生活や厳しい訓練もありますが、仲間と支え合いながら乗り越えることができます。学校での一年間を無駄にすることがないよう、日々精進し、現場の最前線で活躍したいと考えています。
管制課程 第1期 小関 龍明
私は、昔から人の手助けをする仕事に就きたいと考えていて、また映画「海猿」の影響もあり、海上保安官になりたいと思い、海上保安学校の入学を決意しました。
管制官は、船舶が輻輳する海域で国を問わず様々な船に対して、安全に航行できるように無線を使い情報提供などを行います。そのため英語がとても重要になってきます。
学校では、実際の過去のデータや、無線などを使い、英語、日本語両方で通信をする授業を行っています。また、英語の授業もたくさん行っているので英語に自信がない人でも安心です。
将来は英語、日本語両方を扱い、日本人からも外国人からも信頼される管制官になりたいと思っています。
学校生活では、辛いこと楽しいこと様々なことを同期と分かち合い、先輩後輩との共同生活を通して縦と横の一生の繋がりができます。
この学校に対してたくさん不安があると思いますが、親身になってくれる教官、互いに切磋琢磨しあえる同期がいるので安心して入学してきて下さい。
航空課程 第17期 湯山 春香
私は、パイロットに憧れを抱いていました。そうしたなか、東日本大震災の経験や熊本地震でのボランティアを通して、救難に関心を持つようになりました。そして、海という特殊な環境で航空機の操縦士として働くことに魅力を感じ、また、大学で学んだ法律の知識も司法警察職員として活かせると思い、航空課程に入学しました。学校では法律や航空に関る数学・物理はもちろんのこと、端艇や制圧、けん銃など普通、経験する機会のないような訓練もあり、厳しいながらとても充実した毎日を送っています。寮生活では、出身も年齢も課程も違う仲間と共同で生活し、共に苦難を乗り越え切磋琢磨するうち、今では気の許せる家族のような存在になりました。卒業後には操縦士を目指し本格的な研修が始まり、さらなる試練が待っていますが、周囲から信頼を得られる、冷静ながらも熱い心をもった機長を目指し、日々精進していきたいと思います。
情報システム課程 第27期 中野 亜美
私は将来何になろうかと考えていた時に、テレビで特集されていた海上保安官の姿を見て、純粋にこの仕事をしてみたいと興味を持ち、海上保安学校を受験しました。
寮生活では入学当初は一日中誰かとずっと一緒に生活し、自分のしたいことを思うようにできないことがとても辛かったですが、今ではこの生活に慣れ、楽しいと思うようになりました。この生活のおかげで同期や先輩、後輩との絆がより深められるとともに、実際に現場に出たときの船内居住で必要な気遣いやルールを学ぶことができます。
海上保安学校での生活は決して楽な生活ではなく、むしろ辛く、苦しいことの方が多いと思います。ですが、他の学校ではすることのできない経験をたくさん積むことができます。そして、かけがえのない仲間とともに乗り越えることで自分自身も成長することができると思います。
海洋科学課程 第27期 梅澤 昇樹
地球表面の7割を占める海洋には重要で魅力的な多くの問題が残されています。そのため、海への理解が重要であり海洋系の大学での経験を踏まえて、将来は海を舞台に仕事がしたいと思いました。私は大学の同期で、海洋科学課程で共に学ぶ友人からの紹介がきっかけでこの課程を知りました。船舶の安全航行に不可欠な海図作成や測量船による海洋権益確保などのための海洋調査、情報提供など海に関わる様々な人に対し貢献できるとてもやりがいのある仕事であると感じています。
海上保安学校での生活では、最初は慣れない集団生活の中で同期や先輩と互いに支え合いながら、協調性や責任感などを培い自分自身を成長させることができる場所であると思います。海洋科学課程では必要な知識、技能を座学や実習で学ぶことができます。現場での仕事に直結する内容を学んでいるため、わからないことが無いよう日々集中して授業に臨んでいます。
海上保安庁では、船舶、航空機や無線通信の有資格者を対象に門司分校での採用を行っています。
門司分校では、採用された者に対して、約6ヶ月間、海上保安官として必要な知識、技能及び体力を練成するための初任者研修を行っています。また、現場の職員に対して資質と能力の向上を図るための業務研修も行っています。
◆カリキュラム
学生の声
海上保安学校門司分校 船艇職員等初任者課程 第80期 杉山 誠一郎
私は、18歳から42歳までガソリンスタンドや製造業などの様々な職種を経験してきましたが船や海に関係する仕事に携わったことはありませんでした。しかし、元海上保安官だった知人からの勧めもあり門司分校の門を叩く事を決意しました。
着校から入校式までのオリエンテーション中の訓練、基本動作や声だし等、慣れない私にとっては辛い日々の連続でした。入校して一か月が過ぎましたが日々失敗の連続です。その中で叱咤激励してくださる教官方、同期に助けられ今があります。
私たちはまだスタートラインに立ったばかりですが、もう五か月しかありません。現場で必要な知識技能の修得、体力練成、やるべき事は沢山あります。一日一日一分一秒を無駄に過ごすことは出来ません。私も含め同期の仲間も色々な壁に突き当たることがあるかと思いますが、[One for all, All for one]の言葉を合言葉に残りの日々を一致団結して切磋琢磨し合いながら全力を尽くして行こうと思います。
現場に出て「やるな!門司分校出身」と思っていただけるように日々鍛錬して行きます。
海上保安学校宮城分校は、海上保安庁の航空要員を養成するための教育機関です。海上保安学校航空課程卒業者にヘリコプターの操縦資格を取得させるほか、現場で活躍している航空機職員(飛行士、整備士、航空通信士)に、それぞれの業務に必要な資格、特殊技能(吊り上げ救助等)や航空機運航に関する安全知識を習得させています。
学生の声
宮城分校 林 健太
私は、中学生の頃に救助ヘリコプターを目の前で見学する機会があり、その日以来、人命救助に携わることのできるヘリコプターの操縦士を目指してきました。
大学を卒業後、京都府舞鶴市にある海上保安学校航空課程へ入学し、1年間、海上保安官としての基礎教育を受けました。教育内容は、犯罪捜査に必要な法律に関する授業から、遠泳訓練まで多岐にわたります。
現在は、仙台空港に隣接する宮城分校にて、最新鋭のヘリコプターに搭乗し、日々飛行訓練に臨んでいます。パイロットとして空を飛べるようになるための訓練は厳しいものです。時には、壁にぶつかり、思うように訓練が進まないこともあります。しかし、経験豊富な教官の丁寧な指導や、これまで1年間寝食を共にしてきた仲間である同期からの助言を受け、自分の弱点を克服できたときの達成感、やりがいの大きさは計り知れません。
宮城分校を無事修了した後は、全国の航空基地やヘリ搭載型巡視船に配属されることとなります。困っている方々を一人でも多く救助し、国民の皆様の期待に答えられるようなヘリコプターパイロットを目指し、これからも精進してまいります。
現在、海上保安庁ではパイロットになるための門戸は広く開かれています。人を助けることのできるパイロットに興味のある方はぜひ挑戦してみてください。
海上保安庁海洋情報部・交通部では、国家公務員総合職技術系職員を採用しています。総合職技術系職員は、政策の企画立案、技術開発・研究等の経験を積み、将来的には幹部職員として海上保安行政に携わります。
◆海洋情報部
採用当初は、海洋情報部内の海洋調査や観測技術、海洋情報の収集・管理・提供等に関する実務や研究に携わる部署に配属されます。その後は、海上保安庁内や他省庁において政策の企画・立案等の経験を積んだ後、将来的には海洋情報部の幹部として組織のマネジメントに携わります。また、他省庁への出向、国際機関や大使館での在外勤務といった幅広い活躍の場があります。
測深技術の研究成果を発表する職員
◆交通部
採用当初は、主に交通部内の海上交通に関する技術的な業務に携わります。その後、交通部以外の部署において政策の企画立案等の経験を積み、地方の管区海上保安本部等の管理職や他省庁への出向を経て、将来的には技術分野及び安全分野における幹部職員として海上保安行政に携わります。また、JICA専門家としての海外派遣や国際会議への参加など、グローバルな活躍の場があります。
国際航路標識協会総会での講演
ほとんどの海上保安官は、大学校・学校を卒業後巡視船艇に配属されます。その後は、経験をつみながら、自分の適性や希望に応じて様々な研修を受けることで、それぞれが目指す道に向けてキャリアアップを図っていきます。
◆海上保安大学校特修科
海上保安学校卒業者・門司分校修了生を対象とした将来の幹部候補生を養成する研修です。一定期間現場で仕事をした後、選抜された職員が、初級幹部として必要な素養を身につけます。
行進
◆潜水研修
海難事故が発生した場合に、転覆船舶等に取り残された方の救出や漂流者の救助等にあたる潜水士を養成する研修です。約2か月にわたる研修・訓練では、潜水業務に必要な知識・技術、転覆船を想定した救助活動等を行います。
潜水研修
◆航空整備士研修
航空機の整備を行うエキスパートを養成する研修です。海上保安学校在学中に選抜試験に合格した者等が、航空機の機種毎に必要な知識・技能を身につけます。
ケーブル調整
◆語学研修
外国人犯罪の捜査を行うためには外国語が不可欠であり現場の捜査で必要なプロフェッショナルを養成する研修です。研修修了後国際捜査官等として犯罪捜査等の業務に従事します。
語学研修
◆海上保安官の給与モデル
海上保安官の給与(諸手当を含む)は、一般職の国家公務員の給与に関する法律等の法令の定めに従い支給されています。以下に海上保安官の月収の例を紹介します。
◆海上保安官のキャリアパス
海上保安官は、船艇や陸上、警備救難業務や交通安全業務、ときには大使館での勤務など多種多様な業務を繰り返しながら、経験を積んでいきます。また、潜水士や国際捜査官などスペシャリストとしてのキャリアパスも個人の能力や適正等に応じ開かれています。以下に、海上保安大学校を卒業して幹部職員となった海上保安官(例1)と、海上保安学校を卒業後、特修科を経て幹部職員となった海上保安官(例2)海上保安学校を卒業して救助のエキスパートとなった海上保安官(例3)のキャリアパスの一例を紹介します。
◆待遇
- ●海上保安大学校、海上保安学校、海上保安学校門司分校は、入学金、授業料等は一切不要です。学生生活に必要な制服や寝具等は貸与されます。なお、教科書、食費、身の回り品等は自己負担です。
- ●入学と同時に国家公務員としての身分を与えられるため、海上保安大学校、海上保安学校では、毎月約15万円(令和元年度)の給与や期末手当、勤勉手当(いわゆるボーナス)が、海上保安学校門司分校では、入校までの職務経歴に応じた給与等が支給されます。
- ●国土交通省職員として、国土交通省共済組合員としての社会保障を受けることができます。
◆お問い合わせ先
これまで海上保安業務やそれに従事する海上保安官について紹介してきましたが、海上保安庁について興味を持っていただけたでしょうか。
もし、海上保安官になってみたいと少しでも思った方は、海上保安庁本庁の担当者又は、最寄りの管区海上保安本部までお問い合わせください。