海上保安レポート 2017

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 平和な海の継承〜海上保安庁の使命〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の 任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

7 海をつなぐ > CHAPTER III 国際機関との協調
7 海をつなぐ
CHAPTER III 国際機関との協調

海に関して、関係各国が連携・協調しつつ、各国が有する知識・技能を世界共通のものとしていくため、様々な分野の国際機関が存在します。海上保安庁では、さまざまな業務を通じて得られた知識・技能を活かし、国際社会に貢献するため、これらの国際機関の取組みに積極的に参画しています。

平成28年の現況
1 国際海事機関(IMO)での取組み

国際海事機関(IMO)は、船舶の安全や船舶からの海洋汚染の防止等の海事問題に関する国際協力を促進するために設立された国連の専門機関で、現在172の国・地域が正式加盟国、3地域が準加盟国となっています。海上保安庁では、平成28年11月に我が国初となる、伊豆大島西方における推薦航路設定に係る提案文書を提出し、平成29年3月に開催されたIMOの委員会である海上安全委員会(MSC)下部組織の航行安全・無線通信・捜索救助小委員会(NCSR)において提案が合意されました。今後、本提案は平成29年6月に開催されるMSCにおいて審議されることになります。


2 国際水路機関(IHO)での取組み

国際水路機関(IHO)は、海図などの水路図誌の最大限の統一、水路測量の手法や技術開発等を促進するため1970年に設立された国際機関(前身は1921年設立)で、平成29年4月現在87か国が加盟しています。

平成28年11月、IHO条約が、設立以来初めて改正されました。これにより、今まで5年ごとだった国際水路会議が3年ごとの総会となるなど、意思決定の迅速化や海洋活動の基礎となる海洋情報整備の促進が期待されます。

平成29年4月、条約改正後、第1回目となる総会が開催され、日本からは災害対応における水路機関の役割に関する決議の改正について提案を行い、活発な議論が行われました。

平成28年9月にはIHOとユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)の傘下にあり、世界の海底地形名を公式に定める「海底地形名小委員会」が、米国(ボルダー)で開催され、日本提案の海底地形名23件が承認されました。


3 国際航路標識協会(IALA)での取組み

国際航路標識協会(IALA)は、航路標識の改善、船舶交通の安全等を図ることを目的とする国際的な組織で、現在85の国・地域が加盟しています。平成28年12月にフランス・パリで、第63回IALA理事会が開催され、常設技術委員会の一つであるe-Navigation委員会の議長として、海上保安庁交通部企画課国際・技術開発室課長補佐の就任が決定されました。IALAの常設技術委員会における議長就任はアジア初となります。


4 コスパス・サーサット計画での取組み

コスパス・サーサット計画は、GMDSSの中核をなす人工衛星を用いた遭難通報システムを提供する国際的な枠組みであり、国際協定を締結した42の国や地域等が参加しています。このシステムにより、船舶及び航空機等から発信された遭難信号は人工衛星で中継され、世界中のどこからでも救助機関に伝えられます。

海上保安庁は、平成5年から日本の代表機関として、人工衛星で中継された遭難信号の受信及び処理を行うための地上設備を整備運用するとともに、世界で6箇所指定された情報交換の拠点である業務管理センターとして、北西太平洋地域(日・韓・中・香港・台湾・越)で中心的な役割を果たしています。

現在、遭難信号の検出時間短縮及び位置精度向上のため、システムの近代化が進められており、海上保安庁では新システムに対応した地上設備を新設するなど、コスパス・サーサット計画の発展に貢献しています。


5 アジア海賊対策地域協力協定・情報共有センター(ReCAAP−ISC)での取組み

アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)とは、我が国の主導で締結されたアジアの海賊・海上武装強盗問題に有効に対処するための地域協力を促進するための協定です。この協定に基づき、情報共有、協力体制構築のため、平成18年にシンガポールに情報共有センター(ISC)が設立されています。海上保安庁は、このISCへ職員1名を派遣し、海賊情報の収集・分析を積極的に推進し、ReCAAPによる海賊対策の取り組みに貢献しています。