海上保安レポート 2017

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 平和な海の継承〜海上保安庁の使命〜


海上保安官の仕事


海上保安庁の 任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

7 海をつなぐ > CHAPTER I 関係国との連携・協力
7 海をつなぐ
CHAPTER I 関係国との連携・協力

国際犯罪はグローバル化・ボーダーレス化し、事故・災害は大規模化する傾向にあるなか、管轄権が行使できる海域には制約があります。

海を巡る問題は、一方の国で解決することが困難なものが多く、これらの問題には、海でつながる諸外国と連携・協力して対処することが極めて重要です。海上保安庁では、諸外国との合同訓練や共同パトロール等を通じ、これら海上保安機関間の協力関係を実質的な活動に発展させるよう主導し、さまざまな分野で連携・協力を図っています。

多国間での連携・協力
1 北太平洋海上保安フォーラム
第17回北太平洋海上保安フォーラムサミット集合写真
第17回北太平洋海上保安フォーラムサミット集合写真

北太平洋海上保安フォーラムは、北太平洋地域の6か国(日本、カナダ、中国、韓国、ロシア、米国)の海上保安機関の代表が一堂に会し、北太平洋の海上の安全・セキュリティの確保、海洋環境の保全等を目的とした各国間の連携・協力について協議する多国間の枠組みであり、海上保安庁の提唱により、平成12年から開催されています。

このフォーラムの枠組みの下、参加6か国の海上保安機関は、北太平洋の公海における違法操業の取締りを目的とした漁業監視共同パトロールや、現場レベルでの連携をより実践的なものとするための多国間多目的訓練等の活動を行っています。また、今後の連携・協力の方向性やこれまでの活動の成果について議論するため、毎年、長官級会合(サミット)と、実務者による専門家会合を開催しています。

第17回北太平洋海上保安フォーラムサミット
第17回北太平洋海上保安フォーラムサミット

平成28年10月にカナダ・ビクトリアにおいて開催された第17回長官級会合(サミット)では、密輸・密航等の不法取引やセキュリティ対策に関する好事例、大規模な海難や災害発生時における対策等について情報交換を実施するとともに、北太平洋の公海における漁業監視共同パトロールの実施状況について報告があり、今後の実施計画について議論しました。

また、平成28年8月にロシア・ウラジオストクにて実施された、海上テロ対策をテーマとした多国間多目的訓練についても評価を行い、容疑船の捕捉、海難救助、通信を含む実践的技能及び共同訓練において、各機関間の協力が強化されたことが認められ、本訓練の有益性と成功が確認されました。

議論の総括として「ビクトリア宣言」が採択され、北太平洋の治安の維持と安全の確保における、参加6か国間での連携・協力の推進が確認されました。


アジアにおける主要な海上保安機関の設立
アジアにおける主要な海上保安機関の設立

2 アジア海上保安機関長官級会合
第12回アジア海上保安機関長官級会合集合写真
第12回アジア海上保安機関長官級会合集合写真
 
第12回アジア海上保安機関長官級会合
第12回アジア海上保安機関長官級会合
 
海賊対策等連携訓練
海賊対策等連携訓練

アジア海上保安機関長官級会合は、世界的にも重要な海上交通路であるマラッカ・シンガポール海峡等を抱えるアジア地域の19か国・1地域の海上保安機関の長官級が一堂に会し、海上保安業務に関する地域的な連携強化を図ることを目的とした多国間の枠組みで、海上保安庁の提唱により、平成16年から開催されています。

平成28年10月には、第12回長官級会合がインドネシアで開催され、本会合では、「捜索救助」、「海洋環境保全」、「海上不法活動の予防・取締り」及び「海上保安能力に係る人材育成」の4分野について、各リード国から取組み状況について発表されたほか、国家間の海上保安に関する連携が地域の海上安全の確保と促進に有効であることを確認し、安全で、明るく、美しい、アジアの海をいつまでも保つため、この連携を維持・発展させることを合意する共同宣言を採択しました。

また、会合参加者は、インドネシア・タンジュンプリオク港沖で実施された、日本、インド、インドネシアによる展示・連携訓練を視察しました。

二国間での連携・協力
1 韓国

海上保安庁と韓国海洋警備安全本部は、海域を接する両国間における海上の秩序の維持を図り、幅広い分野での相互理解・業務協力を推進するため、平成11年からこれまでに合計15回、日韓海上保安当局間長官級協議を開催しています。平成28年7月には韓国・仁川において第15回協議を開催し、これまでの日韓両機関の連携・協力状況を振り返り、緊密に連携していくことの重要性について確認し、中央・地方レベルにおいて、実務者同士の人的交流を推進していくことに合意しました。

また、海上保安庁と韓国国立海洋調査院との間では、海洋調査の分野での連携・協力を進めるため、平成元年から日韓水路技術会議を設置し、技術的な意見交換を行っています。平成28年8月には第26回会議が日本で開催され、韓国側から海氷観測、小型船向け電子海図の取組みについて発表があり、我が国からは津波防災に関する情報提供や離岸流の観測等、最新の取組みについて紹介しました。


第26回日韓水路技術会議
第26回日韓水路技術会議
第15回日韓海上保安当局長官級協議(仁川)
第15回日韓海上保安当局長官級協議(仁川)
2 ロシア
ハイレベル会合
ハイレベル会合

海上保安庁とロシア連邦保安庁国境警備局は、海上での密漁、密輸・密航等の不法活動の取締り等に関する相互協力について協議するため、平成12年から、原則毎年1回、日露海上警備機関長官級会合を開催しています。平成28年9月には、東京においてハイレベル会合を行いました。

3 インド

平成11年に発生した、「アロンドラ・レインボー号」(日本人船長・機関長が乗船)がマラッカ海峡で海賊に襲われた事件で、インド沿岸警備隊が海軍と連携して海賊を確保したことを契機に、海上保安庁とインド沿岸警備隊は、平成12年以降、定期的に、長官級会合や連携訓練を実施しています。

平成29年1月には、第16回長官級会合を東京で開催するとともに、横浜海上防災基地において、潜水訓練、心配蘇生法及び搬送訓練等の海難救助や海洋汚染対応訓練等の海上防災に関する連携訓練を実施しました。長官級会合の結果、両機関の更なる関係発展のため、今後とも両国間の人的交流を推進することを確認しました。また、インド周辺海域での海上安全と治安維持のためにはスリランカ、モルディブ等の海上保安能力の向上が重要であることを確認し、次回、インドで実施する連携訓練への両国の参加に向け、両機関で働きかけることに合意しました。

また、両国が積極的に牽引するアジア海上保安機関長官級会合における、更なる加盟国の連携・協力強化への取組みについて意見交換を行いました。

このほか、平成29年2月には、インド沿岸警備隊40周年記念行事に海上保安庁次長が出席し、「アジアにおける沿岸警備隊の未来」と題し、海上保安機関の連携協力の重要性について講演を行いました。

第16回日印海上保安機関長官級会合
第16回日印海上保安機関長官級会合
日印連携訓練の様子
日印連携訓練の様子
4 べトナム
覚書交換式(於:総理官邸)
覚書交換式(於:総理官邸)

平成27年9月、海上保安庁とベトナム海上警察は、海上法執行機関として、安全で開かれ安定した海を維持することが両国の繁栄に寄与するとの価値観を共有し、海上保安分野に係る人材育成、情報の共有と交換の維持等について覚書を締結しました。平成28年6月に開催された実務者会合においては、海上保安庁が策定したベトナム海上警察の教育訓練体制の整備や海上保安業務全般の能力向上に対する協力支援をまとめたマスタープランについて協議し、今後の支援の方向性について合意しました。

5 フィリピン
覚書交換式(於:マニラ)
覚書交換式(於:マニラ)

平成29年1月、海上保安庁とフィリピン沿岸警備隊は、海上保安に関する人材育成、情報交換等、協力を行う分野を明確化し、両機関の更なる協力・連携関係の強化を目的とした長官級の協力覚書を締結しました。

国際緊急援助活動について

我が国は、海外の地域、特に開発途上国にある海外の地域において、大規模な災害が発生した場合、被災国政府または国際機関の要請に応じ、救助や災害復旧等の活動を行う国際緊急援助隊(JDR)を派遣しており、海上保安庁もこれに協力しています。


海上保安庁国際緊急援助隊(JDR)派遣実績
 
救助チーム
救助チーム
 
 
油防除専門家チーム
油防除専門家チーム
活動写真
活動写真