沖縄県は、多くの有人離島を抱えていますが、これら離島の中には必ずしも十分な医療施設が整っていない島もあり、第十一管区海上保安本部では、沖縄県の要請に基づき、離島での急患や緊急医療要員・医療器材の輸送に協力しています。
急患輸送業務は、沖縄県が本土に復帰する以前の昭和47年2月、「琉球政府厚生局石垣医療航空事務所」が、海上保安庁の技術支援の下に小型ヘリコプター2機により開始したのがはじまりで、沖縄県本土復帰に伴い、第十一管区海上保安本部石垣航空基地に組織替えされました。その後、昭和48年8月に第十一管区海上保安本部長と沖縄県知事との間で、「沖縄県内における急患輸送等の救援に関する申し合わせ」が取り交わされ、現在に至っています。
この輸送は、主に石垣航空基地が担っており、同申し合わせの締結以降、累計2,712件、2,765名(うち石垣航空基地2,696件、2,749名)の急患輸送を実施しています。
与那国空港における引継ぎ状況 |
「○○島からの急患搬送要請入りました。機体準備願います。」
当直の連絡が庁舎内に響くと同時に石垣航空基地全体が離島からの急患輸送に向け動き始めます。
急患輸送に使用する機体の飛行準備、沖縄県八重山事務所等関係機関との連絡調整など、慌しく準備が進みます。そして、機体に同乗する沖縄県立八重山病院の医師が石垣航空基地に到着すると直ちに、医師を乗せた機体が飛び立ちます。
患者の待つ離島の空港又はヘリポートに機体が着陸次第、待機中の地元関係機関から迅速に患者を引き継ぎ、機体は沖縄県立八重山病院に近い旧石垣空港のヘリポートを目指します。同ヘリポートにおいて、待機している石垣市消防本部の救急車に医師と患者を引き継ぎ、我々は基地へと帰投します。当基地の日常的な光景です。
石垣航空基地は、昭和47年2月に当時の琉球政府の「石垣医療航空事務所」として発足し、昭和47年5月沖縄県の本土復帰に伴い、海上保安庁に移管され現在に至っています。
海上保安庁における急患輸送は、主に海上において海難や船上で発生した急患を対象としておりますが、石垣航空基地では、担当する宮古・石垣地域には多数の離島があり、また、これらの島には大きな病院もヘリコプターを有する陸上機関もないことから、昭和48年8月8日に第十一管区海上保安本部長と沖縄県知事との間で結ばれた申し合わせに基づき、陸上で発生した急患にも24時間体制で対応しています。以来、平成25年12月末現在まで、2,696件(2,749名)に及ぶ離島からの急患輸送を実施しており、その中には、多い時に1日で8名もの急患を搬送したことや、搬送途中の機体内での出産も3件ありました。
離島からの急患輸送は昼夜を問わず行なわれるため、日頃から離島の空港・ヘリポートでの夜間を含む離着陸訓練を実施し技量保持に努めています。また、迅速な急患輸送のためには、県立八重山病院を始めとする関係機関との密接な連携が必要とされることから、離島診療所の新任医師の赴任前研修への協力など、常日頃から連携を深めています。
これまで、基地職員の高い士気の下、急患輸送での「無事故飛行」を続けており、今後も、「しまんちゅぬ翼」として無事故で離島からの急患輸送を実施していきます。