海上保安レポート 2014

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海上保安庁の精神 正義仁愛


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

7 海をつなぐ > CHAPTER I 関係国との連携・協力
7 海をつなぐ
CHAPTER I 関係国との連携・協力

海を巡る問題には、一国で解決することが困難なものが多く、これらの問題には、海でつながる諸外国と連携・協力して対処することが極めて重要です。海上保安庁では、諸外国の海上保安機関と様々な分野での連携・協力を図っています。

多国間での連携・協力
■1 北太平洋海上保安フォーラム

北太平洋海上保安フォーラムは、北太平洋地域の6か国(日本、カナダ、中国、韓国、ロシア、米国)の海上保安機関の代表が一堂に会し、北太平洋の海上の安全・セキュリティの確保、海洋環境の保全等を目的とした各国間の連携・協力について協議する多国間の枠組みで、海上保安庁の提唱により、平成12年から開催されています。

このフォーラムは、長官級会合である「サミット」と実務者による「専門家会合」で構成されており、この取組みとして、平成25年8月には、多国間多目的訓練として、密航容疑船舶の共同追跡をテーマにした机上訓練を実施し、各国が事案発生時の情報共有について相互に理解を深めたほか、北太平洋の公海上での漁業監視共同パトロールを実施しました。

第14回サミット
第14回サミット

平成25年9月には、第14回サミットがロシア・ウラジオストクで開催され、同年の漁業監視共同パトロールの報告をするとともに、今後の活動計画を確認し、平成26年に日本で「自然災害対応及び大規模油等流出事故対応」をテーマとした訓練を実施することとしたほか、密輸・密航等の不法取引に効果的に対処するための脅威評価の作成に向けて、各国の不法取引の実態等を共有し、海上セキュリティに脅威を与える要注意船舶に関する各国の情報共有についてのガイダンスを策定しました。また、これらの議論を通じて各国の相互信頼が一層強化され、共同宣言を採択したところであり、更なる連携・協力関係を促進していくこととしています。


■2 アジア海上保安機関長官級会合

アジア海上保安機関長官級会合は、世界的にも重要な海上交通路であるマラッカ・シンガポール海峡等を抱えるアジア地域の18か国・1地域の海上保安機関の長官級が一堂に会して、アジアでの海上保安業務に関する地域的な連携強化を図ることを目的とした多国間の枠組みで、海上保安庁の提唱により、平成16年から開催されています。

第9回アジア長官級会合
第9回アジア長官級会合

平成25年10月には、第9回長官級会合がタイで開催され、前回のインドでの第8回長官級会合で合意された「捜索救助」、「海洋環境保全」、「自然災害に対する対応」、「海上不法活動の予防・取締り」やこれらの分野に対応するために必要な「人材育成」という5つの分野について、日本・フィリピン・インドネシア三国合同油防除訓練や、海上不法活動に関する地域間連携訓練などの具体的な取組みについて共有し、次回日本開催となる第10回長官級会合に向け、これら5分野の活動に引き続き積極的に取り組んでいくことに合意しました。また、今回の長官級会合では、新たにモルディブの海上保安機関が正式メンバーとして加入しました。

二国間での協力
■1 韓国との連携・協力

海上保安庁と韓国海洋警察庁は、海域を接する両国間での海上の秩序の維持を図り、幅広い分野での相互理解・業務協力を推進するため、平成11年からこれまでに計14回、日韓海上保安当局間長官級協議を開催しています。また、地方機関間では、平成25年10月に第八管区海上保安本部と韓国東海地方海洋警察庁が、同年11月に第七管区海上保安本部と韓国南海地方海洋警察庁が日韓合同捜索救助訓練等を実施し、捜索救助分野での連携・協力関係の構築を図りました。

また、平成25年11月には、韓国海洋警察庁の特殊救難団が初めて海上保安庁を訪れ、海難救助技術の向上等を目的として、羽田特殊救難基地等の施設見学や訓練視察を行うとともに、隊員等とヘリコプターと連携した救助技術や訓練手法等についての意見交換を行うなど救難技術交流を行いました。

このほか、海上保安庁と韓国国立海洋調査院との間では、海洋調査の分野での連携・協力を進めるため、平成元年から日韓水路技術会議を設置しています。平成25年10月には、第23回会議が韓国で開催され、両機関での海洋情報の管理・提供手法や最新の海洋調査技術、国際協力業務の現状等の情報交換を行いました。


日韓合同捜索救助訓練
日韓合同捜索救助訓練
第23回日韓水路技術会議
第23回日韓水路技術会議

■2 ロシアとの連携・協力

海上保安庁とロシア連邦保安庁国境警備局は、海上での密漁、密輸・密航等の不法活動の取締り等に関する相互協力について協議するため、平成12年から、原則毎年1回、日露海上警備機関長官級会合を開催しています。

平成25年7月には、第12回長官級会合がロシアで開催され、これまで、第一管区海上保安本部とサハリン州国境警備局との間での相互訪問や合同訓練が主であった地方レベルでの連携を他の地方機関に広げ、日露周辺海域での日露地方機関間の相互協力を強化するため、日露双方の計6つの地方機関による合同訓練を実施することなどに合意し、同年10月には、ロシア・ユジノサハリンスクで初の6地方機関による実務者会合と合同机上訓練を実施しました。双方の参加機関は、今後の海上犯罪防止に向けた連携について意見交換を行い、ロシアから日本への密輸事案等への効果的な連携手法について確認しました。


■3 インドとの連携・協力

平成11年に発生した「アロンドラ・レインボー号」(日本人船長・機関長が乗船)がマラッカ海峡で海賊に襲われた事件で、インド沿岸警備隊が海軍と連携して海賊を確保したことを契機に、海上保安庁とインド沿岸警備隊は、平成12年以降、定期的に、長官級会合や連携訓練を実施しています。

平成26年1月には、第13回長官級会合をデリーで開催するととともに、日印の巡視船、航空機による連携訓練をインド・コーチンで実施しました。同会合では、日印両機関が行っているソマリア海賊対策について意見交換を行い、情報共有や連携訓練を通じて、双方の海賊対処能力を一層高めていくとともに、今後、テロ対策に関する意見交換についても実施していくことに合意しました。またインド周辺国の海上法執行能力の強化を図るため、今後、日印両機関で行う連携訓練にインド周辺国をオブザーバーとして参加させるよう調整していくこと等についても合意しました。


日印連携訓練
日印連携訓練
第13回長官級会合
第13回長官級会合

■4 英国との連携・協力
◆日英両国の印章
◆日英両国の印章

海上保安庁と英国海洋情報部は、我が国周辺の海上交通の安全のため、平成18年から、日英相互協力の枠組みを構築し、外国人船員が使用しやすいように英語のみで記載された海図(デュアルバッジ海図)の刊行を行っています。

この協力枠組みにより、我が国が収集し編集した情報がいち早くデュアルバッジ海図に反映され、英国の販売網を通じて、世界各地に提供されています。デュアルバッジ海図の作製にあたっては、英国海洋情報部と常に情報交換を行い、連携して品質の向上を図っています。