海上保安レポート 2013

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 領海・EEZを守る海上保安庁


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

特集 領海・EEZを守る海上保安庁 > II 尖閣諸島周辺海域における対応 > 4.中国公船への対応
特集 領海・EEZを守る海上保安庁
II 尖閣諸島周辺海域における対応
4.中国公船への対応

平成22年9月に尖閣諸島周辺領海内で発生した中国漁船による公務執行妨害等被疑事件以降、中国公船が同諸島周辺海域をはいかいする事案が断続的に発生し、平成23年には1件、平成24年(1月から9月の尖閣三島の取得・保有前)には3件の領海侵入事案が発生しています。

また、平成24年9月に海上保安庁が尖閣三島を取得・保有して以降は、台風等により天候が悪い日以外は、常態的に中国公船が同諸島周辺海域をはいかいしており、平成24年(9月から12月)には20件、平成25年(1月から3月)には14件の領海侵入事案が発生しています。その内訳を見ると、領海侵入件数については、平成24年9月から11月までは月に最大で5件であったものが、同年12月は8件、平成25年2月には7件と急増するとともに、その領海侵入時間(1隻あたり)についても、平成24年9月から11月までは最長で約7時間30分であったものが、同年12月には約9時間以上、平成25年1月には約13時間以上、同年2月には約14時間以上と長時間化する傾向にあります。

海上保安庁では、巡視船・航空機により警戒監視を強化し、領海に侵入しないよう警告するとともに、警告にもかかわらず領海に侵入した場合には、直ちに領海から退去するよう退去要求を行うなど、適切に対応しています。

また、領海侵入した中国公船が、一時的に日本漁船に接近する状況も発生しています。海上保安庁では、中国公船の接近を防止するため、巡視船が日本漁船と中国公船の間に位置して進路規制を行うなど、日本漁船の安全確保に努めています。


中国公船を監視警戒する巡視船・航空機
▲中国公船を監視警戒する巡視船・航空機

■尖閣諸島周辺海域における中国公船の接近状況
尖閣諸島周辺海域における中国公船の接近状況

■平成25年1月7日から8日までの中国公船による
領海侵入・はいかいイメージ図
平成25年1月7日から8日までの中国公船による領海侵入・はいかいイメージ図
■平成25年2月4日の中国公船による
領海侵入・はいかいイメージ図
平成25年2月4日の中国公船による領海侵入・はいかいイメージ図
尖閣諸島周辺海域のしょう戒に従事する巡視船乗組員からの寄稿
緊迫の海・ここは国境警備の最前線
国境警備の最前線(1)
国境警備の最前線(2)

「中国公船らしき船隊の船影をレーダーにて捉えた。各員配置につけ」

放送がかかった瞬間、船内に緊張感が漲ります。私の乗船する巡視船は、直ちに現場に急行し、船隊の確認を行いつつ、指揮船として尖閣諸島周辺海域を巡視中の巡視船に対応を指示します。

「船隊を視認。船体白色、船首に“中国海監”の船名あり。中国公船に間違いなし。」更に緊張感が高まります。本船及び現場に到着した巡視船は、中国公船に並走し、追尾監視を開始します。本船内は、電話がひっきりなしに鳴り、指示や報告の声が飛び交い、騒然となります。一つのミスが大きな国際問題に発展しかねない、ここはまさに国境警備の最前線であると強く感じます。

私の任務には、中国語を用いた無線による警備広報があります。中国公船に尖閣諸島は日本固有の領土であることを伝え、日本の領海に近づかないよう警告すると、中国公船からは中国側の主張を応答してきます。そのようなやりとりをしている時に私は、ふと、今まで様々な中国人と接してきたことを思い出します。その中の多くは、気さくで友好的な人々でした。今は尖閣諸島周辺海域で両国の船が対峙していても、将来的には、友好的に発展していけるはずである、と感じます。未来に繋がり、開かれ、発展した日中関係が構築されていくことを願ってやみません。

しかし、「日本の主権を守り抜く」これは海上保安官の使命であり、胸に深く刻んでいる想いです。この想いを忘れることなく、引き続き我が国の主権を侵害する外国船舶には、毅然と緊張感をもって対応していきます。