海上保安レポート 2010

はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

CHAPTER1 海洋環境保全対策
CHAPTER2 海上環境事犯の摘発

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


04 青い海を護る > CHAPTER2 海上環境事犯の摘発
04 青い海を護る
CHAPTER2 海上環境事犯の摘発

巡視船艇・航空機等により我が国周辺海域における油、有害液体物質及び廃棄物等による海洋汚染の監視取締り等を実施するなど、海洋環境を汚染する不法行為を摘発し海洋環境の保全に努めています。

平成21年の現況
1 海上環境関係法令違反の状況

平成21年の海上環境関係法令違反に係る送致件数は739件と前年に比べ100件増加しました。法令別では、船舶からの油の不法排出、廃船の不法投棄等を取り締まる「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(以下「海防法」という。)及び船舶以外からの廃棄物の不法投棄を取り締まる「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が、海上環境関係法令違反の約8割を占めています。

違反の態様は、船舶からの油の不法排出事犯が182件と最も多く、続いて海岸等における廃棄物の不法投棄や不法焼却、廃船等の不法投棄が156件となっています。


2 投棄船舶への対応

海上保安庁が確認している投棄船舶(廃船)は965隻であり、前年に比べ90隻減少しました。このうち平成21年に処理された船舶は、全体の約46%にあたる441隻、未処理の船舶は524隻となっています。なお、廃船965隻のうち490隻に「廃船指導票」貼付による指導を行い、このうち152隻が処理されました。


3 外国船舶による海洋汚染の状況
海に流れ込む汚水
海に流れ込む汚水

平成21年に我が国周辺海域において発生した海洋汚染の確認件数514件のうち、外国船舶によるものは37件(前年比8件減)であり、全て油によるものでした。これら外国船舶の海洋汚染については、「海防法」違反として、18件を摘発し、条約の規定に則りボンド制度(担保金制度)を適用するとともに、公海等における海洋汚染4件に対して、条約の規定に則り旗国における適正処分を促す旗国通報を行いました。

今後の取組み
タイヤの不法投棄
タイヤの不法投棄

環境保全の意識が高まっているにもかかわらず、依然として処理費用の軽減や設備不良による船舶からの油等の不法排出、廃棄物・廃船の不法投棄が後を絶たず、その形態も、夜陰にまぎれた油等の不法排出や廃棄物の不法投棄、廃船にあっては船名・船舶番号等を隠匿するなど、潜在化、悪質・巧妙化が進んでいます。

このため、引き続き地方自治体・警察等関係機関、ボランティア団体や地域住民等との連携を深めていくとともに、緊急通報用電話番号「118番」通報を活用したきめ細かい情報収集体制を構築していきます。また、巡視船艇・航空機を有効活用し、夜間における海洋汚染の取締り強化にも努めていきます。

投棄された船舶
投棄された船舶
海上環境事犯と海上保安試験研究センター

海上保安試験研究センターでは、海洋汚染の原因となる水銀、鉛、クロム等の重金属やPCB等の有害物質が不法に海に排出されることのないよう全国の部署から送られてくる工場排水等を分析・鑑定し、海上環境関係法令違反の事件解明に寄与しています。

し尿を港にたれ流した事案では、研究実績のある大学の協力も得て「人のし尿成分」が含まれていることを特定し、容疑者は廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反で検挙されました。

このほか海上保安試験研究センターでは、不法に排出された油の分析・鑑定も行っており、青い海を護るため、科学の目を光らせています。

分析を行う試験研究センター職員
分析を行う試験研究センター職員