海上保安レポート 2010

はじめに


TOPICS 海上保安の一年

特集


海上保安庁の任務・体制


治安の確保

領海等を守る

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

交通の安全を守る

海を繋ぐ


目指せ!海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


03 生命を救う > CHAPTER2 マリンレジャーの安全推進
03 生命を救う
CHAPTER2 マリンレジャーの安全推進

海上保安庁では、誰もが楽しく安全なマリンレジャー活動を行えるように、マリンレジャーに伴う死者・行方不明者数の減少を目標に設定し、これを達成するための取組みを進めています。

平成21年の現況

平成21年のマリンレジャーに伴う海浜事故者数は922人で、自力又は救助機関等により救助されたのは626人(うち、救助機関等によるもの516人)でした。このうち68人を海上保安庁が救助しました。8月18日には、茨城県の鹿島海上保安署管内の3つの海水浴場で、海水浴に来ていた中学生等3名が立て続けに行方不明になる痛ましい事故も発生しました。

海上保安庁では、本格的にマリンレジャー活動が活発となるゴールデンウィークから夏季におけるマリンレジャーに伴う海浜事故の未然防止及び死者・行方不明者の減少を図るため、ゴールデンウィーク安全推進活動期間(4月29日〜5月6日)及び夏季安全推進活動期間(7月1日〜8月31日)を設定し、プレジャーボート乗船者や釣り人等マリンレジャー愛好者に対してマリンレジャー活動の安全指導を行うとともに、マスメディアを通じて広く『自己救命策確保』の周知・啓発を行いました。また、小中学校、高校が夏休みとなる7月、8月には、海浜事故が多く発生することから、若年齢層(小中学生、高校生)に対する安全指導を実施しました。

今後の取組み
1 自己救命策確保キャンペーンの推進

海での痛ましい事故を引き起こさないためにも、『(1)ライフジャケットの常時着用』、『(2)防水パック入り携帯電話等の連絡手段の確保』、『(3)海のもしもは「118番」』の「自己救命策3つの基本」を実践することが極めて大切です。

海上保安庁では、新聞、テレビ、ラジオ等の媒体その他あらゆる機会を通じて、「自己救命策3つの基本」を浸透させるため周知・啓発活動を実施するなど、引き続き「自己救命策確保キャンペーン」を積極的に展開していきます。

また、マリンレジャーの安全に関する各種イベントに積極的に協力し、周知・啓発活動を行うとともに、ライフジャケットの着用推進の地域拠点となる「ライフジャケット着用推進モデルマリーナ・漁協」の指定を全国的に広げ、安全で楽しいマリンレジャーを満喫できるよう効果的な安全推進活動を実施していきます。また、各海上保安部署にマリンレジャー行事相談室を設置し、一般市民からのマリンレジャー行事に関する問い合わせや相談に対応していきます。

2 民間関係組織との連携
海上安全指導員との合同パトロール
海上安全指導員との合同パトロール

マリンレジャーに伴う事故防止活動は、官民一体となって広く実施することが効果的です。海上保安庁では、プレジャーボートの運航者に対する海上安全活動を行う海上安全指導員の支援のほか、海上安全講習会や安全パトロール活動等地域に密着した安全活動を展開している小型船安全協会等との連携を進めていきます。

また、民間救助組織との連携体制を構築し、事故発生時には迅速な救助活動を行っていきます。


3 プレジャーボートに対する安全指導

小型船舶による、船舶安全法に基づく定期・中間検査を受検しないままの航行や、船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく小型船舶操縦免許証を持たない者の操縦は重大な海難に結びつくおそれがあります。このため、小型船舶に対する積極的な指導・取締りを実施し、海事関係法令の遵守を徹底させ船体・機関の整備不良や無資格運航等による事故の未然防止に努めていきます。

また、小型船舶操縦者が遵守すべき事項である「危険操縦及び酒酔い操縦の禁止」、「ライフジャケットの着用」、「狭い水路通過時や水上オートバイ乗船時等における有資格者による自己操縦の義務付け」等に関しても徹底した指導・啓発を行っていきます。

遠く太平洋からの救助要請

平成21年6月16日、台湾RCC*1から第三管区海上保安本部に対し『台湾漁船「Feng Ta Yu No.368」(以下「F号」という。)の船長の意識が混濁しているため救助を要請する。』旨の通報がありました。当時、F号は、日本沿岸から遥か遠くの太平洋上を航行中であり、救助に向かうヘリコプターの航続距離の関係で陸上の航空基地から直接現場に向かうことが困難な状況でした。このため、海上保安庁では、要救助者の搬送経路上にヘリコプターが着船可能な複数の巡視船を配置し、ヘリコプターがこれら巡視船を「飛び石」のように経由し、船上で燃料補給等を行いながら現場に向かいました。実際の救助では、救助要請受理後、洋上救急*2を発動し、直ちに医師、看護師が同乗した仙台航空基地のヘリコプターが出勤し、巡視船「ざおう」、「しきしま」を経由してF号上空まで進出しました。F号船長を吊り上げ救助した後は、同乗の医師らが治療を行いつつ羽田航空基地まで搬送し、待機していた救急車にF号船長を引き継ぎました。F号船長の生命に異常はなく、救助開始から約40時間、移動距離にして約1,300キロメートルの救助活動でした。

*1:Rescue Coordination Center(救助調整本部)の略。

*2:洋上傷病船員に対して、医師・看護師による救急往診を実施する制度(事業主体は日本水難救済会)。


◆遠距離を飛び石リレー輸送により対応した洋上救急
遠距離を飛び石リレー輸送により対応した洋上救急