海上保安レポート 2004

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


■特集1 海洋権益の保全とテロ対策

■特集2 海保の救難


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海をつなぐ連携


海上保安庁の業務・体制


海を仕事に選ぶ


海保の新戦力


その他


資料編


 
本編 > 航海を支える > トピック 巡回中の職員、ヒグマと遭遇!
巡回中の職員、ヒグマと遭遇!
 いまなお手付かずの原始林が生い茂り、最後の秘境と呼ばれる北海道知床半島。
 この半島の突端には、陸の孤島と化した知床岬灯台があり、紋別海上保安部(北海道)では、ヘリコプターやチャーター船を使って2ヵ月おきに巡回点検を行っています。
 平成16年7月某日、知床岬灯台の点検に船で出発した巡回班4名は、高波のため、やむなく手前の避難港で上陸し、そこから徒歩で灯台に向かうことにしました。
 知床半島は野生動物の宝庫で、巡回中にはエゾシカ、キタキツネなどが愛くるしい姿を見せてくれますが、動物園以外では見たくないヒグマも多く生息しています。
 巡回班は、腰にヒグマ撃退スプレー(主成分:唐辛子)を下げ、人間の存在を知らせる鈴を鳴らし、用心しながら約3kmのケモノ道を歩き続けました。
 灯台が間近となり、緊張感が薄らいできた時、巡回班の目に、海岸を闊歩するヒグマ(推定200kg)の姿が飛び込んできました。その距離約500m。
 ヒグマは巡回班とほぼ同時に人間の存在に気づき、威嚇して向かってきましたが、巡回班が一心不乱に振り続ける鈴の音にまいったのか?何事もなかったようにその場から立ち去っていきました。
 その後、巡回作業を終え、行きと同じく帰りも海岸の稜線に沿って歩き出した途端、先頭を歩いていた職員がこわばった面持ちで「山の斜面に熊がいる…」と声にならない声をあげました。この時のヒグマとの距離は実に約30m。
 襲われればひとたまりもない危険な距離でしたが、幸いなことに、ヒグマは巡回班の風上側にいて、まだ人間には気づいていない様子。今度は人間の方がまいりました!とばかりに、熊に悟られぬよう差し足・忍び足で一目散に逃げ出しました。
 声をあげた職員は、昨年も遠くからヒグマを目撃していますが、これほどまでの異常接近は初めてで、「貴重な体験をしたが足が震えた。」と語っていました。
 しかし、そこは船舶交通の安全確保に使命感を燃やす巡回担当の面々!これまで以上に「熊よけ防止グッズ」を整え、熊出没にもひるむことなく巡回に当たっています。

こちらを威嚇するヒグマ
▲こちらを威嚇するヒグマ

海岸を闊歩するヒグマ
▲海岸を闊歩するヒグマ