「プルルッ!プルルッ!プルルッ!」
第十管区海上保安本部運用司令センターの118番専用電話が鳴った。
「もしもし海上保安庁118番です。海の事件ですか?事故ですか?」
「・・・・・」
応答がない。第十管区海上保安本部運用司令センターがひと月に受ける118番通報(約2,000件)の99%は間違い電話や無言電話であるが、今回の電話はどうも様子が違う。直感的に「海の事件・事故ではないが、何か様子がおかしい!」と判断した司令センター運用官。対応マニュアルに従い、
「声が出せないなら、受話器を叩いて下さい」
と指示したところ「トン、トン」とかすかに反応が!
「苦しいですか?」
「救急車が必要ですか?」
「警察・消防を向かわせていいですか?」
などと問いかけを行ったところ、いずれも受話器を叩いて反応してきたため、電話所有者を検索し鹿児島県内在住の男性が所有者であることをつきとめたため、最寄の警察と消防を向かわせることを告げ、直ちに110番と119番通報を行った。その後、駆けつけた救急隊員から連絡があり、118番通報してきたのは96歳の女性で、3年前に夫に先立たれひとり住まいであったとのこと、3日前からは食事もとれず、持病の高血圧が悪化、声も出せないほどの衰弱のあまり、119番通報しようとしたが間違って118番にかけてしまったそうである。
「人命救助に陸も海も関係ない!」救助機関の素早い連携プレーで1人の命を救うことができた。