海上保安レポート 2023

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海上保安能力のさらなる強化


海上保安庁で働く「人」


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER V. テロ対策
1 治安の確保
CHAPTER V. テロ対策

世界各地において、イスラム過激派やその思想に影響を受けたとみられる者等によるテロ事件が多発しており、また、ISIL等のテロ組織が日本を含む各国をテロの標的として名指し、アジア諸国においてもISIL等によるテロが相次ぐなど、現下のテロ情勢は依然として非常に厳しい状況です。さらに、ドローンを使用したテロ等、新たなテロの脅威への対策も重要な課題となっています。

海上保安庁では、巡視船艇・航空機による監視警戒、関連情報の収集、関係機関との緊密な連携による水際等でのテロ対策に加え、海事関係者や事業者等に対して自主警備の強化を働きかけるとともに、不審事象の情報提供を依頼するなど、官民一体となったテロ対策を推進し、より一層テロの未然防止に万全を期していきます。

令和4年の現況

海上保安庁では、巡視船艇・航空機による原子力発電所や石油コンビナート等の重要インフラ施設警戒のほか、旅客ターミナル・フェリー等のいわゆるソフトターゲットにも重点を置いた警戒を実施しています。

このほか、国際テロ等を未然に防止するために、人及び物の流れの拠点である港湾においてテロ対策をはじめとする保安対策の一層の強化を図っており、令和4年においても、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染予防措置を十分にとったうえで、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」に基づき、外国からの入港船舶760隻に対して立入検査を行いましたが、テロとの関連が疑われる船舶は認められませんでした。国際港湾においては、港湾危機管理官を中心に、警察、入管、税関、港湾管理者等の関係機関や港湾関係者と緊密に連携しながら、不審事案発生時に備えた合同訓練や港湾保安設備の合同点検等、間隙のない水際対策に取り組んでいます。

原子力発電所付近の警戒

原子力発電所付近の警戒

関係機関との合同訓練

関係機関との合同訓練

立入検査の状況

立入検査の状況

港湾保安設備の合同点検

港湾保安設備の合同点検

1 新たな脅威への対応

近年、世界各国でドローンを用いたテロ事案等が発生しており、我が国においてもそのような新たなテロの脅威に対し、「重要施設の周辺地域上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」等を適切に運用して未然防止を図っているところです。海上保安庁においては、関係機関と連携して不審なドローンの飛行に関する情報を把握するとともに、ドローン対策資機材を活用するなど、複合的な対策を講じています。

2 G7広島サミット及び関係閣僚会合に向けて

G7広島サミット及び関係閣僚会合の開催を見据え、令和4年5月以降本庁、G7広島サミット開催地の周辺海域を管轄する第六管区海上保安本部、関係閣僚会合開催地の周辺海域を管轄する各管区海上保安本部に海上警備準備本部等を設置し、平素からの取組を強化するとともに、装備・資機材の増強整備や関係機関との連携訓練、海事・港湾事業者等へのリーフレットを活用した自主警備強化に係る呼びかけ等所要の準備を積み重ねています。

特に、世界中から要人が集まるG7広島サミットの会場は三方が海に面していることから、海上における警備が極めて重要であるといえます。

令和5年3月には本庁の海上警備準備本部を海上警備・警護対策本部に改組する等、警備体制に万全を期しているほか、全国の臨海部における警戒対象施設についても、徹底したテロ対策を行っています。

G7広島サミットに向けた海上警備訓練

G7広島サミットに向けた海上警備訓練

3 官民一体となったテロ対策の推進

公共交通機関や大規模集客施設といった、いわゆるソフトターゲットはテロの標的となる傾向にあり、これらは日常の身近なところで発生する可能性があるため、この対策には国民の皆様の理解と協力が不可欠です。

このため、海上保安庁では、官民が連携したテロ対策の推進に力を入れており、臨海部のソフトターゲットである旅客ターミナルやフェリー等の海事・港湾事業者等とともにテロ対策を進めています。

具体例としては、平成29年度から、官学民が参画する「海上・臨海部テロ対策協議会」を開催し、官民一体となったテロ対策について議論・検討しています。令和4年度においては、G7広島サミット等に向け、海事・港湾事業者によるテロ対策の実効性向上を目的とした「海上・臨海部テロ対策ベストプラクティス集(平成30年策定)」の改訂や海事・港湾事業者等のテロ対策に関する意識の醸成等を目的とした「テロ対策啓発用リーフレット」を作成し、海事・港湾事業者へ配布しました。

海上・臨海部テロ対策協議会の状況

海上・臨海部テロ対策協議会の状況

海上・臨海部テロ対策ベストプラクティス集(一部)

海上・臨海部テロ対策ベストプラクティス集(一部)

テロ対策啓発用リーフレット

テロ対策啓発用リーフレット

今後の取組

海上保安庁においては、今後ともテロが現実の脅威であるとの認識の下、テロの未然防止やテロ発生時の対処にかかる体制を確実に整備していくとともに、関係機関や事業者等とより緊密に連携し、官民一体となってテロ対策に取り組んでいきます。