海上保安レポート 2023

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海上保安能力のさらなる強化


海上保安庁で働く「人」


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER II. 国内密漁対策
1 治安の確保
CHAPTER II. 国内密漁対策

我が国周辺海域の豊かな水産資源は決して無尽蔵ではなく、生態系のバランスを保ち水産資源を枯渇させないために漁獲量や操業方法・区域・期間に制限をかけるなどのルールが設定されています。しかしながら、ルールに従わない一部の漁業者による違法な操業や、資金確保を目論む暴力団等による水産資源の乱獲が後を絶ちません。

海上保安庁では、密漁被害を受ける地元漁業者等からの取締り要請にも適切に対応するため、関係機関や地元自治体と連携・協力し、それぞれの地域の特性に応じた取締りを行い、漁業秩序の維持を図っています。

令和4年の現況

令和4年の国内密漁事犯の送致件数は2,548件で、前年に比べ450件増加しており、その中でも、「しらすうなぎ」や「なまこ」などを違法に採捕所持販売する事案が前年に比べ201件増加しております。

密漁は、実行部隊と買受業者が手を組んだ組織的な形態で行われるもののほか、暴力団等による組織的かつ大規模に行われる事例も見受けられ、その手口は悪質かつ巧妙です。

また、漁業者ではない海水浴客などが個人消費を目的として密漁する事例も多く見受けられます。

今後の取組

海上保安庁では、監視能力の更なる向上や採証資機材等の充実を図り、悪質・巧妙化する密漁事犯の厳格な監視・取締りを実施するとともに、引き続き、関係機関や漁業関係団体等との緊密な連携を図ることで、地域の特性に応じた未然防止策等の総合的な密漁対策を推進し、漁業秩序の維持に努めていきます。

海の白いダイヤと黒いダイヤ
しらすうなぎの集団密漁者逮捕

令和4年4月、玉野海上保安部は岡山県との合同取締りにおいて「しらすうなぎ」の密漁者5名を発見し、海上保安官等が現場に急行しました。密漁者は分散して逃走しましたが、追跡の結果、現場付近にて1名を確保し、岡山県海面漁業調整規則違反(全長等の制限)で通常逮捕しました。

その後の捜査により、逃走した他の4名を特定し、同様の容疑で通常逮捕しました。採捕された「しらすうなぎ」は124匹に及んでいます。


『白いダイヤ』しらすうなぎ

「しらすうなぎ」とは、うなぎの稚魚のことで、希少性が高く、高値で取引されていることから、「白いダイヤ」と呼ばれることもあり、令和5年12月からは、あわびやなまこと同様に、罰則等がより重い特定水産動植物の扱いとなります。


計測方法は?

バケツの中を動き回っている「しらすうなぎ」の全長と数を特定するため、岡山県水産課職員の協力を得て、麻酔を使用してしらすうなぎを仮死状態にした後、一匹一匹をまな板の上に並べて計測しました。

仮死状態にして計測している「しらすうなぎ」

仮死状態にして計測している「しらすうなぎ」

押収した証拠物

押収した証拠物



なまこの組織的密漁者を逮捕

令和4年3月、室蘭海上保安部は近隣警察署と共同捜査により、「なまこ」約351kgを不法に採捕したとして密漁者10名を現行犯逮捕しました。その後の捜査により、密漁を主導した2名、さらに、採捕した「なまこ」を取引した事実から水産加工会社代表者についても逮捕するに至り、総勢13名という密漁グループの検挙となりました。室蘭海上保安部においては、令和2年から3年連続で、なまこ密漁グループを検挙しています。


「黒いダイヤ」なまこ

乾燥させた「なまこ」は未だ活発に海外輸出され、高額かつ大量に取引されていることから、「黒いダイヤ」と呼ばれることもあり、「なまこ」の密漁が暴力団の資金源になっていることも明らかになっています。

押収した「なまこ」

押収した「なまこ」