海上保安レポート 2020

はじめに


TOPICS 海上保安庁、この1年


特集 海上保安庁新時代


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER V. 密輸・密航対策
1 治安の確保
CHAPTER V. 密輸・密航対策

近年の密輸情勢については、瀬取り(洋上における積荷の受け渡し)、コンテナ貨物を利用した密輸、クルーズ船の船員や乗客による密輸が発生しており、手口の大口・巧妙化が見受けられます。また、密航情勢については、小型船舶や貨物船を利用した数名規模の密航や、退去強制歴を有する船員の不法上陸が発生しており、小口化・巧妙化の傾向が続いています。これら密輸・密航事犯の背後に国際犯罪組織が関与するものも発生しております。

海上保安庁では、我が国の治安及び法秩序を乱すこうした密輸・密航事犯を厳格に取締り、薬物や銃器の密輸、密航者の水際阻止を図っています。

令和元年の現況
密輸事犯について

平成31年/令和元年の薬物事犯の摘発件数は、9件でした。このうち覚醒剤に関しては、令和元年6月、国内での一度の押収量としては過去最大となる約1トンの密輸入事件、12月には、約590kgの密輸入事件を摘発するなど約1647kgを押収しました。

その他薬物事犯として、8月に約177kg、10月に約400kgのコカインを関係機関と合同で外国籍船舶から発見・押収し、国内への大量の薬物流入を水際で阻止しました。

このように、海上からの密輸事犯は、小型船舶を利用した瀬取りや海上コンテナ貨物への隠匿といった手法により、一度に大量の薬物等を密輸する事犯を相次いで摘発しており、密輸手口の大口化・巧妙化が見受けられ、国際犯罪組織が関与するものも発生しています。

過去最大量の覚醒剤密輸事件を摘発!

令和元年6月2日、鳥島南西沖の日本の排他的経済水域内において、船籍不詳の船舶から被疑船舶に覚醒剤を積み替え、同月3日、静岡県賀茂郡南伊豆町の海岸に陸揚げしたため、3日から4日かけて、海上保安庁、警察、税関、麻薬取締部等の合同捜査本部は、営利目的で覚醒剤相当量を所持した疑いで、同海岸等において、中国人7名を逮捕するとともに、過去最大量となる覚醒剤約1トンを押収しました。

被疑船舶と積載されていた覚醒剤

被疑船舶と積載されていた覚醒剤

押収した覚醒剤

押収した覚醒剤

密航事犯について

平成31年/令和元年における密航事犯の摘発件数は4件であり、摘発人数については、不法入国者5名、不法入国手引者2名を摘発しました。

船舶利用による不法出入国事犯については、近年、小型船舶や貨物船を利用した数名規模の密航事犯及び退去強制歴を有する船員が不法上陸した事犯を摘発しており、小口化・巧妙化の傾向が続いています。

密航事犯の背後には、国内外に密航を斡旋する手引者が存在することが多いことから、海上保安庁では、密航者を検挙した後も関係機関と連携して捜査を継続し、事件の全容解明に努めています。

訪日クルーズ客船中国人乗客による不正上陸者を摘発

令和元年7月、福岡海上保安部は、関係機関と合同で、平成30年7月に博多港(福岡県福岡市)に入港した訪日クルーズ客船から上陸後、未帰船となった中国人乗客2名について捜査中のところ、内1名が大阪府大阪市内に潜伏していることを突き止め、捜索した結果、本件被疑者2名を発見するに至り、出入国管理及び難民認定法違反(不正上陸)で摘発しました。

不正上陸した中国人乗客が乗船していた訪日クルーズ客船

不正上陸した中国人乗客が乗船していた訪日クルーズ客船

今後の取組

海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集を行うとともに、その分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性が高い海域において、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施し、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な監視や立入検査を実施することで、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。