海上保安レポート 2020

はじめに


TOPICS 海上保安庁、この1年


特集 海上保安庁新時代


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER I. テロ対策
1 治安の確保
CHAPTER I. テロ対策

世界各地において、イスラム過激派やその思想に影響を受けたとみられる者等によるテロ事件が多発しており、また、ISIL等のテロ組織が日本を含む各国をテロの標的として名指ししているなど、現下のテロ情勢は依然として非常に厳しい状況です。さらに、新たなテロの脅威として、ドローンを使用したテロの発生も懸念されています。

海上保安庁では、巡視船艇・航空機による監視警戒、関連情報の収集、関係機関との緊密な連携による水際対策等の従来のテロ対策に加え、開催を控えた「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」を見据えた官民一体となったテロ対策を推進し、より一層テロ対策に万全を期すこととしています。

令和元年の現況

海上保安庁では、原子力発電所や石油コンビナート等の重要インフラ施設に対して、巡視船艇・航空機による警戒を行っているほか、旅客ターミナル、フェリー等のいわゆるソフトターゲットに重点を置いた警戒を実施しています。また、開催を控えた「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」を見据えたテロ対策に取り組んでいます。

このほか、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(国際船舶・港湾保安法)」に基づき、平成31年/令和元年は、外国からの入港船舶2,867隻に対して立入検査を行いましたが、テロとの関連が疑われる船舶は認められませんでした。

また、平成28年12月の「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」で決定した「海上保安体制強化に関する方針」の下、原発等テロ対処・重要事案対応体制の強化を段階的に進めていきます。

原発警戒

原発警戒

立入検査の状況

立入検査の状況

関係機関との合同訓練

関係機関との合同訓練

関係機関との港湾の点検

関係機関との港湾の点検


官民一体となったテロ対策の推進

欧米諸国等において発生しているテロは、公共交通機関や大規模集客施設といった、いわゆるソフトターゲットが標的となる傾向にあります。ソフトターゲットを対象としたテロは「いつでも、どこでも」発生する可能性があることから、旅客ターミナルやフェリー等の臨海部や海上においてもテロ対策に力を入れて取り組む必要があります。一方、海上保安庁の勢力だけでこれら全てをカバーすることは困難であるため、これらの施設の運営者等の事業者と連携し、テロの未然防止策を推進することが不可欠です。

海上保安庁では、平成29年度から、海事・港湾業界団体と関係機関が参画する「海上・臨海部テロ対策協議会」を開催し、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を念頭に、海上・臨海部における具体的な危険を想定し、官民一体となったテロ対策について議論・検討を行っています。具体的には、東京湾内で発生が想定されるテロ事案を検討のうえ、各分野の専門家による研修やそれらを踏まえた机上訓練及び旅客船を使用した官民連携テロ対応実動訓練を実施し、大会本番に向けて官民一体による連携体制の確認を行いました。

そのほか、これまでに事業者によるテロ対策の実効性向上を目的とした「海上・臨海部テロ対策ベストプラクティス集」や業界全体としてテロ対策に取り組む姿勢のアピール等を目的とした「テロ対策啓発用ポスター」を作成し、海事・港湾の事業者等へ配布しました。

テロ対策協議会で作成したベストプラクティス集(一部)

テロ対策協議会で作成したベストプラクティス集(一部)

海上・臨海部テロ対策協議会の様子

海上・臨海部テロ対策協議会の様子

官民連携テロ対応実動訓練の様子

官民連携テロ対応実動訓練の様子

今後の取組

海上保安庁においては、今後ともテロが現実の脅威であるとの認識の下、テロの未然防止やテロ発生時の対処にかかる体制を確実に整備していくとともに、関係機関や事業者等とより緊密に連携し、官民一体となってテロ対策に取り組んでいきます。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控え、海上保安庁では、平成26年に本庁及び第三管区海上保安本部に設置した大会準備本部において、海上警備体制の強化等、所要の対策を推進しています。

本大会は、選手村や競技会場等の多くが臨海部に位置するほか、いくつかの競技が海上で実施される予定であり、加えて、世界中から要人や観客等が集まることから、海上における警備が極めて重要であるといえます。

このため、海上保安庁では、平素からの取組を強化するとともに、大会期間中、全国から巡視船艇・航空機を多数集結・配備し、また、大会関連施設が多数存在する東京港内には監視カメラを多数設置するなどして、監視警戒体制を強化することとしております。

これらの体制を磐石なものとするため、本大会の数年前から、装備・資機材の増強整備、テストイベントに併せた事前検証、関係機関との連携訓練等所要の準備を積み重ねています。

また、本大会に向けて官民一体となってテロ対策を推進するため、前記した「海上・臨海部テロ対策協議会」において議論・訓練を行い、事業者によるテロ対策の実効性向上に努めています。

新型コロナウイルスの影響を受け、開催は1年延期となりましたが、来るべき本番に向け、関係省庁、大会組織委員会、海事・港湾業界団体等と緊密に連携しながら万全な体制を構築していきます。