海上保安レポート 2019

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 増大する危機に立ち向かう


目指せ! 海上保安官


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER V. 密輸・密航対策
1 治安の確保
CHAPTER V. 密輸・密航対策

近年の密輸情勢については、瀬取り(洋上における積荷の受け渡し)による密輸、コンテナ貨物を利用した密輸、訪日クルーズ船の船員や乗客による密輸が発生しており、手口の大口化・巧妙化が見受けられます。また、密航情勢については、小型船舶や貨物船を利用した数名規模の密航が発生しており、手口の小口化・巧妙化の傾向が続いています。これら密輸・密航事犯の背後に国際犯罪組織が関与するものも発生しています。

海上保安庁では、我が国の治安及び法秩序を乱すこうした密輸・密航事犯を厳格に取締り、薬物や銃器の密輸、密航者の水際阻止を図っています。

平成30年の現況
密輸事犯について

平成30年の薬物事犯の摘発件数は、15件でした。このうち覚醒剤に関しては、平成30年5月の海上コンテナ貨物に隠匿された約100kgの密輸入事件、9月の訪日クルーズ船の台湾人乗客による約14kgの密輸入事件など、9件を摘発、約310kgを押収しました。

薬物や銃器以外の密輸事犯としては、8月に訪日クルーズ船の中国人乗客らによるワシントン条約で規制された生体カメ合計8匹の密輸入未遂事件を摘発しています。

このように、海上からの密輸事犯は、海上コンテナ貨物への隠匿といった手法により、一度に大量の薬物等を密輸する事犯や、訪日クルーズ船の外国人旅客による薬物等の国内持込み事犯等、密輸手口の大口化・巧妙化が見受けられるとともに、国際犯罪組織が関与するものも発生しています。

海上保安庁初!ワシントン条約で規制された生体カメの密輸入未遂事件を摘発!

平成30年8月28日、第十一管区海上保安本部及び那覇海上保安部は、沖縄地区税関から那覇新港岸壁に着岸中の訪日クルーズ船の旅客に対する入国検査において、中国人2名の身体及び所持品のバックに隠匿された生体のカメ8匹を発見したと、通報を受けました。同日、中国人被疑者2名を関税法違反(無許可輸入未遂)で通常逮捕しました。その後の鑑定により、押収したカメはワシントン条約で規制されたミナミイシガメ等であることが判明しました。

押収したミナミイシガメ

押収したミナミイシガメ

密航事犯について

平成30年における密航事犯の摘発件数は2件であり、摘発者数については、不法入国者2名、不法出国者1名、不法出国手引者1名でした。

船舶による不法出入国事犯については、近年、密航斡旋ブローカーの関与が疑われる小型船舶や貨物船を利用した数名規模の密航事犯及び退去強制歴を有する船員が不法上陸した事犯を摘発しており、小口化・巧妙化の傾向が続いています。

密航事犯の背後には、国内外に密航を斡旋する手引者が存在することが多いことから、海上保安庁では、密航者を検挙した後も関係機関と連携して捜査を継続し、事件の全容解明に努めています。

今後の取組み

海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集を行うとともに、その分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性が高い海域において、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施し、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な監視や立入検査を実施することで、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。