◇教育機関の配置状況 |
海上保安庁の主要業務の一つである警備救難業務は、海上保安庁の創設当時、我が国として初めて行政機関がその責を担うこととなったことから、創設と同時に新たに「海上保安教習所」が設立され、職員に対して警備救難業務の遂行に必要な知識・技能に関する研修が開始されました。
その後、海上保安庁の勢力拡充の動きと相まって、新規採用職員に対する初任教育の必要性から、将来の幹部職員を養成する「海上保安大学校」、初級職員を養成する「海上保安訓練所」、海上保安訓練所を卒業した職員の専門的知識・技能の向上を目的とする「海上保安学校」の3機関による教育体制が構築されました。その後も順次改編・統合が進められ、現在は「海上保安大学校」と「海上保安学校」に加え、船舶運航等資格を有する者を対象とした「海上保安学校門司分校」と航空機運航に関する教育に特化した「海上保安学校宮城分校」により初任教育体制を構築しています。
海上保安学校での課業整列 |
海上保安庁の初任教育では、海上保安業務の遂行に必要な知識・技能の修得はもとより、心身の練成を図ることが重要です。
様々な情報が世の中に溢れ、個性が尊重される時代にあって、海上保安庁の門をたたく若者の志望動機も様々であるとともに、「海上保安庁」という組織をどう捉えるかも様々です。
しかしながら、海上保安官となる以上、海上保安庁の精神を真に理解し、体得することが求められます。
海上保安庁の教育機関では、「全寮制」による全人教育を実施しています。これは、陸地と隔離された船艇勤務時の居住環境への適応のみを考慮したものではありません。
全寮制による教育により「同じ釜の飯を喰った仲間」として、同年代の者が長期に亘る集団生活の中で、他人を敬い、助け、共に正しい道に進むべく、時には叱咤激励して自己研鑽に努める姿勢を育みます。これは、「正義」と「仁愛」を実践により体得しようとするものです。
また、海上保安官となった以上、国民の安全・安心を守るため、危険を顧みず職務を遂行しなければならない場面に遭遇することも想定し、海上保安庁では、公務員として国民へ奉仕することに加えて、「正義仁愛」の精神を体得させる決意をもって職員の養成を実施しており、これは、海上保安庁の教育機関設立以降、現在も継続しているものです。
このような精神論を基盤とする教育が多少古臭く感じられるかもしれませんが、この精神こそが海上保安庁の根幹であり、伝統であって、この考え方が初任教育でも踏襲されてます。この熱い気持ちを持った組織に少しでも興味を持った方は是非、海上保安庁の門をたたいてみてください。
授業風景(船務:航海) | 授業風景(船務:機関) | 授業風景(業務:鑑識) |
◇沿革 |
海上保安大学校(昭和27年) | 海上保安学校(昭和26年) |
海上保安大学校 | 海上保安学校 | 海上保安学校門司分校 | 海上保安学校宮城分校 |
初任教育を受けた海上保安官は、それぞれ現場に赴任し、その後約40年間に亘り海上保安業務に従事することになります。
海上保安を取り巻く情勢は日々変化し、犯罪や海上交通等に関する諸規制・制度の変化など、海上保安官が有すべき知識・技能も刻々と変化し、さらには専門的知識も多様化・高度化が進んでいます。このため、現場に赴任した後も、海上保安官は、職を辞するまで海上保安業務の遂行に必要な知識・技能の向上に努めなければなりません。
現在、初任教育以降の職員の育成は、現場教育(職場学習)、業務別・階層別の研修により構成されていますが、現場ニーズを考慮しながら適時適切に見直し等を行っています。
また、海上保安庁では、他の機関に見られるような昇進試験制度は一般職員から幹部候補への登用制度を除いて導入していません。このことは、自己研鑽意識が重要視されるため、海上保安官には、自ら学ぶ姿勢を継続し、職務遂行能力を高めなければならない責務があることを示しています。
「正義仁愛」の実践のための努力の継続は、初任教育でも示されているとおり、自己研鑽意欲がなければ達成されません。
現在、各職員の自己研鑽に対する支援として実施するものと位置付けている各種研修については、海上保安庁の業務量の増大等に伴い、その頻度を増加させることが困難な状況ではありますが、現場教育(職場学習)の一層の支援など、今後とも海上保安を取り巻く情勢の変化に対して、的確に対応し得る人材を確保するため、職員の育成に最大限の努力をしていきます。
潜水による捜索救助活動 | 海上保安試験研究センターでの分析・調査 |
船舶の交通管制 | 電磁的記録の抽出・解析 |
射撃訓練 | 潜水研修 |
航空機での研修 | 犯人制圧訓練 |