海上保安レポート 2014

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海上保安庁の精神 正義仁愛


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

CHAPTER I 海難救助
CHAPTER II 沿岸域活動における安全推進

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

2 生命を救う > CHAPTER II 沿岸域活動における安全推進
2 生命を救う
CHAPTER II 沿岸域活動における安全推進

海難の約9割は、沿岸から約20海里(約37km)未満の海域で発生しています。このため、主に沿岸域で活動する小型漁船やプレジャーボート等の船舶事故対策や、マリンレジャー中の海浜事故対策等、沿岸域における安全推進が重要な課題となっています。

海上保安庁では、沿岸域での事故を防止し、死者・行方不明者数を減少させるため、関係機関とも連携・協力しつつ、自己救命策の周知・啓発等に取り組んでいます。

平成25年の現況

海難による死者・行方不明者のうち、漁船によるものは143人、プレジャーボート等によるものは53人、マリンレジャー中の海浜事故によるものは280人でした。

また、船舶からの海中転落による死者・行方不明者161人のうち、漁船によるものは93人、プレジャーボート等によるものは35人であり、船舶からの海中転落者のライフジャケット着用率は54%でした。

海中に転落した場合、ライフジャケットの着用により、体力の消耗が抑えられ、ライフジャケットの非着用時に比べて生存の可能性が高まることから、ライフジャケットの着用の有無が海中転落時の生死を分ける大きな要因の1つとなります。また、早期の通報も迅速な救助活動につながります。

海上保安庁では、あらゆる機会を通じてテレビ、インターネットや公共の場などで、ライフジャケットの常時着用、連絡手段の確保、海難等発生時の「118番」への早期通報といった「自己救命策3つの基本」に関する周知・啓発活動を推進しています。

また、緊急通信用電話番号「118番」の導入から10周年にあたる平成22年からは、毎年1月18日を「118番の日」に制定し、同日に海上保安庁音楽隊によるコンサートや救難展示訓練を行うなど、「118番」周知活動を実施しています。


◆海中転落者のライフジャケット着用率の推移
◆海中転落者のライフジャケット着用率の推移
◆釣り中の海中転落者のライフジャケット
着用・非着用による死亡率の違い(過去5年間)
◆釣り中の海中転落者のライフジャケット着用・非着用による死亡率の違い(過去5年間)
今後の取組み
■1 自己救命策確保キャンペーンの実施

海での痛ましい事故を起こさないためには、

  1. ライフジャケットの常時着用

  2. 防水パック入り携帯電話等の連絡手段の確保

  3. 海のもしもは「118番

の「自己救命策3つの基本」が重要です。

海上保安庁では、引き続き、メディア等あらゆる手段を通じて、「自己救命策3つの基本」の周知・啓発活動を実施し、「自己救命策確保キャンペーン」を展開していきます。

特に、漁船からの海中転落者は、ライフジャケット着用率が低く、過去5年間でみるとライフジャケット非着用者の死亡率は着用者の約2倍となっていることからも、海難防止講習会等を通じて、漁業者のライフジャケット着用率の向上を図っていきます。また、ライフジャケット着用率向上を目指す「LGL(ライフガードレディース)」による漁業者への呼びかけ等の自発的な活動の支援も行っています。海上保安庁では、この活動への支援等を通じて、ライフジャケット着用の周知・啓発に努めていきます。

マリンレジャー中の事故防止については、若年層に対する海上安全教室の開催や各種イベントでの海上保安庁ブースの設置等により周知・啓発活動を行い、マリンレジャーを安全に楽しめるよう努めます。

また、各海上保安部署にマリンレジャー行事相談室を設置し、国民の皆様からのお問合せやご相談に対応していきます。


■2 プレジャーボート等に対する安全指導

海上保安庁では、プレジャーボートの運航者に対して安全航行に関する周知・啓発を行う海上安全指導員の活動支援のほか、海上安全講習会や安全パトロール活動等、地域に密着した安全活動を展開している小型船安全協会等との連携を進めていきます。

これら民間関係組織等との連携を生かしながら、事故の未然防止のため、積極的に安全指導を実施し、海事関係法令の遵守の徹底を図るとともに、小型船舶操縦者の遵守事項である

  • 危険操縦及び酒酔い操縦等の禁止
  • ライフジャケットの着用
  • 狭い水路通過時や水上オートバイ乗船時等における有資格者による自己操縦の義務付け
  • 発航前点検の実施

等についても、引き続き徹底した指導・啓発を行っていきます。


訪船指導
訪船指導
LGL(ライフガードレディース)の活動状況
LGL(ライフガードレディース)の活動状況
転覆船内からの要救助者救助
転覆船内からの救助

平成25年5月27日夕刻、淡路島の南東海域で船が転覆しているとの118番通報を受け、直ちに、関西空港海上保安航空基地から機動救難士が同乗したヘリコプターや巡視船艇等が出動しました。現場に到着した機動救難士が状況を確認後、すぐさま転覆船の船底によじ登り、船底を叩いて船内の反応を確認したところ、船内から船底を叩き返す音が聞こえてきました。


「打音反応あり!!」


直ちに機動救難士が潜水を開始し、転覆船内で発見した船長に全面マスク(要救助者用の空気マスク)を装着した後、無事船外へ救出しました。

海上保安庁の海難救助の中でも、転覆船内からの要救助者の救助は、たいへん困難を極める作業でありますが、決して失敗の許されない作業となります。今回救助活動を完遂できたのは、機動救難士の日頃からの厳しい訓練や対応にあたった海上保安官のチームワークの賜物であるといえます。


生存者の救助状況
生存者の救助状況