海上保安庁では、海洋調査により得られたデータを基に、海図等の水路図誌を刊行することにより、海上交通の安全確保のための情報を提供しています。
より多くの方々が海洋情報を積極的に活用できるよう、海上保安庁が収集する海洋情報だけでなく、国内の海洋調査機関による調査で得られた海洋情報も収集・管理し、広く一般に提供しています。
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6 海を知る
CHAPTER 2 海洋情報の提供
海上保安庁では、海洋調査により得られたデータを基に、海図等の水路図誌を刊行することにより、海上交通の安全確保のための情報を提供しています。 より多くの方々が海洋情報を積極的に活用できるよう、海上保安庁が収集する海洋情報だけでなく、国内の海洋調査機関による調査で得られた海洋情報も収集・管理し、広く一般に提供しています。 1 海上交通の安全確保のために
海洋調査により得られた最新データを基に、海図(新刊11図、改版64図)や水路誌(新刊7冊、改版14冊)等を刊行しました。電子海図表示システム(ECDIS)で利用できる航海用電子海図(ENC)については、新刊セルを17セル刊行しました。 また、港湾工事等による水深や港湾施設などの著しい変化により、海図の記載内容を変更する必要が生じた場合には、水路通報により補正図を発行し、海図の補正情報を提供しました。海難事故等が発生し、安全な航海に関わる緊急の情報を周知する必要が生じた場合には、無線等を通じて航行警報を発出し、迅速な情報提供を行いました。 このほか、日本近海の英語表記の海図について、外国人船員に対する海難防止対策及び利便性向上のため、刊行区域をさらに充実させました。同時に、これらの海図を外国船舶の入港実績の多い国内の港や、英国海洋情報部を通じて海外においても販売するなどしました。 ENCについては、国際航海に従事する一定トン数以上の船舶に対して、平成24年7月からECDISの搭載義務が順次適用されることを受け、国際標準化への対応を進めました。 さらに、日本周辺海域の海流や潮汐、潮流、水温等の観測データをインターネット等(海洋速報等)で提供しました。 2 海洋情報の利活用活性化のために
海上保安庁が運営している日本海洋データセンター(JODC)では、国内の海洋調査機関によって得られた海洋データを一元的に収集・管理し、インターネット等を通じて提供を行っています。 また、総合海洋政策本部事務局の調整のもと、平成22年3月から、国の各関係機関が保有する様々な海洋情報の所在情報を、これまでJODCが扱っていなかった種類のデータも含め、一元的に検索できる海洋情報クリアリングハウス(マリンページ)を運用しています。これにより利用者は、どの機関が、どのような海洋情報を保有し、どのような手段で提供しているのかを容易に検索することができます。
1 航海安全の確保のために
引き続き、海洋調査により得られた最新データを基にして、海図等水路図誌を刊行していきます。また、水路通報の発行や航行警報の発出も行い、航海の安全に努めていきます。 ENCの国際標準化への対応として、引き続き電子水路通報を毎週刊行しつつ、一時関係通報の情報提供や外部ファイルによる情報提供を実施していきます。 また、日本周辺海域の海流や潮汐、潮流、水温等の観測データについても提供していきます。 2 海洋情報の利活用活性化のために
平成24年度から、海洋政策支援情報ツール(海洋台帳)をインターネットで一般公開します。これにより、海上保安庁が保有する自然情報(海底地形や海流等)・社会情報(訓練区域や漁業権区域等)を1つの画面上に重ね合わせて閲覧することができます。さらに、海洋政策支援情報ツール(海洋台帳)に、国土交通省やその他政府機関が保有する各種データを追加していくなど、海洋情報の充実・更新に努めていきます。
日本の「海」について
我が国の国土面積は世界第61位にすぎませんが、我が国は四方を海に囲まれているため、領海及びEEZを合わせた面積は世界第6位で、国土面積の約12倍になります。 海洋国家である我が国は、貿易や漁業により恩恵を得る一方で、海難や密輸・密航といった海上犯罪、そして領土や海洋資源の帰属について国家間の主権主張の場となるなど、海上において様々な事案が発生しています。
「海」の区分について
● 低潮線
干満により、海面が最も低くなったときに陸地と水面の境界となる線です。 ● 領海基線
● 領海
● 内水
領海基線の内側の水域です。 沿岸国は領海と同様に主権を行使できます。外国船舶の無害通航権は認められていません。 ● 接続水域
沿岸国は、領海に接続する水域で、領海基線から24海里を越えない範囲で、接続水域を設定することができます。 同水域では、自国の通関、財政、出入国管理、衛生に関する一定の規制を行うことができます。 ● 排他的経済水域(EEZ)
沿岸国は、国連海洋法条約により、領海の外側で領海基線から200海里を越えない範囲で排他的経済水域を設けることができます。 同水域では、沿岸国に対して、一切の漁業及び鉱物資源に対する排他的な主権的権利と海洋汚染を規制する権限等が認められています。 ● 公海
いずれの国の排他的経済水域、領海もしくは内水またはいずれの群島国の群島水域にも含まれない海洋のすべての部分です。 特定の国の主権に属さず、世界各国が共通に使用し得ます。 ● 大陸棚
国連海洋法条約では、沿岸国は領海基線から200海里までの海底及び海底下を「大陸棚」とするとともに、海底の地形・地質が一定の条件を満たす場合、国連の勧告に基づき、200海里を超えて大陸棚の限界を設定することが可能とされています。 大陸棚では、沿岸国に対して、天然資源の開発に係る主権的権利等が認められています。 ● 深海底
いずれの国の管轄権も及ばない海底の部分です。人類共同の財産であるとされています。 名前のない島の名前が決まりました
我が国EEZの外縁根拠となる離島は全部で99島あります。そのうち49島について、海図にその名称の記載がありませんでした。 そのため、「海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針」(平成21年12月総合海洋政策本部決定)に基づき、総合海洋政策本部事務局が調査を行い、名称が明らかになった10島について、海上保安庁は、海図に名称を記載しました。残る39島については、名称が明らかではなかったため、それら離島が位置する自治体に対して総合海洋政策本部事務局が名称の決定を依頼し、全ての自治体から回答を得て、新たに離島の名称が決定されました。 海上保安庁は、新たに決定された39島の名称についても順次、海図に記載しました。
海軍ゆかりの地からついに引っ越し
海上保安庁海洋情報部は、明治時代の「兵部省海軍部水路局」の設置に端を発し、海洋情報部へと組織名称の変更を重ねつつ、東京・築地にて長年海図の作製等に携わってきました。 平成18年度国有財産有識者会議の検討結果を受け、海洋情報部の庁舎があった海軍ゆかりの地である東京都中央区築地から、平成23年12月に東京都江東区青海に移転しました。 また、これまで設置されていた「海の相談室」や「海洋情報資料館」も新庁舎に移転し、一般に公開しています。 |