これまで見てきたように、海上保安庁は、海洋権益の保全、国内MOX燃料の輸送警備、管轄海域の拡大に伴う対応、遠方事案への対応といった新たな課題に直面しています。
また、沿岸水域の厳格な監視警戒や、密輸・密航、密漁等の犯罪取締り、海難の救助といった業務にも的確に対応していく必要があります。
しかしながら、遠方事案等に的確に対処するための体制は十分であるとはいえず、さらには、昭和50年代に整備された巡視船艇・航空機は、就役から30年前後が経過し、船体の腐食等による老朽化、速力不足等といった性能面の旧式化が進み、海難救助活動や犯罪の取締りといった業務の遂行にも支障が生じている状況にあります。
そこで、海上保安庁では、遠方事案等に対処できる巡視船の整備や、老朽・旧式化した巡視船艇・航空機の更新等を計画的に進め、海上保安体制を強化していくこととしています。
重大事案、遠方事案等の新たな業務課題に対応していくためには、被害制御・長期行動能力等を備えた大型のヘリコプター搭載型巡視船が必要となりますが、現在そのような大型巡視船は平成4年に建造された「しきしま」1隻しかありません。遠方事案に最低1隻を継続的に派遣でき、我が国周辺海域で重大事案が同時発生した場合にも対応できる体制とするためには、現在の「しきしま」を含めた複数隻体制とする必要があります。