海上保安レポート 2020

はじめに


TOPICS 海上保安庁、この1年


特集 海上保安庁新時代


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

7 海をつなぐ > CHAPTER III. 国際機関との協調
7 海をつなぐ
CHAPTER III. 国際機関との協調

海に関して、関係各国が連携・協調しつつ、各国が有する知識・技能を世界共通のものとしていくため、さまざまな分野の国際機関が存在します。海上保安庁では、さまざまな業務を通じて得られた知識・技能を活かし、国際社会に貢献するため、これらの国際機関の取組に積極的に参画しています。

令和元年の現況
1 国際海事機関(IMO)での取組

IMOは、船舶の安全や船舶からの海洋汚染の防止等の海事問題に関する国際協力を促進するために設立された国連の専門機関で、現在174の国が正式加盟国、3地域が準加盟となっています。

令和元年、IMOの委員会である海上安全委員会(MSC)や、その下部組織である航行安全・無線通信・捜索救助小委員会(NCSR)及び海洋環境保護委員会(MEPC)、MEPCの下部組織である汚染防止・対応小委員会(PPR)に出席し、引き続き航行の安全及び船舶からの汚染の防止・規制に係る事項等の国際議論に貢献しました。

2 国際水路機関(IHO)での取組

IHOは、より安全で効率的な航海の実現のため、海図などの水路図誌の国際基準策定、水路測量技術の向上や各国水路当局の活動の協調を目的とし1970年に設立された国際機関で、現在93か国が加盟しています。

IHOは地域的な連携の促進や課題の解決のため、世界の各地域に地域水路委員会を設置しており、我が国は東アジア水路委員会(EAHC)に1971年設立当時から加盟しています。海上保安庁は、50年以上に渡りシーレーン沿岸国において水路測量や海図作製技術向上に貢献しており、平成30年9月のEAHC総会においてEAHCの議長国に就任し、議長国としての役割も務め域内の技術向上や航海安全に取り組んでいます。

令和元年8月には、議長国としてカンボジアの水路技術レベルを把握するために同国を訪れ、ロスバンナ首相補佐官への表敬挨拶を行い、同国内の測量技術や電子海図の状況についてカンボジア公共事業運輸省と議論したほか、同国の経済発展の鍵となるシアヌーク港で現地調査を実施し、水路技術の必要性について港湾公社に説明しました。また、同年10月にインドネシアで開催されたEAHC-MSI研修では、開催をサポートしたほか、同国からNAVAREA XI調整国である日本に講師派遣の要請があったため、2人の専門家を派遣しました。

令和2年2月3日〜7日には、東京においてEAHC第7回運営委員会と第11回研修センター理事会が開催されました。会合では、海上保安庁海洋情報部長の議長の下、EAHC各委員会や各加盟国/オブザーバー国からの活動報告が行われたほか、令和3年のEAHC設立50周年に向けた記念イベント案、EAHCの今後の活動方向を定めるための戦略計画等に関して活発な議論を交わし、東アジアにおける水路機関の連携を深めることができました。

その他、IHOとユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が共同で設置し、世界の海底地形名を標準化する「海底地形名小委員会」において、海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室長が引き続き副議長を務め、同委員会に貢献しています。

海洋情報部長のロスバンナ首相補佐官表敬

海洋情報部長のロスバンナ首相補佐官表敬

EAHC第7回運営委員会集合写真

EAHC第7回運営委員会集合写真

3 国際航路標識協会(IALA)での取組

IALAは、航路標識の改善、船舶交通の安全等を図ることを目的とした国際的な組織で、現在89の国・地域が加盟しています。また、そのうち24か国は理事国に選任され、国際基準等の承認手続きを行っており、日本は1975年から理事国に選任されています。加えて、IALAの常設技術委員会の一つであるENAV委員会議長に交通部企画課国際・技術開発室課長補佐が、2016年から就任しています。これは航行援助分野における国際活動に対する海上保安庁の取組み及び同委員会議長としてのこれまでの実績が評価されたものです。

令和2年2月、IALAの国際機関化に関する外交会合が開催され、IALAを国際機関化する条約(設立協定)が採択されたことから、IMOIHOのような新たな国際機関が誕生することとなりました。

4 コスパス・サーサット計画での取組

コスパス・サーサット計画は、GMDSSの中核をなす人工衛星を用いた遭難通報システムを提供する国際的な枠組であり、国際協定を締結した45の国や地域等が参加しています。このシステムにより、船舶及び航空機等から発信された遭難信号は人工衛星で中継され、世界中のどこからでも救助機関に伝えられます。

海上保安庁は、平成5年から日本の代表機関として、人工衛星で中継された遭難信号の受信及び処理を行うための地上設備を整備運用するとともに、世界で6箇所指定された情報交換の拠点である業務管理センターとして、北西太平洋地域(日本、中国、香港、韓国、台湾、ベトナム)で中心的な役割を果たしています。

5 アジア海賊対策地域協力協定・情報共有センター(ReCAAP-ISC)での取組

アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)とは、我が国の主導で締結されたアジアの海賊・海上武装強盗問題に有効に対処するための地域協力を促進するための協定です。この協定に基づき、情報共有、協力体制構築のため、平成18年にシンガポールに情報共有センター(ISC)が設立されました。設立以来、海上保安庁は、このISCへ職員1名を派遣し、海賊情報の収集・分析・共有及び法執行能力向上支援を積極的に推進しており、令和元年には、ReCAAP全締約国(日本を含む20か国)とインドネシア及びマレーシアの海上保安機関職員等を対象とした法執行能力向上のための研修「Capacity Building Executive Programme 2019」(シンガポールで開催)に協力するなど、アジア地域における海賊対策に係る各種取組に貢献しています。

Capacity Building Executive Programme 2019 集合写真

Capacity Building Executive Programme 2019 集合写真

6 北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)での取組

NOWPAPは国際連合の機関である国連環境計画(UNEP)提唱のもと、閉鎖水域の海洋汚染の管理および資源の管理を目的とした地域海計画(RSP)の一つで、北西太平洋地域4か国(日本、韓国、中国、ロシア)により採択されています。海上保安庁は、この計画の中でデータ情報ネットワークに関する地域活動センター(DINRAC)、海洋環境緊急準備・対応に関する地域活動センター(MERRAC)において会合等に参加し、同地域の海洋汚染の防止および海洋環境保全のための取組に積極的に関与・貢献しています。

NOWPAPでの取組

NOWPAPでの取組