海上保安レポート 2019

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 増大する危機に立ち向かう


目指せ! 海上保安官


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

6 交通の安全を守る > CHAPTER IV. 航行の安全のための航路標識と航行安全情報の提供
6 交通の安全を守る
CHAPTER IV. 航行の安全のための航路標識と航行安全情報の提供

海上保安庁では、船舶交通の安全と運航能率の向上を図るため、灯台をはじめとする各種航路標識を整備し管理しているほか、様々な手段を用いて、航海の安全に必要な情報を迅速かつ確実に提供し、船舶事故の未然防止に努めています。

平成30年の現況
1 航路標識の運用

船舶が安全かつ効率的に運航するためには、常に自船の位置を確認し、航行上の危険となる障害物を把握し、安全な進路を導く必要があります。海上保安庁では、このための指標となる灯台等の航路標識を全国で5,213基運用しています。

航路標識には、灯台のほか浮標灯(ブイ)、電波標識など様々な種類があり、光、形状、彩色、電波等の手段により、我が国の沿岸水域を航行する船舶の指標となる重要な施設であり、国際的な基準に準拠して運用しています。

2 灯台観光振興支援

第4次交通ビジョンでは、地域を活かす海上安全行政の推進として「灯台観光振興支援」を重点施策に掲げており、地方公共団体等による灯台の観光資源としての活用等を積極的に促すことにより、海上安全思想の普及を図り、これを通じて地域活性化にも一定の貢献を果たしていくこととしています。

また、地域のシンボルとなっている灯台を活用した地域連携や、全国に64基現存している明治期に建設された灯台の保全を行っています。

海上保安庁ではこれらを踏まえ、地方公共団体等が実施する、灯台を観光資源として活用する取組に協力・支援しています。平成30年には石川県珠洲市主催による禄剛埼灯台でのプロジェクションマッピングが実施されたほか、(公社)燈光会により、全国16箇所目の参観灯台(いわゆる「のぼれる灯台」)として、尻屋埼灯台での参観事業が開始されるなど、灯台の観光資源としての活用は徐々に広がりつつあります。

一般公開される灯台等

禄剛埼灯台でのプロジェクションマッピング

禄剛埼灯台でのプロジェクションマッピング

参観事業が開始された尻屋埼灯台

参観事業が開始された尻屋埼灯台

灯台を活用した取組の広がり

平成30年には、尻屋埼灯台で参観事業が開始されたほか、灯台を活用したさまざまな取組が行われました。

灯台ワールドサミット in 志摩

参観灯台が所在する4つの自治体(志摩市、銚子市、御前崎市、出雲市)が発起人となり、歴史的な灯台を観光振興に活かす方策を議論する「灯台ワールドサミット」が、平成30年11月10日、11日に三重県志摩市において初めて開催されました。

初日のシンポジウムでは、4市長により歴史的灯台の観光資源としての活用を促進し、その灯台を次世代に引継ぐために連携する旨の覚書が結ばれたほか、灯台を活用した地域活性化について熱心な議論が行われました。

また、安乗埼灯台の夜間公開や海から大王埼灯台を見るツアーなど、普段とは違った灯台を見ることができるイベントも実施されました。

灯台を活用したツアー

広島県尾道市周辺に所在する灯台をチャーター船で巡る「灯台150周年記念 航海の安全を願う灯台巡りクルーズ」が、平成30年9月8日、10月20日に(一社)尾道観光協会により実施されました。

本ツアーは、百貫島灯台や小佐木島灯台などの普段は立ち入ることのできない灯台を見ることができるもので、2回実施されたツアー合計で81名もの方が参加しており、中には広島県外から参加している方もいました。

また、本ツアーが好評だったこともあり、平成31年3月9日には、(一社)三原観光協会によるツアーも実施されました。

4市長による覚書の調印式

4市長による覚書の調印式

海から大王埼灯台を見るツアー

海から大王埼灯台を見るツアー

百貫島灯台(平成30年10月20日)

百貫島灯台(平成30年10月20日)

小佐木島灯台(平成31年3月9日)

小佐木島灯台(平成31年3月9日)

海上保安庁では「灯台観光振興支援」を推進するため、「地域活性化に資する灯台活用に関する有識者懇談会」を設置しました。本有識者懇談会は、灯台の付加価値を高め、地域による灯台の活用を広げていくために必要な方策について幅広く議論を行うこととしており、平成31年2月18日に第1回有識者懇談会を開催しました。

第1回有識者懇談会

第1回有識者懇談会

交通部長挨拶

交通部長挨拶

航路標識分野における新技術の活用、技術開発

海上保安庁では、安全で効率的な海上交通の確保のために新たな技術を活用・開発を推進しています。

新たに採用された技術
水銀槽式に代わるレンズ回転装置の導入

明治以来、レンズの回転装置として使用している水銀槽式回転装置は、水銀漏れ等による保守要員等への健康被害リスクが懸念されていたため、水銀を使用しない特殊車輪回転装置の導入を検討してきました。平成29年度まで、剱埼灯台及び城ケ島灯台において実装試験を行い、平成30年度から本格導入となり、まずは尻屋埼灯台及び野島埼灯台の2基について同回転装置を整備しました。

水銀槽式に代わるレンズ回転装置の導入
浅海用浮体式灯標

浮体式灯標は灯浮標(ブイ)と比較して波浪に対する動揺や振れ周りが少ないことから、航路幅を最大限利用できます。これまで金属製のものでは設計上、水深が10mより深い海域でしか採用できませんでした。しかし、浮体部分がポリエチレン製のものを検証したところ、水深が10m以下の浅海域での利用が可能であったため、平成30年度から採用し、現在までに9基の浅海用浮体式灯標を整備しました。

浅海用浮体式灯標
航路標識監視システム

海上交通の安全を守るため、灯火監視機能に加え、台風通過後等に生じるおそれのある海上標識の移動に関する情報や蓄電池電圧等の情報を発信する機能を備えた、汎用品を使用した安価な監視システムを新たに構築し、平成30年度から採用しました。現在までに120基の航路標識に整備しました。

灯台の光源にCOB(Chip On Board)を採用

現在、中・大型灯台で使用しているハロゲン電球・メタルハライドランプよりも寿命が10〜60倍、消費電力も1/10〜1/30となるCOBを新光源として採用することとなりました。

灯台の光源にCOB(Chip On Board)を採用
新技術の活用
ドローンを活用した新たな航路標識保守手法の導入

海上保安試験研究センターでは、高所や洋上で行われる航路標識の保守作業を安全かつ効率的に行うため、ドローンを活用した新たな航路標識保守手法について、導入に向けた取り組みを行っています。

ドローンを活用した新たな航路標識保守手法の導入
3 水路図誌、水路通報、航行警報
水路図誌

海上保安庁では、水深や浅瀬、航路の状況といった航海の安全に不可欠な情報を、海図等の水路図誌として提供しています。(詳しくは1 海上交通の安全のために

水路通報

航路標識の変更、地形及び水深の変化等、水路図誌を最新に維持するための情報や、船舶交通の安全のために必要な情報を水路通報としてインターネット等で提供しています。平成30年は約24,900件を提供しました。

航行警報

航路障害物の存在等船舶の安全な航海のために緊急に周知が必要な情報を衛星通信、無線放送、インターネット等により航行船舶に対し提供しています。

また、利用者が視覚的に容易に把握することができるよう、警報区域等を地図上に表示したビジュアル情報をインターネットで提供しており、平成30年11月からはスマートフォン向けの運用も開始しました。

今後の取組み
航路標識の老朽化、防災対策

耐用年数が超過し、劣化の進んだ灯台も多いことから、老朽化対策を推進します。また、台風などの自然災害時における灯台の倒壊・損壊を防止するため、耐震・耐波浪整備、海水浸入防止対策を推進します。

航路標識に関する技術開発

灯台の光源や灯火監視に関する新技術の導入のほか、ドローンやAIを活用した新たな灯台の保守管理のための取組みを推進していきます。

スマホで簡単に航行警報を入手〜スマホ向けビジュアル情報ページを運用開始〜
スマホ向けビジュアル情報トップページ
スマホ向けビジュアル
情報トップページ

船舶交通の安全を確保するため、航海上危険な漂流物や新たに発見された浅瀬の情報など緊急に船舶に周知が必要な情報(航行警報)を容易に入手できるスマホ向けビジュアル情報ページの運用を平成30年11月から開始しました。

ビジュアル情報ページでは、地図上で視覚的に容易に危険海域などを把握することができ、船舶の航海安全に役立つことが期待されます。


スマホ向けビジュアル情報ページの特徴
  • ●利用者の現在地がマップ中央となるように表示
  • ●スマホ用に調整された画面レイアウト
  • ●スマホに適した操作方法
  • ●沿岸域でも航海安全情報を容易に確認可能

https://www1.kaiho.mlit.go.jp/TUHO/vpage/mobile/visualpage.html

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