海上保安レポート 2019

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 増大する危機に立ち向かう


目指せ! 海上保安官


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

4 災害に備える > Column Vol.12 災害の連鎖を食い止めろ!!〜台風第21号への対応〜
4 災害に備える
Column Vol.12
災害の連鎖を食い止めろ!!〜台風第21号への対応〜
第五管区神戸海上保安部巡視艇はるなみ

平成30年9月4日、神戸市付近に上陸した台風21号は、走錨したタンカーの関西国際空港連絡橋への衝突や高潮によるコンテナの流出など、大阪湾各所に甚大な被害をもたらしました。

巡視艇はるなみは、台風の接近直前、港奥の岸壁に係留し待機していましたが、風向きの急変とともに急激な高潮発生を認めたため緊急離岸し、風速約25m、波高約3mの大時化の港内におりました。まもなく、神戸海上保安部から、乗揚げ船の発生、小型船やコンテナ等流出情報への対応など、各巡視艇への無線連絡が次々に入りはじめ、その後、本船は車両火災への対応指示を受け、多数の海上漂流物などを避けつつ現場へと急ぎました。

現場に到着すると、高潮で浸水した車両からの出火により100台以上もの車両が延焼し、現場一帯は黒煙と炎が立ち上り、爆発音も響いていました。消防車両は冠水のため火災現場に接近できず、それでも消防隊員は可搬式ポンプを搬入し果敢に放水していましたが、火勢が衰える様子はありませんでした。給油設備などへのさらなる延焼も懸念される状況下、消防局からの要請を受けた本船は、着岸を決心し、直ちに放水を開始しました。

本船の噴霧消火による一帯を覆う冷却作用が奏功し放水直後から火勢の衰えが認められ、約1時間後、火災の中心部に消防隊員が進入し鎮火となりました。

本件対応では台風に起因する災害が連鎖するという多難な状況の中で最善を尽くすことができました。今後も自らの安全を確保しつつ、関係機関とも連携し地域社会に必要とされる業務に的確に対応していきたいと思います。

消火活動の様子-1
消火活動の様子-2
消火活動の様子
荒れ狂う海上
荒れ狂う海上