フロンティアである「海洋」を利用・開発していくためには、海洋権益が保全され、安全・安心な海であることが前提となります。このため、海上保安庁では、海洋権益の保全、海上の安全確保、海洋環境の保全、防災等の様々な目的に活用されるよう、海底地形調査や海象観測といった海洋調査を実施し、様々な海洋情報を収集しています。
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5 海を知る
CHAPTER1 海洋調査
フロンティアである「海洋」を利用・開発していくためには、海洋権益が保全され、安全・安心な海であることが前提となります。このため、海上保安庁では、海洋権益の保全、海上の安全確保、海洋環境の保全、防災等の様々な目的に活用されるよう、海底地形調査や海象観測といった海洋調査を実施し、様々な海洋情報を収集しています。 1 海洋権益の保全のために
海洋権益を保全するためには、我が国の領海や排他的経済水域(EEZ)、大陸棚の限界を画定することが重要となります。海上保安庁では、領海等の画定に必要となる海洋情報を収集するため、測量船に搭載されたマルチビーム測深機等により、調査データの不足している東シナ海や日本海といった海域における海底地形や地殻構造等の調査を実施するとともに、航空機に搭載した航空レーザー測深機等により、領海やEEZの基点となる領海基線や低潮線の調査を実施しました。 また、海上保安庁が昭和58年以来、25年にわたって実施してきた大陸棚調査の成果が実り、平成24年4月、国連大陸棚限界委員会から勧告が発出され、我が国が延長を申請していた海域のうち、我が国の国土面積の約8割にあたる大陸棚の延長が認められました。
2 海上の安全確保のために
船舶の安全な航行や、マリンレジャー愛好者が安心してレジャーを楽しむためには、最新の情報が掲載された海図や海潮流・水温といった海洋情報が必要です。このため海上保安庁では、測量船や航空機等を活用して水深や海底地形等の情報収集を行い、海図を最新の情報に更新するとともに、測量船や日本各地に設置した験潮所等によって、海潮流や水温、潮汐などの情報を収集し、インターネットによる情報提供を行い、海上の安全確保に努めました。 3 様々な目的のために
海洋情報は、海洋環境の保全や防災といった目的のためにも活用されています。 海上保安庁では、海洋環境の変化を把握するため、海水や海底堆積物を採取し、汚染物質や放射性物質の調査を継続的に行っています。また、海底地殻変動観測や海底地形調査、海域火山の監視観測等を実施し、大規模地震発生のメカニズムや海域火山の構造等の解明に役立てています。 今後も引き続き、海洋権益の保全に資するため、データの不足した海域における海底地形や低潮線等の調査を行っていきます。 また、平成25年3月からは、自動で海底近傍まで潜行して海底地形情報を収集する自律型潜水調査機器(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)を導入し、より精密な深海域の海底地形データを取得していきます。 さらに、海潮流、潮汐の観測や海底地殻変動観測、海洋汚染調査等を実施するなど、様々な目的に合わせた海洋情報の収集を実施していきます。 AUVに名前がつきました
海上保安庁では、平成25年3月に導入したAUVについて、愛称の募集を行いました。愛称募集には、合計348通の応募があり、魚の名前である「おじさん」や「タラちゃん」といったユニークなものもありましたが、厳正な審査の結果、「ごんどう」に決まりました。AUVの大きさや動きが、愛称の由来となった「ゴンドウクジラ」の大きさや海面と海中を行き来しながら泳ぎ回る様子と似ているからです。この愛称を応募いただいた2名の方には、記念品を贈呈しました。これから「ごんどう」は、大型測量船である「拓洋」の一員として、我が国周辺海域において海洋調査を行うことになります。この調査によって、これまでよりも精密な海底地形情報を取得することができ、海洋権益の保全に大きく貢献することが期待されています。「ごんどう」への応援をよろしくお願いします!
進化する海上保安庁の調査機器
近年の科学技術の進歩により、海洋調査用の機器も進化を続けています。海上保安庁でも、このような最新の調査機器を導入することで、円滑な海洋調査を実施しています。 AUV
AUVとは、「Autonomous Underwater Vehicle(自律型潜水調査機器)」の略で、プログラムされた経路を自動で航走しつつ調査を行う調査機器です。海底近傍まで潜行して調査を行うことから、高精度の海底地形情報を収集することができます。特に、これまでの測量船によるマルチビーム測量では検出できなかった深海域の微細な海底地形も、AUVを用いれば捉えることが可能となります。
航空レーザー測深機
航空レーザー測深機は、航空機に搭載し、レーザーパルス波によって海底地形データを収集する測深機です。測量船が進入できない極浅海域での調査が可能で、領海基線や低潮線の調査に用いられます。海上保安庁では平成16年から航空レーザー測深を行ってきましたが、今年度はより高精密な測深が可能な最新型の航空レーザー測深機を導入します。
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